第232話 雨季4日目

《雨季4日目》



今日は以前からミリーさんに泣いてお願いされていた組合の会合に参加する日だ。


開催される会合は2種類


池田屋商会が扱う商品に関係する組合の組合員だけで集まり、毎月1回開催される『定例会』


キャラバンシティにある全ての組合の幹部が集まり、年2回開催される『大会合』



定例会には誰が出席しても構わないって事なので、毎回商会の従業員に任せているから良いのだが


大会合に関して俺はめちゃめちゃ不満がある!


そもそも俺は組合の幹部では無い。むしろ商人になって1年未満のペーペーなんだ、大会合に参加する前に誰か俺に商人の基本を教えるのが先だろう。


にも関わらず、池田屋商会は大商会だからという理由で会長の俺は強制参加らしい


なんでやねん!


ここでゴネで会合を出席拒否すると、ミリーさんが泣いてしまうから参加するけども



そして同じく大会合に出席するガゼル親方から「手土産にビールを持参すれば誰も文句は言わないだろう」というアドバイス貰った。


このアドバイスから会合の趣旨もなんとなく予想出来るだけに、とても面倒くさい


超絶気乗りはしないけどニィナと一緒に大会合の開催場所にやって来た。


案内された部屋には、よくもまあこれだけジジイが揃ったなと関心するぐらいジジイだらけだ。


この国の平均寿命は短くて、平民ならジジイと呼ばれるくらい長生きする人は少ない、にも関わらずここにはジジイばかり、、、


護衛として一緒に来たニィナが、より一層美しく見えるのは喜ぶべきなのか悩ましいところだ。



「おっ!誰が来たかと思えば池田屋商会の会長殿ではないか、我々を待たせて1番最後にやって来るとは、今やグリフォンを落とす勢いの大商会の会長殿は違いますなぁ」


「ほぉほぉ、ピスケス伯爵家の御用商会で商売も順調とは羨ましい限りだ


しかし商会は立派でも、おしめが取れたばかりのハナタレ小僧が会長では従業員も苦労しておるのだろうな」


「まったくだ」


「「「「「わはははははは!」」」」」




「主様の苦労も知らずに自らの立場にふんぞり返っているだけのゴミ共が!私があの世に」


「ニィナ止めなさい」


「はっ!失礼致しました」



ほっ


ニィナが突然ブツブツ言い出して、静かな殺意をみなぎらせてたから一瞬どうなるかと思ったけど


まったく、目の前のジジイ共も嫌味を言いたいなら相手を確認してからにして欲しいよ、もう少しでこの部屋が血の海になる所だった。


俺は大会合に遅れてはいけないと、指定された時間より早く来た。


にも関わらず目の前のジジイ共はそれよりかなり早く集まっていたのだろう、中には既にほろ酔いのジジイも居る


部屋の奥でガゼル親方が笑いながらこっちを見てるという事は、これが通過儀礼とか洗礼とかそういうのなんだろうなぁ、実に面倒くさい



「えぇーと皆様、今宵は手土産にママのおっぱいの代わりに未だドワーフにしか販売していない酒をお持ちしましたので、どうぞご賞味下さい。」


シュポッ、シュポッ、シュポッ、シュポッ、シュポッ


「ママのおっぱい代わりとはなかなか洒落が効いとるではないか、乳臭く無いと良いがなぁ、ガハハハ!」


「とりあえず味見くらいはしてやろう、、、んぐんぐんぐ?!なっ、、、」


「「「「「なんじゃこりゃー!!」」」」」




持参したビールでジジイ共の度肝を抜いたからか、ニィナの機嫌も幾分良くなった♪



さてと


俺はガゼル親方の隣に行って詳しい話を聞こうかな



「親方こんばんは、隣失礼しますよ」


「ガハハハ!やはりお前さんと居ると退屈せんでええ♪ジジイ共の顔を見てみろ、あれだけで酒が3杯は飲めるぞ、わははは♪」


バンッバンッバンッ!


「ぐぇっ、げほっ、ごほっ、、、それは良かったですけど、この会合は何なんですか?」


「お前さんも既に察しておる通り、商売が成功して調子に乗った馬鹿な若手を潰す為に毎年恒例になっとる、、、いわばジジイ共の道楽じゃな


お前さんよりジジイ共の方が自分の立場に胡座をかいて調子に乗っとるだけの馬鹿なんじゃが、まぁお前さんには良い経験だったじゃろ?」


「商会が大きくなればいずれこういう事もあるんだろうと覚悟はしてたんで、親方からのアドバイスのお陰もあって『経験』としては良かったです。

しかしですね、親方は良かったんですか?」


「何がじゃ?」


「ここに居る人達、明日からビールを買いに池田屋商会に殺到しますよ。ビールの仕入れる量を増やすのは簡単じゃありませんからね」


「そっ、それは、、、ほれあれじゃ、ワシとお前さんの仲じゃ(汗)これからも優先して売ってくれるんじゃろ?


何か造って欲しいもんがあれば最優先でやるぞ!勿論代金なんぞ要らん!ワシとお前さんの仲じゃからな(汗)」


「そんなに焦らなくても良いじゃないですか、付き合いは短いですけど、ビールが売り切れた時にオリビエさんがどんな顔をするかなんてのは考えたくもないんですから」


「あ゛っ、、、うっ、うむ、ワシも考えたくない!」



親方ぁ~


オリビエさんの事忘れてましたよね?完全に忘れて今回の事をやっちゃいましたよね?


マジで事前に気付いて良かったよ



「それじゃあ意見も一致しましたし、オリビエさんの笑顔に」


「オリビエの笑顔に」


「「かんぱい♪」」






つづく。


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