第256話 夏の終わりともふもふ姉妹とアストレア様と

毎日我が家のみんなと裏庭でプールを楽しんだり


ニック、スナック、アンさん達とバーベキューをしていたら、いつの間にか夏が終わっていた



どうやらこの世界の季節の移り変わりは元世界と比べてかなり早い、だいたい10日前後で一気に気温も下がって夏から秋になるらしい


どおりで最近おでんが恋しいはずだよ(笑)



結局、今年の夏後半は毎日祭りを楽しんでいた気がする


街の人達が『慰霊祭』の『後夜祭』だって言って、連日日が暮れてから祭りをしてたからだ


そのお陰で屋台の売り上げだけで『流行り病予防大作戦』と『慰霊祭』にかかった費用をほぼ回収出来たし


慰霊祭の会場を片付けた後に、ドワーフの皆さんと打ち上げと称したお花見大会もやったし


なかなか充実した夏で、俺は大満足だ♪






楽しかった夏も終わり、我が家にアストレア様が訪ねて来られた。


用件は色々とあるみたいだけど、1番重要なのはピスケス領で造られている、酒、醤油、味噌、の味見をして意見が聞きたいらしい


それはとても重要な事だから良いのだけど、我が家のリビングには俺とアストレア様とニィナ、そして何故かカスミとスミレが居る


他のみんなは、、、逃げたか(悲)


そりゃあ逃げたい気持ちも分かるけど、アストレア様には末長くお世話になるんだし、そろそろ慣れて欲しいなぁ


むしろ、カスミとスミレを置いて行った罪が重いから、しばらく禁酒の刑だな(笑)


それはさておき



「アストレア様、どうしてスミレを膝の上に乗せつつ、カスミと腕を組んでいるのですか?」


「こんなに可愛い子達が居たら仲良くしたいじゃない♪私にだって母性があるんだもの、たまには母として甘えられたいのよ


勿論、シンさんも私に甘えてくれて良いのよ♪」


「えぇーと、おそれ多いので遠慮しておきます。」


「あら残念」


「あのですね、ウチの子を可愛がるのは良いですけど、貴族の問題に巻き込む事があれば、私は手段を選ぶつもりはありませんから」


「ふふっ、珍しくシンさんの本気の本音が聞けて嬉しいわ♪


私はシンさんに嫌われたく無いから馬鹿な真似はしないけれど、他の人はそうじゃないわよ、それこそ手段を選ばないでしょうね


それにしても夏に開催した慰霊祭は凄かったわ♪シンさんにちょっかい出せる『人』が存在するのかしら、ねぇ?」


「ドーナンデショーネ、アハハ(汗)」



これは完全に色々疑われてるやつやん!


むしろ、核心に触れて来ない所が確信を持たれてる証拠と言えなくないけども


この問題は後でゆっくり考えよう。




「さてと、本題に入りましょうか、今日待って来た、酒、醤油、味噌、なんだけど少し面白い味になったから、是非シンさんに感想を聞きたくて来たのよ」


「面白い味ですか、ではさっそくペロッと」



ふむふむ


醤油はほんのり甘くて溜り醤油っぽいな


味噌はかなり色が濃く、味は赤味噌っぽいかな?


米から造った酒はとてもフルーティーで何故か桃の香りがして、日本酒というよりワインだな


まさか3つ揃って王道を外れて個性的な味に仕上がるとは



「アストレア様、3つとも素晴らしい味です、特に味噌が良いですね、これからの季節に合うモツの味噌煮込みとか、料理の幅が広がりますよ!」



「正直に言うと、味噌はシンさんに教えて貰って一番最初に試しに作った味噌なんだけど、倉庫の片隅で忘れられていた物なのよね(笑)


長期間放置されていたから駄目かと思ったけれど、意外と大丈夫なのね♪」


「えぇーと、私で安全を確認するのは止めて頂きたいのですが」


「食べ物の事でシンさん以上に詳しい人が居ないんだからしょうがないじゃない


用件は終わったし、お菓子を食べましょう♪スミレちゃんとカスミちゃんの好きなお菓子は何かしら?」


「えっとねぇ、ご主人さまの赤いケーキが好き♪」


「私もスミレと同じで、ご主人様が作った赤いケーキが好きです♪」


「赤いケーキ?いちごの事かしら?シンさん2人の好きな、赤いケーキが食べたいわ」


「はいはい、了解です。カスミ、赤いケーキっていちごのタルトの事?」


「いえ、中にいちごのムースが入っていて1番上に赤いゼリーが乗ってるケーキです。」


「ん~?1番上に赤いゼリー、、、そんなケーキ作った事あったかな?」


「主様、お耳を」


「おっ、おう」


「おそらく2人が言ってるのは、歓迎会の時に食べたケーキだと思います。あの時のケーキが美味しかったと話しているのを、幾度か聞いておりますので間違い無いかと」



そういえば2人が我が家に来た時の歓迎会で作ったな、スポンジの間にいちごのムースを挟んで、1番上にベリーで作った赤いソースを乗せたっけ


ゼラチンを入れて固めたから、プルンプルンのゼリーみたいなソースだったんだよな。


あの時は手作りする時間が無くて、スポンジもムースも出来上がってる物をスキルの「店」で購入して使ったから、手作りケーキとは呼べへんケーキやったけど


俺も忘れてたのに2人はそれを覚えてて、しかも好きなお菓子って言ってくれて、、、


いかん!


涙腺から心の汗が溢れてしまう!


おっさんになるとちょっとした事で涙腺が緩むから嫌になるぜ



「主様?」「ご主人さま~?」「ご主人様?」


「大丈夫や、これは、えぇーと、、、」


「目にゴミが入ったのですね?」


「そっ、そうそう!目にゴミが入っただけやから、ケーキはすぐ出すから待っててや」



『ぎゅぅぅ♪』


ありゃ?


顔に押し付けられてる、優しくて温かくて柔らかいこの感触は、、、



「我が家の秘伝でね、目にゴミが入った時はこうするのが1番なのよ♪」



顔に胸を押し付けても、目に入ったゴミは取れない気がするけれど


今だけは、全力でアストレア様の優しさに甘えるしかなさそうだ


でも、アストレア様が優し過ぎて、心の汗が止まる気配がないのはどうすれば良いのだろうか(汗)





マシュマロよりも柔らかく


マリアナ海溝よりも深い愛に助けられ


みんなの笑顔は必ず守ると


心の汗で濡らした胸に誓う



なんやかんやで異世界に馴染んでいる男、長倉真八


これは彼が、授かった能力を使いつつも普通に生きて行こうとする物語である。






第8.5章 完

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