第18話 雨音が聞こえる場所へ

「さてと、どうしようかな」

 服を着終えたノイズがお風呂場に戻り、うーんと背伸びをしながら一人呟くと、お風呂場中にノイズの声が響いた

「モモをここに呼ぶべきか、ノオトを呼ぶか……」

「ノイズ」

 どうしようかと悩んでいると、湯船の縁にメメが現れ、濡れた足元を不快そうに足を振っている

「あれ、ノオトと一緒に出たんじゃないの?」

「ノオトからの伝言を頼まれてね」

 そう言うと湯船から溢れ出る水を避けるため、ふわりと飛ぶようにノイズの肩に移動したメメ。そのせいで着替えたばかりのノイズの服が少し濡れた

「モモはオンプに任せて、私と一緒についてこいって」

「えー、オンプに渡したらまた怒られるよ」

 これ以上濡れないようにメメを抱っこして不満そうに答えるノイズ。ついでに頭も撫でて、メメが少し嬉しそうに喉を鳴らす

「仕方ないでしょ。こっちらとしても、とても忙しいのよ。本当なら、サクラにも手伝ってほしいくらいなのに」

「ダメだよ。サクラは私の」

「ええ、分かっているわよ」

 ムッと頬を膨らませるノイズに、メメがクスッと笑って答えると、お風呂場から一緒に出ると、サクラに気づかれないように、家からも出てどこかへと歩いていった







「サクラさん、おやすみなさいませ。何かあれば、私達を呼んでくださいね」

「……はい、ありがとうございます」

 その頃、寝室に案内されたサクラが部屋に入り、家政婦達と話をしていた。新たに敷き直れたベッドを見たり、カーテンがしかれた窓を見たり、まだ落ち着きなく部屋の中をウロウロと動き回っていると、ふとサクラの側が静かな事に気づいて家政婦達に問いかけた

「あの、そういえばモモは……」

「ああ……。えーっと、そうですね、ノイズ様といらっしゃると思いますが……。後で聞いてみますね」

「お願いします」

 ペコリとサクラが頭を下げると、家政婦達もつられるようにお辞儀をして、寝室から後にした。モモの行方を聞いた時、少し焦ったような様子の家政婦達に少し疑問を抱きつつも、ベッドにボフっと勢いつけて後ろから倒れた

「私、一人になっちゃったな……」

 静かな部屋に少し寂しさを感じつつも、ふかふかな布団と枕に心躍り、エヘヘと笑って枕に抱きつくと、疲れが出たのか、すぐにウトウトと眠くなり、軽く目を擦っていると、窓からポツポツと雨音の音が聞こえて、ゆっくりとベッドから立ち上がり窓を開けると、さっきよりも強い雨が降っていた


「ノイズとあった時もこんな感じの雨だったような……」

 そう思い、ほんの少し窓を開ける。雨粒がすぐに部屋の中に入り、慌てて窓を閉めようとした時、ガサッと木々が大きく揺れる音が聞こえて、その揺れる木々を見ると、木の一番上にうっすらと誰かがいるような影が見えて、また窓を開けた

「ノイズに似ている気がするけど……」

 と、サクラがポツリ呟いた時、強風が吹いて雨に濡れた木の葉が部屋の中に入ってきた。少し目を閉じ、また窓を閉めようとした時、木の上に見えた影がサクラの所に早い速度で向かってきた


「モモ!来て!」

 サクラの叫ぶ声に何処からともなく濡れたままのモモが目の前に現れ、サクラに触れようとしたその影が手を伸ばすと、モモと当たりバチンと火花が散った

「私をあの子から離して!」

 サクラがまた叫ぶと、モモがバラバラと濡れたままページを開き、サクラと共に一瞬で部屋から消えてしまった。サクラに触れようとした影が、残念そうに舌打ちをして濡れた髪をゆっくりと掻き分けた

「あーあ、残念。あの子を逃しちゃった」

「あらあら、どこに行っちゃたの?」

「知らなーい」

 オンプよりも、ほんの少し身長の高い髪の短い女の子が、後から来た優しく微笑み問いかける髪の長い女性に不機嫌そうに答えると、その髪の長い女性が女の子の頭を優しく撫でた

「ノイズに怒られますよ」

 困ったように女性が言うと、女の子が窓を開けたままサクラが消えたせいで、雨で部屋がびしょ濡れになった部屋を見て嬉しそうに笑った

「ノイズのだからいいの。ノイズのものは全部私が壊すって決めたんだから」

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