閑話 レヴァティ・フォン・ピスケス
side:レヴァティ・フォン・ピスケス伯爵
「旦那様、ただいま戻りました。」
「お帰りアストレア、池田屋商会のシン殿は元気にしていたかい?」
「はい♪それはもう元気が有り余ってるみたいで、この間は浮島に行って帰って来たのよ、私ももう少し若ければ付いて行ったのに本当に残念(悲)」
「それは、、、元気があれば行ける所なのかい?」
「勿論よ旦那様♪シンさんが行けない所は神界くらいかしら?」
池田屋商会会長、シン・ナガクラ
アストレアの話でしか知らぬが、予想以上にとんでもない御仁だったか
最初アストレアから話を聞かされた時は単純に知識が豊富なだけだと思った、諸外国を渡り歩けばバルゴ王国には無い知識を得る事は可能
だからそれらの知識を使って商会を大きくしているのだろうと思った
だがしかし
彼(か)の御仁がもたらした物を見ているうちに疑問が沸いてきた
新しい保存食やレシピ登録された料理はどれも斬新ではあるが、基礎的な知識があれば誰でも作れる物ばかりで特別な材料も道具も不要、言ってみれば既にある物の改良版、いずれ誰かが思い付いた可能性は充分ある
だがシャンプー等の美容品はどうだろう
あのような物は私の専門外だが、おそらく薬の一種、やはり外国にある知識を元に作ったのだろうが
しかしだ、料理のレシピはいずれ誰かが思い付くかもしれない物ばかりだったのに対して、美容品は作り方はおろか材料の一部すら全く検討もつかない
この落差はどうにも気になる
例えるなら料理のレシピは、剣術の基礎をマスターした者向けの応用技
美容品は、遥か昔に絶えた古代魔法のような我らの理解を超越した何かに思えてならん
美容品は一般販売していないし代々受け継がれた秘伝と言われればそうなのだが、どうにも解せん
シン・ナガクラ
やはり一度直接会わねばなるまい
「ねぇ旦那様、真面目な顔をして何か悩み事かしら?」
「いや、私も一度シン殿に会いたいと思ってね、我が家に招待したいのだが」
「う~ん、それは難しいかも、シンさんは貴族と付き合うのは嫌みたいだから」
「アストレアとは良い関係を築いているのだろう?」
「勿論よ♪シンさんと仲良くなる為に私凄く頑張ってるんだもの!それにシンさんは面倒な事も嫌がるから」
「ふはははははは、貴族の招待は面倒か、アストレアが気に入る筈だよ♪」
「ふふふ、シンさんと居るととっても楽しいの♪だから旦那様とも会って欲しいんだけど、、、一応お願いしてみようかしら」
「うむ、今しばらくは焦らずより良い関係を築く事に専念した方が良いだろう」
「すべては旦那様の御心のままに。
そうそう、すっかり忘れていたけれど、シンさんが浮島の報告書を作ってくれたから、旦那様にも見て貰おうと持って来ていたのよ」
「報告書まで用意してくれるとは、至れり尽くせりだな(笑)
ではありがたく読ませて貰うとしよう『ペラッ』」
はぁ、、、
もはや溜息しか出ん、疑っていた訳ではないが浮島についてこのように詳細な報告書を作るとは
極め付きは、景色をそのまま写し取ったかのような絵だ、私は開けてはいけない扉を開けて、文字通りドラゴンの尾を踏んでしまったのではなかろうか、、、
「なぁアストレア、質問なのだがこの絵のドラゴンは凄く大きいように見えるが」
「そのドラゴン凄く大きくて立派よね♪大きさは王都の城壁から頭が出るくらいはあるかしら?
私、浮島のお土産にドラゴンを期待していたのだけど、連れて来るにはやっぱり大き過ぎたのかしらねぇ?」
「そっ、そうかもしれんが、、、まさか?!ドラゴンを使って馬鹿な貴族を消し去るつもりかい?」
「さすが旦那様、私の事を理解してくれていて嬉しいわ♪
でもひとつ問題があるのよ、ドラゴンブレスって馬鹿な貴族を狙ってピンポイントで出せるのかしら、威力が強すぎて近くの街も一緒に灰になると困るのよねぇ」
「・・・はぁ、馬鹿な貴族を灰にするのは止めろとは言わんが、やる時はドラゴンとしっかり話し合ってからにしてくれよ」
「勿論です、髪の毛一本すら残さず灰にするように綿密に打ち合わせする事を約束します!」
「うっ、うむ(汗)」
「そうだわ!以前から目障りだった貴族も幾つか排除して良いかしら?」
「出来ればアストレアには危ない事はして欲しく無いのだけど」
「ふふっ、お茶会に呼んですこーしだけ立場を悪くするだけよ(笑)」
「それならアストレアの好きにしなさい」
「ありがとう旦那様♪」
ふぅ
最近のアストレアがとても楽しそうにしているのはとても喜ばしい事だが、それに比例するように馬鹿な貴族供の排除にも積極的なのはいかがなものかと思う
しかも、放っておくとそのうち本当にドラゴンを連れて来かねん
アストレアと夫婦になっておよそ20年、未だにその辺りの扱い方が分からん、シン殿はその辺りを上手くやっているようだが
私に出来る事なら何でもするから、アドバイス欲しいなぁ
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