第244話 流行り病予防大作戦
キャラバンシティに滞在していたエモンズ商会のタコヤーさんが、サウスビーチに帰るのを見送ってから数日
どうやらキャラバンシティに夏が来たらしい
まだ気温の変化はそれほど感じられないけど、今まで穏やかだった陽射しがやけに眩しくなった
長年キャラバンシティに住んでるミリーさんに聞くと、この陽射しの変化が夏到来の合図でこれから徐々に気温も上がるんだとか
そして夏に合わせて、流行り病(熱中症)の予防&治療薬のレシピが薬師ギルドにて無償公開された、ただしキャラバンシティ限定で。
まず薬って言ってるけど、スポーツドリンクを街でも手に入る材料で作れるようにしただけだ
レシピの公開がキャラバンシティ限定なのは、予防&治療薬の効果と安全性を確認する為、したがって他の街で作るのは禁止
そして予防&治療薬を使っての金儲けも禁止、違反すれば磔の後に斬首
以上が国王命令で出された。
レシピ自体は無償で公開されて誰でも自由に見れるのは良かったけど、一般市民で薬を作る人がいるのか?と問われると答えは
そんな事をする一般市民は存在しない。
そもそも一般市民は薬師ギルドに行かないし、レシピがあっても『薬』は専門家が作る物で自分で作れるなんて考えは無い
あとは識字率が低くてレシピを読めないとか、金が無いから材料を買えないっていう根本的な問題もある
流行り病の予防&治療薬で金儲けを許すと、高値で販売されて一般市民が買えなくなるのは目に見えているので、だからこそ金儲けが禁止されているのだが
オリジナルのドリンクだと言って売れば取り締まれないし、抜け道なんていくらでもあるからなぁ
結局のところレシピの無償公開の恩恵を受けるのは、富裕層と金儲けがしたい商人くらい。
一応、薬師ギルドと街の薬屋で予防&治療薬を無料で飲めるようにするらしいけど、普及しないだろうなぁ
そこでわたくし池田屋商会会長シン・ナガクラ、無い知恵を絞って考えました!
流行り病の予防&治療薬、普及が難しいなら無理矢理飲ませれば良いじゃない♪
今こそ大商会の財力と、王国十二家ピスケス伯爵家の御用商会としての権力を全力で使う時だ!
キャラバンシティの皆様、首を洗って待っていろ
ふははははははは♪
ーー数日後ーー
「まずは両手を空に掲げて伸び伸びと女神様に祈る運動、いち、に、さん、し、にぃ、にぃ、さん、し、、、
最後は大きく息を吸って~、吐いて~、吸って~、吐いて~、、、
皆様お疲れ様でした、流行り病の予防薬(スポーツドリンク)とお菓子は1人1個ずつ持って行って下さいね~」
ふぅ~、とりあえず初日はトラブルも無く無事終わったか
現在の時刻は
間もなく夜明けというまだ辺りが薄暗い時間、場所はキャラバンシティの中央広場で毎日朝市をやっている場所になる
そこで朝市をする人や客、他の街から来た行商人等々を集めて強制的にラジオ体操、、、ラジオは無いから普通の体操に参加させて
流行り病の予防薬(スポーツドリンク)と、粉末にした各種サプリメントを混ぜ込んだ特製のシリアルバーを参加者に配っている。
この数日、『流行り病予防大作戦』と銘打って実行するにあたり、各ギルドマスターや組合のジジイ共に頭を下げて根回しをしていんだ
今年の夏は池田屋商会が金を出して勝手にやるから文句を言うなと、その代わり効果があれば来年から皆で少しずつ金を出しあって協力して欲しいと
領主代行であるアストレア様の命令書を持ってな♪
手土産にお菓子と酒をたんまり持って行った事もあって、反対意見もなくスムーズに話が出来たのは良かった、やはり心付けは大事だな♪
他にも、門兵のロブさん達に協力して貰って街を出る際には流行り病の予防薬をコップ1杯飲まないと出られないようにしたし、街に入る時も予防薬を飲まないと入れない
これらは全て領主代行命令で強制だ。
そして夏の間は屋台で食べ物を買うともれなく水が1杯付いてくる、ここは予防薬(スポーツドリンク)じゃなくて普通の水にした
予防薬(スポーツドリンク)には糖分と塩分が含まれていて飲み過ぎはよくないからな、とにかくほぼ強制的に水分補給をさせれば流行り病(熱中症)になる人は減るはず。
流行り病(熱中症)の予防には栄養状態の改善と水分補給が必須、特に水分補給は喉が渇く前にこまめに水を飲む事が必要だ
そんな事を丁寧に説明した所でほとんどの人はやらないだろう、面倒だし効果の実証もされてないからな
だからこそ領主代行命令という強権を使っていて、これでも従わないっていう時は国王命令を出して貰う事も考えている
冷静に考えるとやってる事はめちゃくちゃだけど、毎年多数の死者が出てる以上は誰かがやらなきゃ駄目だ
実際に効果が出れば来年からは強制しなくてもよくなると思うんだけど
とりあえず俺は疲れたよ
この数日は馴れない事をやり過ぎた。他人の為に頑張るなんてらしくない事をするもんじゃないな、早く我が家に帰って休もう。
「おにいちゃんお疲れ様、『パンパン』ほら♪」
ん?
メリルはいったい何をしてるんだろう?
我が家に帰ってきた俺は疲れてるのもあり、夕食までひとり自室でぼぅーっとしようとしてたら、部屋にメリルがやって来たのだが
「えぇーっとメリル、それはどうしたら良いのか分からないんだけど」
「男の子って膝枕が好きでしょ?だからほら♪」
『パンパン』
なるほど、だから膝をパンパン叩いてたのか、こういう情報をどこで仕入れて来るのか気になるけど、、、ケイトかな?
それはまあ良い
本音を言うと俺は膝枕ってそんなに好きじゃない
出来ればメリルの顔を見てるだけで良いんだが、それを口に出すほど朴念仁ではないからありがたく膝枕をして貰うけどな!
「それじゃあ失礼します、よいしょっと、重くないかな?」
「大丈夫!」
「それなら良かったよ、、、何か良い事でもあったのメリル?やけに嬉しそうだけど」
「おにいちゃんが流行り病の事で頑張ってたから♪」
「あれは、ミリーさんやウェンディさんとか知り合いが流行り病になって欲しくないからだよ」
「それでも頑張った事に変わりは無いでしょ?おにいちゃんはやる気を出したら凄いんだから!」
「凄いかどうかは分からんけど、疲れるからあんまり頑張りたくないな、、ふぁ~」
「疲れてるんでしょ?夕食まで寝てて良いよ、起こしてあげるから」
「そう?じゃあお言葉に甘え、、て、、、」
「おにいちゃん?」
「、、、すぅ、すぅ、すぅ、」
「ふふっ、もう寝ちゃった(笑)頑張ってるおにいちゃんは凄く格好良かったよ、おやすみ」
『ちゅっ♪』
つづく。
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