第349話 未来への希望畑・改
「シンさんお願いね!」
「はい!それでは、さーいーしょーのいっぽーん!」
『ザクッ』
「「「「「ウォーーー!!」」」」」
「「「「「ウォ!ウォ!ウォ!ウォ!」」」」」
『ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!』
「「「「「ウォ!ウォ!ウォ!ウォ!」」」」」
『ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!』
掛け声と共に足を踏み鳴らすのがドワーフ流の盛り上がり方♪
初めて見た時は迫力の凄さに圧倒されたけどこの光景を見るのも4回目
今じゃわざわざ見物に来る人も居たりして
、キャラバンシティでは新しい風物詩になりつつある。
ここはドワーフが管理している酒用の作物を育てる為の畑で、通称『未来への希望畑』
今は主にウィスキー用の大麦とトウモロコシを中心に、ビール用にホップも育てていてそれらが収穫のタイミングを迎えたから
いつものように俺が最初の1本を収穫してから、ドワーフの皆さんと池田屋商会の従業員達が一斉に収穫を始める。
普通なら一斉に収穫のタイミングを迎えるのは有り得ないんだろうけど、そこは間違いなく創造神様のお陰だろう
ありがとう創造神様♪
はぁ
俺は刈り取った大麦の出来に満足しながらも、目の前の光景を見て思わずため息が出てしまう
なぜならば、キャラバンシティを囲む石壁の向こうに見える小高い丘が黄金色に染まっていたからだ
石壁の外に畑を作る事も、あそこにあるのが『未来への希望畑』である事も知ってはいたけれど
実際にこの目で見ると凄く不安になる。
アメリカのグレートプレーンズという穀倉地帯を思い浮かべて欲しい
さすがにあそこまで広大では無いけど、それを思わせるほどに黄金色の絨毯が石壁の向こうに広がっているんだもの
それだけでも色々と不安なのに、オリビエさんは全部手作業で収穫するって言うんだから俺が不安になるのも仕方ないだろう。
ドワーフなら全身全霊で今日中に収穫作業を終らせるんだろうけど
「おーい、そんな所でぼーっとして酒が切れたんか?」
いかんいかん
広大な畑を見てぼーっとしてたらガゼル親方が心配して声をかけてきた
だがしかし、俺をアル中の駄目人間みたいに言うのは止めて欲しい、普通の人は酒を飲んで畑の収穫作業をしたら倒れてしまう。
ドワーフのように酒を飲んだ方が仕事がはかどるなどという事は絶対に無い!
「大丈夫ですよ、大麦の出来が良くて感動してただけですから」
「そうじゃろう!お前さんが旅に出た後もオリビエが手入れは欠かさんかったし、最高のタイミングで収穫する為に毎日1日中畑におったくらいだ、今日も朝からお前さんが早く帰って来んかとそわそわしながら待っとったからな(笑)」
おぅふ(汗)
オリビエさんの酒にかける情熱は知っているけれど、気合いの入り過ぎで倒れないか心配になるよ
「予定より1日早く帰って来た甲斐がありましたね、っていうかゆっくり話してないで収穫作業をしないと」
「出来ればもう少し手を止めておいて欲しいんじゃが」
「どうしてです?」
「オリビエが収穫を楽しみにしてたのは知ってると思うが、収穫者の違いで酒の出来に違いが出るかを試したいらしくてな、お前さんは大丈夫じゃろうがワシが手伝うと絶対に怒られる!」
そんなあほな、皆で協力してさっさと収穫した方が、、、
よく見たら他にもオリビエさんの収穫作業を見守ってるドワーフが沢山居るし、どうやらガゼル親方の言ってる事は本当のようだ
「畑に関してはオリビエさんに任せてるんで好きにして貰って良いですけど、さすがに1人で収穫は無理なんじゃ」
「心配は要らん、3ブロックも収穫すれば満足するじゃろうからお前さんは冷えたビールでも用意してくれればええ」
「そっ、そうですか」
親方は気軽に3ブロックって言うけど、1ブロックが学校の25メートルプールぐらいあるんだけどなぁ(汗)
むむっ!
えーっと、どうやら俺の収穫作業はこれで終わりのようだ
ガゼル親方とドワーフの皆さんがキラキラした目で俺を見ているので、収納から栓抜きを取り出して静かに胸に当てる
それを見たドワーフの皆さんはガッツポーズをしたり、神に祈りを捧げるような仕草をしたり、準備運動をしたりと反応は様々だけど
今日中に絶対収穫作業を終わらせる!という気合いをビシバシ感じさせてくれる
これには俺も全身全霊で応えねばなるまい!
まずは、我が家でも使ってる外国製のデカい家庭用プールをスキルの「店」で10個購入して、魔法で出した水と氷で満たしていく
そしたら瓶ビールを大量投入♪
ふっふっふっ
これで終わりと思うなかれ、なんと今日はグラスもキンキンに冷やしてやろうではないか
グラスは水が入らないようにクーラーボックスに氷と一緒に入れて準備完了!
キンキンに冷やしたグラスの威力、思い知るが良い
ふわぁっはっはっはっはっ♪
つづく。
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