第71話 心に秘めた本の在処
「ふぅ、無事に終わった……。前にリリさんが本の中を少し減らしていたのが良かったね。使う魔力を押さえれたよ」
眠るサクラの上にあった分厚い本は消え、オンプの手より少し大きな本がリズムとオンプの間に浮かぶ。本がふわふわと独りでに動き、オンプの元へと向かっていく
「相変わらず魔力も術もすごいねぇ」
本を開き読むオンプを見ながらリズムがため息まじりに言うと、オンプがパタンと閉じてフフッと笑う
「そうかな?リズムだって両方ともすごいよ」
「いや、ソナタさんの右腕に誘われたオンプに勝てるわけないよ」
オンプの言葉にリズムが手を振り苦笑いで言うと、オンプがサクラの様子を見るため、少し布団をめくる。スヤスヤと眠るサクラを確認すると起こさないようにそーっとまた布団をかけた
「今からでも、もっと一緒に仕事できるようにお願いしたら?」
「んー、今はいいかな。受付のお仕事を気に入っているし、ソナタさんも今は私が必要なほど忙しくもなさそうだから」
「……あれで忙しくないっていうの?」
驚いた顔をするリズムの隣を歩いて、テーブルやノイズのノオトが飲んだ紅茶のティーセットを片付けはじめたオンプ。その様子を見ながらリズムがソファーに座った
「オンプのこの後の予定は?」
「交代の人が来たらお家に帰るよ、リズムも来る?」
「じゃあ、今日はオンプの家に泊まろうかな」
二人でのんびりと会話をしながら、交代を待っていると、突然バタンと勢いよく仮眠室の扉が開き、ノイズがズカズカと足音をたてて部屋に入ってきた
。驚くリズムの横を通りサクラの所へ向かうノイズにオンプが、ふぅ。と一つため息をついた
「ノイズさん、部屋を開けるなら静かにお開けください」
「いや、そう言う前にどうやって来たのか聞くべき……」
サクラの体を揺らし起こそうとするノイズに少し怒った声で注意をするオンプ。リズムもオンプに注意をすると、ノイズが睨むような顔をして、くるりと二人の方に振り向いた
「モモはどこ?」
「モモさんの事は、サクラさんが起きるまでお伝えできません」
「なら、お母様とリリは?」
「お二人ともお忙しいそうなので、今は会えないそうです。ロンドさんも同じく忙しいそうです」
ノイズの問いかけにオンプがニコッと微笑みながら答えると、仮眠室が静かになり、リズムが少しうろたえはじめ、オンプが微笑んだままノイズに背を向け歩きだし仮眠室の扉を開けた
「サクラさんが起きてしまいますから出ましょうか。後で急いでノオトさんを呼びますね」
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