第3話:長期貸し出しですか、割り引いてもいいですよね?

「ここが、人形を貸してくれるという店か…」

 「はい、当店に御用でしょうか?」

 店の前でブツブツ言っている人たちがいましたので声をかけましょう。お客さんになってくれると良いですね…

 「あんた、この店の人か?」

 「はい、店主のサーリアと申します。」

 そういえば、あまり人前で名乗った覚えがありません…人形屋さんとか呼ばれるのが多いですから…おばちゃんとか呼ばれないだけ良いでしょう…まだお姉さんで通したいです。



 「どのような人形をお探しでしたか?」

 「あ、ああ。俺たちは冒険者で、依頼で他の街まで行くのだが荷物持ちを探していてこの店の話を聞いたんだ。」

 荷物持ちですか…どのくらいの期間の貸出になるかですね…初めてのお客さんにあまり長い期間貸し出すのは考えものなのですが…

 「期間はどのくらいになりますか?」

 「ひと月くらいを目処にしている。」

 一月ですか…結構長いですね…信用に足る人なら良いのですが…

 「どなたかからの紹介でしたか?」

 「ああ、ギルドの受付の子に聞いてきた。」

 なるほどギルドの紹介ですか…それでしたら変な人は紹介してこないでしょう。

 「わかりました。戦闘とかには参加しない形でいいですか?」

 「いざというときは参加してほしいのだが…」

 「戦闘用となるとお値段が上がりますが構いませんか?」

 「どのくらい変わるんだ?」

 「単に荷物持ちであれば1日金貨1枚。戦闘もとなると金貨3枚ですね。」

 「戦闘には参加させない。だが自衛くらいはしてもらいたい。」

 「はい、その位でしたら大丈夫ですよ。最低限の自衛はしますので。」

 「支払いは先払いか?」

 「そうですね。半額先にいただけますか?今回は長期貸出ということなので少しばかりおまけさせていただきますよ。」

 「そうか…助かるよ。」

 「それで、いつから必要ですか?」

 「3日後の朝出発なので、明後日には準備してほしい。」

 「わかりました。ひと月金貨28枚となりますが、長期ということで25枚にさせていただきますね。お支払いは前金で金貨12枚。引き渡しの際にお願いします。」

 「わかった。では明後日の夕方にまた来る。」

 「ありがとうございます。」



 荷物持ちですか…少し調整をした方がいいですね。今いる娘を再調整しましょう…スキルスロットに空きのある娘がいた気がします…



 この娘ですか…今入っているスキルは…普通に戦闘用の娘ですね…剣術に盾術ですか…スキルスロットはまだ空いてますが、この娘を貸し出すのはちょっと勿体無いですね…非戦闘員として貸し出すのですから…

 明後日までに入れ替えは少しきついですがギリギリでしょうか…

 戦闘用の娘を貸し出すのは勿体無いので、二徹覚悟で別の子からスキルを抜きましょう…


 この娘ならいいでしょう。随分前に貴族の護衛に出した娘ですね。護身術と盾術。マナーと話術が入ってます。ドレスアップさせて舞踏会で護衛させたんでしたね…

話術を抜いて、アイテムボックスと入れ替えましょう。アイテムボックスと言ってもこの娘の能力であれば、大きめのバックパック3個分も入ればいい所ですね。


 荷物持ちには十分すぎるでしょう。アイテムボックスは魔力量によって最初の大きさが決まるそうなのです。出し入れにわずかな魔力はかかりますが維持に魔力は使わないようなのです。便利ですね…私も欲しいのですが使えないのですよ…スキル自体は持っているのにです…



 今日が約束の日ですね…しっかり二徹しましたよ…スキルを抜くのに時間がかかりましたからね…今朝、やっと終わって、朝からアイテムボックスを転写中です。夕方には仕上がっているはずです…

 疲れましたので、ミリーに店番を任せてしばらく休みましょう。



 『かぁさま、お客さんです。』

 「マスターと呼びなさいと言ったでしょ。」

 本当にミリーは…お客さんでしたね…


 「お待たせしました。」

 この間の冒険者さんたちですか。

 「前金を持ってきた。それで人形は用意できているのか?」

 「ええ、少し待っていてくださいね。連れてきます。」

 地下の人形部屋にいますので連れてきましょう。

 「アズサ、起きなさい。お仕事の時間ですよ。」

 『はい、マスター。今回はどのような仕事でしょうか。』

 「もうお客さんが来てるから、まずは店に行きますよ。」

 『はい。』

 「今回は少し長い期間のお仕事で、荷物持ちのお仕事よ。戦闘には参加しなくていいわ。」

 『荷物持ちですね。わかりました。』



 「お待たせ。この娘が今回貸出する人形よ。」

 「女の子なのか?」

 「あら?聞いてなかったのかしら。うちは女の子の人形しか扱ってないわよ。」

 「それは聞いてなかった…女の子に重い荷物を持たせるのか…」

 「この子はアイテムボックス持ちだからそれほど気にはならないわよ。」

 「アイテムボックスを持っているのか?」

 「ええ、でも偽装で装備は持たせるけどね。」

 少しは荷物を持たせないとね…変に思われますから。

 「わかった…前金の金貨12枚だ。では借りていくぞ。」

 「はい、延滞金は1日あたり金貨1枚になりますのでよろしくお願いします。それと、あまりにも返却が遅れるとギルドに報告しますのでよろしくお願いしますね。」

 「お、おぅ…」



今回の収入

荷物運搬用ドール…金貨1枚

 貸し出し 1体 1ヶ月(28日)

 割引 金貨3枚


合計 金貨25枚



 この世界の1ヶ月は28日です。1年は13ヶ月、終の日と呼ばれる日が13月の28日の翌日にあり特別な日である。この日を合わせて1年は365日となっている。

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