第506話 冬の到来となんやかんや その4

精神的な疲労が著しいアストレア様の為に今宵俺が用意したのは、自宅でお好みの濃さのレモンサワーが作れる『レモンサワーの素(アルコール25%)』


このレモンサワーの素に、アルコールが3%程度になるように計算して炭酸水とレモン果汁を注ぎ、氷と、くし切りにしたレモンをタップリ入れたら


『自家製ほろ酔いレモンサワー』の完成だ!



「おかあさんお待たせ~」


「いただきまーす。んぐんぐんぐ、、ぷはぁっ、おかわりちょーだい♪」


「はーい」



うーむ


低アルコールとは言え、大ジョッキに作ったレモンサワーを一瞬で飲み干すとは、これは相当お疲れのようだ。



「んぐんぐ、、はぁ、やっと落ち着いたわ♪」



結局アストレア様はレモンサワーを一気に4杯も飲み干してしまった。



「えっと、台風の被害はどうでした?」


「幸いにもピスケス領はほぼ被害が無かったわ。だから近隣の領主達に台風による被害状況を教えてくれれば、必要な物資と人員を派遣するからって連絡をしてみたんだけど、、、」


「だけど?」


「全員から被害無しって答えが帰って来たわ。」


「被害が無かったのなら良かったですね♪キャラバンシティじゃ王都方面からの行商人が来なくなったんで、街道が通れなくなる程度の被害はあったんだと思います。

ピスケス領周辺に被害が無いなら、思ったより被害は限定的なのかもしれませんね。」


「ねぇシンさん、本当に被害が限定的だったと思う?

キャラバンシティに王都方面からの行商人が来れなくなってるのに、ピスケス領周辺だけ被害が無いなんて事が、本当にあると思う?」


「でも台風の被害は無いって返事が来たんですよね?」


「ええ、それと同時に一時的に領境に関所を設けて人の往来を制限するという通知もね。

被害状況を他家に知られると、攻め込まれて領地を奪われるとでも考えても居るんでしょうね」


「あのう、そんな事をしていると復興が遅れてどんどん状況が悪くなりますし、バルゴ王国そのものの国力も低下してヤバい事になりそうですけど、大丈夫なんですか?」


「大丈夫じゃないわよぉ~(泣)連絡しても無駄なら直接人を送って確認させようとしたけど、関所で止められて追い返されちゃうし。

今ならシンさんのやろうとしているホットラインの重要性がよく分かるわ。

バルゴ王国は他派閥の繋がりがほぼ無いから、ホットラインを繋ぐ以前の問題なんだけど」


「でも保守派のソレイユ様とは以前から仲は良かったんですよね?」


「派閥が違っても少しくらいは親交もあるわよ。でも結局は連絡手段が問題なのよね。手紙か回数制限のある通信の魔道具だけだもの、手紙は盗まれるリスクがあるし、通信の魔道具は盗聴のリスクがあるから、季節の挨拶くらいしかしなくなっちゃうのよ」


「バルゴ王国って色々と危険な状況になってる気がするのですが(汗)」


「シンさんの言う通り末期症状でしょうね。こういう状況を避ける為に私達は頑張って来たんだけど、十二家の半分は国境の守りで動けないし、他派閥からの協力は得られないし、、、

おそらく王都の連中は十二家が力を持ち過ぎないように故意に派閥の対立を煽ったり、通信の魔道具が便利になり過ぎないように、裏で研究の邪魔をしていたりするんでしょうね」



まぁバルゴ王国の王様や側近達からしてみたら、地方の貴族が力を持つと、いつクーデターを起こされるかビビりながら過ごす事になるからな


故意に対立を煽って力を削いだり、結束されないようにするのは当然の事だろう。



「台風の被害が無いって言う所は放置で良いとして、中立派貴族の皆さんは大丈夫なんですか?」


「大丈夫とは言い難いのだけど、なんとかなると思うわ。ただステフちゃんの所が心配ね」


「アリエス辺境伯領は王都から1番遠いですけど、それでも影響が出るんですか?」


「国境を守る為に傭兵、冒険者、犯罪奴隷が大量に送られているから食糧も沢山必要なのよ。

当然だけど食糧を運ぶ行商人も沢山必要になる訳だけど、台風が来る前に行商人がどれくらい領地に残っていたかによるわね。


もし大半の行商人が他領に行った後に台風が来たとしたら、食糧の運び手が足りなくて飢える者が出て来る。

そして真っ先に食糧が無くなるのが国境付近でしょうから、飢えた傭兵や冒険者によって国境で暴動が起きる可能性も出て来るわ」



あちゃ~、これはマジでヤバいやつやん(汗)


隣国とは今の所友好的な関係らしいけど、隙を見せたら容赦無く攻めて来るだろうという事は、俺でも分かる簡単な話だよ。


じゃなきゃ大量の人員を国境に送って守らせたりするはずが無い!


国境をきっちり守っているからこそ、隣国もバルゴ王国を攻めるのはリスクがあり過ぎると判断して、友好的な関係を保っているんだろうからな。



「ステフ様の所には私が行って状況を確認して来ます。食糧を運ぶだけなら私以上の適任者は居ないでしょうからね」


「シンさんお願いね!まだ時間的に余裕があるとはいえ、国境は早めに落ち着かせておきたいから」



待っていて下さいステフ様!


大切な友の為ならばチート能力全開で


俺が絶対に助けてみせーる!






つづく。

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