第486話 お義母さんの笑顔の為に
「それではスイーツ屋台開店しまーす♪」
「うふふ」「やったぁー♪」
アストレア様とステフ様と一緒にやって来たのは我が家の中庭
雨風を防ぐ為のテントを建てて、その中に出したおでん屋の屋台を間借りして開店したスイーツ屋台
今宵限りの特別営業でござる!
そして看板娘は緊張気味のアルテミスさん。
アルテミスさんは魔法の才能が開花した事を母親のアストレア様にはまだ言って無いらしく、アストレア様はアルテミスさんに魔法の才能が無い事を凄く気にしてるんだよ。
俺がお節介をしなくても心配は要らないだろうけど、信じて待つ時間って案外辛いもんだからな
アストレア様は俺のお義母さんになる人だし、早く安心させてあげたいじゃない。
「2人ともお酒は何にします?」
「ウィスキーに氷を入れた物が良いわね」
「じゃあねぇ、飲んだ事無い味のチューハイがあればそれが良いなぁ」
「あいよ!アストレア様はウィスキーで、ステフ様はチューハイの、、、カシスオレンジ味です、どうぞ。アルテミスさんは何にします?」
「でしたら私もウィスキーに氷を入れた物を」
「了解!」
ふふっ
やはりアストレア様とアルテミスさんは母娘だなぁ、お酒の好みも肝臓の強さもソックリだよ。
「皆さんグラスは持ちましたね?かんぱい」
「「「かんぱーい」」」
「今宵は少し変わったプリンを用意しました。付属のシロップをかけて食べて下さい。」
「ねぇシンさん、見た感じ普通のプリンに見えるけど」
ふっふっふっ
今回用意したプリンは元世界で広島県の尾道に旅行した時に食べた『尾道プリン』
スキルの「店」に売ってたから思わず買ってしまうくらいには美味しかった記憶がある。
ちっちゃい牛乳瓶に入った濃厚なプリンに、付属のレモンシロップをかける事でさっぱりと食べる事が出来る、ご当地スイーツだ♪
「あーんっ、、おおっ!酸っぱいけど甘いのと混ざるとちょうど良くなるね♪」
「ステフちゃんの言う通りね。でもシンさんの表情を見てると、私達に食べさせる為だけに出した訳ではなさそうだけど」
アハハ
流石はアストレア様、俺の事をよく分かっていらっしゃる。
「バルゴ王国だとレモンは紅茶に浮かべるくらいしか使い道が無いと聞きましたので、レモンを使ったレシピはレモン農家の人達に喜ばれるかなと思いまして。
レモンの産地に王国十二家の領地があれば最高なんですけど」
「あらあら♪レシピを譲ってこちら側に引き込むつもりなのかしら?」
「そうですね。向こうから接触して来るのを待つくらいなら、こちらから行って主導権を握る方が面倒が減りそうです。」
「へぇ~、ナガクラ君は貴族と関わるのを嫌がってたのに、どういう心境の変化なの?」
「守るべき家族が出来ましたからね、出来る事は全部やっておきたいだけですよ。
おっと、新たなお客さんが来たみたいです。」
「「お客?」」
「「こんにちは~」」
「いらっしゃいませ、空いてる席にどうぞ~」
「「はーい」」
「え゛っ?!ナッ、ナガクラ君、そそそそ創造神様とその友達が、、、(汗)」
ふふっ
お店に入って来た控え目に光輝く創造神様とちーちゃんさんを見て、ステフ様は凄く驚いてるけど
創造神様とちーちゃんさんは既に常連客だから、中庭で屋台を営業してたら来るだろうなとは思ってたよ。
「ステフ様に注意しておきますけど、他のお客さんの事を詮索するのはマナー違反なのでお願いしますね。」
「うっ、うん分かった」
「今宵はスイーツ屋台なので、御二人もご当地プリンをどうぞ。ちーちゃんさんはやっぱり伊勢とか島根のご当地スイーツの方が良かったりします?」
「気にはなってるけど特別なこだわりは無いで。でも伊勢海老味のチップスはちょっと気になるかなぁ」
「あぁ~、ご当地チップスは定番ですよね」
「ちょっとちーちゃん!チップスって何よ?!美味しいの?」
「何って、チップスはふーちゃんも食べた事あるで、駄菓子詰め合わせをお供えして貰った時に入ってたポテトチップスやから」
「なるほど、略してチップスなのね」
ほっ
創造神様とちーちゃんさんのいつものやり取りだけど、無事に収まるのか毎回ドキドキするんだよな。
「皆さんプリンは完食しましたね?それでは本日のメインスイーツを作りたいと思います。アルテミスさん準備をお願いします。」
「はっ、はい!」
「「「「んー?」」」」
ふふっ
アルテミスさんがアルミ製のトレーを取り出すと、アストレア様、ステフ様、創造神様、ちーちゃんさんの4人が仲良く首をかしげている。
今回用意したトレーは60センチ×100センチの大きさだから、見た目のインパクトも充分だろう♪
「シンさん、準備出来ました。」
「では冷やす魔法を全力でお願いします。」
「行きます。はっ!」
「え?アルテミスが魔法を?!」
アストレア様が驚いているけれど、驚くのはまだ早いですよ♪
「アルテミスさんが持ってるトレーにイチゴを乗せてフォークで荒く潰したら、次に生クリームを投入してひたすら混ぜます。うぉーーー!」
シャカシャカシャカシャカシャカシャカ!
アルテミスさんの魔法の威力が強いから、生クリームが凍る前に急いでイチゴと混ぜ合わせるのが大変なんだよ(汗)
だけど、そのお陰であっという間にイチゴアイスの完成だ♪
「最初はアストレア様からどうぞ」
「いただきます。あーんっ、、んーー冷たくて美味しい♪まさかとは思うけど、これをアルテミスの魔法で作ったと言うつもりなのかしら?」
「その通りですお母様。シンさんに私の魔法を見て頂いたら、物を冷やしたり温めたりする魔法だと判明したんです。
今はまだ練習中なんですけど、いずれは池の水を凍らせたり、お風呂のお湯を沸かしたり出来るようになると思います。」
「そっ、そう・・・」
あれ?
アルテミスさんに魔法の才能がある事が分かって、アストレア様に喜んで貰えると思ったんだけど
何故かアストレア様はうしろを向いてしまった。
「あのう、アストレア様?」
「大丈夫、少し酔ってしまったみたい、、だか、、ら、よっ、夜風に、ヒッグ、、あ゛たっで、来るから゛、、アルテミ゛スゥ゛~、本当に良がっだわぁーー(泣)」
うーむ
俺が考えてたリアクションとは全然違って、アストレア様は号泣しながら外に出て行ってしまった。
アルテミスさんに魔法の才能があって泣くほど嬉しかったんだろうな
湿っぽくなっちゃったけど、お義母さんの心にはきっと素敵な笑顔の花が咲いているはず!
「アルテミスさんも少し夜風にあたって酔いを醒まして来たらどうですか?」
「え?、、、あっ、はい!」
「「「ふふふっ」」」
くっ!
店に残っている3人のお客からの視線が痛いぜ!
「あの、皆さん言いたいことがあるなら聞きますけど」
「姉様があんなに嬉しそうなのは久しぶりだったから、ありがとうねナガクラ君♪」
「今夜は綺麗な『魚座』が見えると思うで」
「ええっ?!ちーちゃんさん、こっちにも魚座ってあるんですか?」
「うふふ、気分が良いからちーちゃんと頑張ってみました。今夜だけ特別よ♪」
凄く嬉しいけれど、神様の力をこんな事に使って良いのだろうか?
「ええんとちゃう?今日のウチらはただのお客なんやし」
「そうそう、ただのお客の気紛れだから♪」
「しかしですね、、、ステフ様!貴族ならこういう時どういう対応をするんですか?」
「ええー?!このタイミングで私に聞くの?ナガクラ君には恩があるから何とかしてあげたいけど、、、美味しいスイーツを出せば良いんじゃない?」
「美味しいスイーツとなると俺のスキルで、、、これだ!ウィーンの老舗洋菓子店の『ザッハトルテ』どうぞ!」
「「「やったぁー♪」」」
ふふっ
女性の笑顔に勝る物無し
それが神様の笑顔なら
すべて世はことも無し!ってな♪
夜空に輝く魚の星座に見守られ
家族の幸せの為なら神すら巻き込む男、シン・ナガクラ
これは神と人とが交流をする、ハートウォーミングな日常の物語、、、
なのかもしれない。
第11章 完
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