15

「鳴美さん……俺、ちゃんと生きます。だから、鳴美さんとこれからも心を……繋いでいきたいです……」


指に残る雫の温度は、俺にそう決心させた。


身体が痛いのは、きっと世界に対して必要以上に硬いバリアを張っているから。


鳴美さんの涙や視線、言葉が刺さるたびに、そのバリアが必死に跳ね返そうとしていた。


相手を想い、心を開くということを……




「……違うよ、バカッ………」



鳴美さんはそう言って泣きながら微笑んだ。


だけどその哀しげな笑顔が、これまで見た中で一番美しかった。




「鳴美さん……明日、精一杯楽しみましょう。明日を楽しめたら俺達はもう、本当の意味でぼっちなんかじゃないですよ。お互いにとって初めて、心を繋ぎ合えた相手になるはずで……す…っ…」



俺の言葉を遮り胸に飛び込んできたのは、さっき見せた哀しい笑顔と同じくらいに美しい声で泣く鳴美さんだった。



突然の出来事にドキドキしながらも、俺の腕にしがみつき力を込める手が震えていたのはちゃんと見えた。



鳴美さんも今、勇気を出しているんだ…。


必死に自分の周りにあったバリアを、解こうとしているんだ…。



まだ収まらない胸の高まりと早くなる呼吸を必死に抑えながらも、俺は鳴美さんの背中に手を回し、そのぬくもりを確かに感じていた。

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