第40話 暗闇を一緒に行こう
「まただ……」
目が覚めたサクラの視界にはまた静かで真っ暗な景色が広がっていた。少し慣れたのか慌てる様子もなく、ふぅ。と一つ深呼吸をして辺りを見渡す
「ノイズー、モモー。いるの?」
何度か呼んでみても、サクラの元に来る気配はなく今度ははぁ。とため息をついた
「やっぱり、呼んでも来ないか」
そう呟くと、トボトボと行く宛もなくゆっくり歩きはじめた。時折上を見上げてピョンとジャンプをしたり歩いたりを繰り返して進んでいく
「もう疲れたなぁ……。前の時と違うのかも、大丈夫かな……」
サクラの感覚ではもう何時間も歩いたような気がして、歩く気力もなくなり、その場に立って動かなくなった。少し座ろうかと前を向いた時、暗い中にふわふわと浮かぶ何かが見えて、恐る恐る近づくと、見覚えのある姿が見えてきた
「あれ?メメさん?」
驚いた様子で声をかけると、メメが振り向きサクラを見るとこちらは驚いた様子もなく呆れたようにため息をついた
「やっぱり、あなたの仕業だったのね」
「私?」
会うなり不機嫌そうに言われ、不安そうに聞き返すと、サクラと同じく歩き疲れいたメメがサクラの頭に乗った
「その無自覚の魔力が面倒ね。戻ったらノイズを叱らないといけないわ」
尻尾をユラユラと揺らしながら言うと、サクラの顔にビシッと当たり、メメがまた不機嫌そうな顔になった
「それにしても、あまり慌ているような雰囲気がないわね。ここは来たことあるの?」
「はい。たぶん、前に寝ていた時に……」
「そう、ここはノイズかモモの術と思っていたけど違ったようね」
そう呟くとサクラと会話を止め、歩くようサクラの背中に尻尾を少し強めに当てたメメ。その意図が読めたのか、サクラがまた暗い中をトボトボと歩きはじめた
「早く戻らないといけないね。あなたの体調も気になるわ」
歩きはじめてすぐメメがそう話しはじめると、その話しにサクラが少し首をかしげ、メメが少し落ちそうになった
「体調ですか?どこも悪くないですよ」
慌ててメメをつかんで、また頭に乗せながら返事をするとメメの尻尾が大きく揺れた
「えぇ、今はね。それより前にきた時、何かあった?」
「前ですか?えーっと確か、本とうたが聞こえました」
「本とうた?」
「はい、確か……」
説明をしようと思い出していると、微かにメメとは違う声が聞こえてきて、慌てて辺りを見渡す。急に体が動いたせいでまたメメが振り落とされそうになった
「こんなうたです!メメさん、急いで行きましょう」
メメを抱きしめ走りはじめたサクラ。迷いなく走るその姿にメメが不思議そうに首をかしげた
「私には、うた声なんて聞こえないけど、サクラには聞こえているのね。これも魔術なのかしら……」
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