閑話 ポチ

side:ポチ




俺の名前は


ポメラニーオ・ダニーラッセル・チワーワ・モノセロス


獣人国の犬耳獣人族


ドーベルニーオ・ダニーホワイト・モノセロス男爵の5男



皆は俺の事をポチと呼ぶ



幼い頃は『ポチ』が可愛い名前だって言われて嬉しかった記憶があるが、成長するにしたがって名前に可愛らしさは要らないと気付いた


既に手後れだけどな(悲)



俺の名前はポチで定着してしまって本名を知らない奴の方が多いからだ



モノセロス男爵家は


貴族なんて名ばかりのよくいる田舎の貧乏貴族、まあ獣人国そのものが貧乏だから嘆いても仕方ない


仕事も領民と一緒に畑を耕し森で狩りをしてその日の糧を得るのが精一杯の暮らしをしている


そんな貧乏貴族の5男なんて悲惨なもので、こんな田舎に嫁ぎに来る貴族の女性が皆無なのは当然として、日々の生活だって行商人の方が良い暮らしをしているだろう


田舎の貧乏貴族とはいえ貴族としての体裁を整える為に、あらゆる物を節約してそれなりの格好をしなければいけないからだ


そんな暮らしをしているので兄や姉達の多くは既に家を出ている。今頃は何処かの商家で下働きをしたり冒険者として働いているはずだ


はっきり言って獣人国の貴族はどこも没落寸前、それは同時に国が消滅する危機でもあるが、いっその事他国に侵略して貰い植民地なりなんなりにしてくれた方が暮らしは楽になるかもしれない


それぐらい獣人国の現状は厳しい


そんな暗い未来しか無さそうな獣人国に居るより、俺は他国に行ってただのポチとして立身出世してみせる!


俺が出て行く事で食い扶持が減れば、弟や妹達も少しは、、、本当に少しだけど暮らしが楽になるだろう


その事を親父に言ったら、その日のうちに保存食のカッチカチパンを渡されて送り出されてしまった


いや、あの、父さん、もうちょっと準備期間が欲しいんだけど、、、


あぁ~、畑の収穫前で1番苦しい時期だから、弟や妹達が空腹を我慢するのも限界なんだね


え?


仕送りは要らないから1人で立派に生きていけ?あっ、はい、父さん、母さん、皆達者で、行って参ります!




ーーーーーーーーーーーーーーー



side:ダックスニーオ・ブルーム・モノセロス



獣人国の王都を出発して数日、俺は隣を歩く妹のコリーに声をかける



「コリー疲れていないか?」


「問題無いわダックス兄さん、それよりキャラバンシティに獣人でも出来る仕事あるかしら?」


「分からないけど、噂じゃ仕事を求めて色んな所から人が集まってるらしい、人が集まるって事はそれなりに仕事もあるんじゃないか?」


「それって人族だからじゃないの?獣人は身体能力は高いけどお世辞にも頭が良いなんて言えないから」


「まぁな、しかし獣人でも出来る力仕事のひとつくらいはあるだろ」



俺とコリーは仕事を求めてバルゴ王国のキャラバンシティを目指している


聞いた噂によると現在のキャラバンシティには、他国の商人や冒険者が仕事を求めて集まっているらしい


なんでも最近街の拡張工事をしたらしく色々と人手不足なのだとか。街の拡張工事なんてそうそうある事ではないけど


本当に拡張工事をしたのなら新しい住人の為の住居を作る職人や、資材を運ぶ人足等


そういう人達が食事をする場所だって新しく必要だろう、そうすると必然的に雑用だって多くなるから獣人でも出来る事があるはずだ。



そんな事を考えていると前方に立派な石壁が見えて来た



「あそこに見えるのキャラバンシティに入る為の列じゃないか?」


「そうみたいね、、、ってダックス兄さん!あそこの列に並んでる犬耳ってポチじゃない?」


「ちょっと待てコリー、ポチはまだ13歳だろ、いくらなんでも家を出るには早過ぎるよ」


「じゃあ呼んでみれば分かるわ、おーいポチー!」




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side:ポチ



ここがバルゴ王国のキャラバンシティか、王都でもないのに立派な石壁だなぁ♪


でも街に入るのに並ばないといけないのは面倒だな、凄く長い列が出来て時間もかかりそうだ



「おーいポチー!」



あれ?この声って、、、



「コリー姉さん?!それにダックス兄さんも、久しぶりですね2人はどうしてバルゴ王国に?」


「久しぶりポチ、俺とコリーは仕事を求めてだよ、働いていた商家が潰れてしまってな。それよりポチはどうしたんだ、家を出るにしても成人まであと2年あるだろ」


「そうなんですけど、弟や妹達の事を考えれば早い方が良いかと思いまして、まぁその事を父さんに言ったその日に送り出されるとは思いませんでしたけど(笑)」


「ははは、モノセロス家は貧乏なのに親父がどんどん子供を作るからなぁ」



「ダックス兄さんもポチも、ゆっくり話すのは街に入って宿を決めてからにしましょ」








無事に街に入れた俺達3人は大通りを歩きながら宿を探している、それにしても凄い人の数だ


商人が多いのも驚くけれど武器を持ってる人は冒険者かな?


格好良いなぁ♪



「ポチ!あんまりキョロキョロするなよ、人族の中には目が合っただけで喧嘩を売られたって思う奴がいるらしいぞ」


「えっ?!ダックス兄さん本当ですか?だとしたら人族って凄く野蛮な種族なんじゃ、、、」


「詳しくは分からんがとにかく不用意に目を合わせないようにしろよ」


「はい!」





『ズッキューーーーーン♪』


「あっ、あの子は・・・」


「ん?おいポチ、キョロキョロするなとは言ったけど一点を見つめるのもやめとけよ」


「ダックス兄さん、あそこ!あそこの犬耳の女の子!」


「犬耳?、、、あぁ、あそこの身なりの良い男が連れてる子か、随分大事にされてるみたいだな。それにダークエルフも連れてるなんて珍しいな、護衛か?」


「ダックス兄さん、俺あの犬耳の女の子に惚れた!」


「ちょっとポチ、惚れたってあの犬耳の子成人までまだ10年以上はあるわよ?!」


「コリー姉さん、俺決めたよ立派な男になってあの子が成人したら迎えに来る!」


「待ちなさいよポチ、言ってる事がめちゃくちゃよ(汗)」




ダックス兄さんとコリー姉さんは凄く驚いてるけど


自分でもどうしてあんな小さな子に惚れたのか分からない、でももう他の女なんか目に入らないんだ


とにかくあの男とあの犬耳の女の子の事を調べないと


確か目の前の立派な建物から出て来たよな、まずはあそこで聞き込みだー!!



ーーーーーーーーーーーーーーー



side:ポチ



キャラバンシティに来てからあっという間に10日が経った


俺はダックス兄さん、コリー姉さんと共に池田屋商会に見習い配送夫として雇われ働いている。


池田屋商会では人手不足で常に従業員を募集しているのだけど、採用条件は身元がはっきりしていて保証人が居る事と、他はやる気があれば不問


その条件を父さんが解決してくれた、まぁ勝手に保証人にしたんだけど(笑)


男爵家当主が保証人なら文句無しって事であっさり採用されたんだ、ダックス兄さんもコリー姉さんも最初は勝手に父さんを保証人にする事に反対していたけど


俺がどうしても池田屋商会で働きたいと押しきった


結果的に採用されたし給金も悪くないから仕送りも出来るだろう、ダックス兄さんもコリー姉さんも今では喜んで働いている




そしてどうしても池田屋商会で働きたかった理由は


なんと俺が惚れた犬耳の女の子は、池田屋商会の会長が本当の娘のように大切にしている、スミレさんという名前の子だったんだ!


ならば、池田屋商会の会長は将来俺の義父殿になる御方、待ってて下さい義父殿


いずれあなたの娘に相応しい男になって挨拶に参りますから!







俺の名はポチ


惚れた女を幸せにする為


いずれキャラバンシティで1番の配送夫になる男


今はただの見習いだけどな!



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