第219話 scarlet heart
『ゆさゆさゆさ』
う~ん、
誰だ俺の身体を揺さぶるのは、まだ寝かせてくれよぉ~
「主様、、、主様起きて下さい」
「、、、はっ?!ニィナ?」「静かにして下さい、みんなが起きてしまいます。」
「おっ、おう、まだ夜明け前なのにどうした?」
「まずは一緒に1階に参りましょう」
よく分からんけど、もうすぐ夜明けという時間にニィナに起こされてしまった、一瞬盗賊が襲撃にでも来たのかと思ったけど
ニィナの様子から違うっぽい、ケイトがまだ爆睡してるから間違い無いだろう
ケイトはAランク冒険者だから危機察知能力も優れているはずなんだ
そのケイトが腹を出して爆睡しているって事は危険は無いんだと思う。まあ本当に危機が迫っているならフェンリルのリリーが見逃さないだろう
「ここでお待ち下さい」
「おう」
何故か1階の扉の前で待たされたけど、マジで何なのだろう
あれ?
なんか扉の外でガサガサ音が聞こえる、、、本当に盗賊の襲撃とかじゃ無いんだよな(汗)
ニィナがドアノブに手をかけてタイミングを計ってるように見える
『ガチャ』「きゃっ?!」
ニィナが扉を開けた瞬間倒れるように誰かが家に入って来た、ちょうど扉の前に俺が居たから、家に入って来た奴を抱き止める格好になってしまった
むむ!
俺が抱き止めた奴は凄く細い体つきなのにとても柔らかい感触もあるという不思議体験
スンスン
しかも、ちょうど俺の顔の下に相手の頭が来て良い匂いが♪平民とはあきらかに違うこの髪の匂いには覚えが、、、
「ペトラ様?!」
「あら、シンさんおはよう♪でもいきなり扉を開けるなんて危ないじゃないの!」
「あっ、はい、申し訳ありません。」
とりあえず抱き止めていたペトラ様を立たせて姿をよく見ると、髪の毛は頭の後ろで束ねられ
服装も俺が商会の従業員に支給している作業用のお洒落ジャージを着ていて
見た目だけなら爽やかなスポーツ系美少女って感じになっている、昨日の盛り盛りでフワッフワの貴族のお嬢様ファッションより、俺は好きだけど、、、
扉の外を見ると、眠そうにあくびをしているシェラさんと、申し訳なさそうにこちらを見ているレサト殿
他にも、お付きの人やメイドさんに護衛、どうやら全員来てるみたいだけど
「ペトラ様その格好は、、、」
「この服は、シンさんはこういう格好が好みだってニィナさんが教えてくれたの
それに下着も、スポーツブラだっけ?それを池田屋商会で買って着てるんだけど、この服と合わせて凄く動きやすくて良いわ♪
こんなに良い物を売ってるなら早く教えなさいよね!
それに昨日お手伝いした時に気付いたのよ、ドレスのままだと仕事の邪魔にしかならないって」
「服については分かりましたけど、これほど早朝に来られたのは何か緊急の用でしょうか?」
「大事な用件だけど心配するような事じゃないから安心して
本来は2~3日滞在してから帰る予定だったのだけど、急いで帰って父にシンさんがとても素敵な人だと教えたいの、だからお別れの挨拶に来たのよ」
「それはまた急ですね、今日はペトラ様にこの街発祥のトマト料理を食べて貰おうと、お昼ご飯に誘う予定でしたが仕方ありません」
「トマト料理?!お嬢様、帰るのはお昼ご飯食べてからにしましょう!」
わぁお!
シェラさんさっきまで眠そうにしてたのに聞き逃さないとは流石だな(笑)
「シェラ、残念だけど今日は諦めなさい、こっちに住むようになったら幾らでも食べられるんだから
それとシンさん、お昼ご飯のお誘いは嬉しいけれど、女性を誘うならランチって言わないと誰も来ないわよ」
「へぇ~、そういうものなのですね、ですが私は『お昼ご飯』を一緒に食べてくれる女性が好きですね」
「わっ、私は呼び方なんて小さな事は気にしないから、お昼ご飯を喜んで食べるけどね(汗)」
ふふっ、ペトラ様のこういう所は年相応に可愛いんだよな
「シンさん、残念だけどそろそろ行くわね。もう少しこっちに来て貰えるかしら」
「はい、この辺りでよろしいですか?」
『チュッ♪』
「っ?!、、ペぺ、ペトラ様?!」
「やったぁ、シンさんの驚く顔が見れた♪私シンさんの事が本気で好きになったみたいなの。でも私だけ好きになるなんて悔しいじゃない!
だから今度会う時は、シンさんの胸にアンタレスを射ち込んで絶対私に惚れさせてあげるんだから!」
「え?、、、痛いのは嫌なのですが(汗)」
「ふふっ、痛いかどうかは楽しみにしてて、スコーピオン家の女は狙った獲物は逃さないんだから♪シェラ行くわよ」
「はい、お嬢様♪」
えぇー!
マジで痛いのは嫌なんだけど、、、
そんな俺の心情を察してなのか、馬車に乗り込むペトラ様はとても良い笑顔でいらっしゃる
まっ、女性の素敵な笑顔が見られれば大抵の事はどうでもよくなる俺は、チョロいおっさんなんです。
「シン殿ぉー!キャラバンシティに戻って来た時には、また美味しい料理を沢山食べさせて下さいねー!」
「シンさーん、ニィナさーん、またねーばいば~い♪」
なんやかんやあったけど、とりあえずお見合いは無事に乗りきった、で良いのだろうか?
最後まで俺の何処に惚れるポイントがあったのかは謎のままだし
これからの、なんやかんやを考えると不安しかないのだけど(汗)
「しかし、良かったのかなぁ」
「何か気になる事でもあるのでしょうか?」
「公爵家のお嬢様にジャージは駄目な気がするんだけど」
「私はドレスより似合うと思い教えて差し上げたのですが、出過ぎた真似だったでしょうか」
「そんな事は無いよ、ジャージは良く似合ってたし、素敵な笑顔の女性が増えれば世界は平和になりそうだから、本人が気に入ってるならそれで良いよ、、、?」
『ちゅっ♪』
「っ?!ちょっ、ニッ、ニィナさん?」
「右の頬だけではバランスが悪うございますので」
「えぇー?!、、、そういうものなの?」
「はい、そういうものでございます♪」
「それなら良いのか?」
「ふふっ、早く朝食作らないとみんなが起きて来ちゃうわよ、ほら急いで♪」
「おっ、おう」
俺の背中を押して厨房に向かうニィナは凄く嬉しそうな顔をしている
そんな顔をされたら惚れちゃうだろ!
いや、既に惚れてるか♪
でも俺は、、、
今は朝食が先だな、ニィナの素敵な笑顔が見れたから
今日は豪華なサラダを作ろうと決意する俺は、チョロいおっさんなんです。
そんなチョロい自分が
俺は大好きだけどな♪
心に芽生えた感情の
答えを知った女(ひと)がいる
緋色に染まった心の行く先に
迷う道などありはしない
互いに叶わぬ想いと知りつつも
2人の心は晴れ1択
女心に鈍感な男? 長倉真八
これは彼が女心を学ぶ物語、、、
なのかもしれない。
第8章 完
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