第215話 お見合い その4

「私はね、昔からこの国のやり方には納得出来なかったわ、どんなに優秀であろうと身分が低いから、他種族だからという理由で下働きしかさせて貰えない


その反面、身分や家柄が良ければどんな馬鹿でも優遇されるのよ、そんなのおかしいじゃない!


でもね、身分や家柄で優遇するのも理解は出来るのよ、誰だって自分が1番大事だもの


偉い人に良く思われたいし無理して上を目指すよりも、馬鹿な権力者の言いなりになるだけで、現状を維持出来て平和に暮らせるならその方が良いもの


その結果多くの貴族は身分や家柄でしか物事を見なくなって、今や王都の中枢はお馬鹿さん達の憩いの場になってるけどね


それでも、アストレア様やゲオルグ叔父様は現状を変える為に頑張っているのだけど、、、」




へぇ~、アストレア様が貴族の面倒くさいなんやかんやを頑張ってるのは知ってたけど


この国って想像以上にヤバイんじゃねぇか?



「そんな訳だからお馬鹿さん達のせいでこの国は滅亡に向けて突き進んでるのよ、父を始めとした王国十二家の現当主達が居なくなれば、その勢いは間違いなく加速するでしょうね


今の王国十二家の当主は、皆稀代の英雄と呼ばれるような偉大な人達なの


その人達が居てもこの国は現状を維持するので精一杯、それくらい王都の中枢は腐ってるのよ」



マジか~、国が滅亡するとか勘弁して欲しいなぁ


この国が自滅するだけならいいけど、他国と戦争して負けたら大変そうだよなぁ (汗)


今もどっかの国と小競り合いをしているのは、王都のお馬鹿さん達のせいなのだろうか?


創造神様に頼めば、王城だけを吹き飛ばしてくれそうだけど、、、


普通のおっさんには、よう知らん国の政治とか難し過ぎるぅー!




「ペトラ様、そういう事はこんな所でしていい話ではないと思うのですが」


「国の現状を知るのは国民の権利だから問題無いわよ、それに私のやりたい事にはシンさんの協力が必要だから」


「私は国とか難しい話はよく分かりませんよ、私に出来るのは商売で稼ぐくらいですから」


「ふふっ、私も国をどうにかするとか難しくてさっぱりよ(笑)


でもやる事は凄く簡単、奇しくもシンさんが商会でやってるのと同じ事ね、身分や種族に関係無く優秀な人を雇うだけ


私は常々考えていたの、孤児や他種族の中にも優秀な人は沢山居るんじゃないかって、そしてその人達を見付けられれば


池田屋商会のように大きな商会を作るのも、それほど難しい事ではなくなるはずよ


お馬鹿さん達を優遇するより、本当に優秀な人を雇う方が得だって分かれば、この国も少しずつ変わっていくんじゃないかしら?それにはシンさんの人を見る目が必要なの!」



「ペトラ様、何か勘違いをしてらっしゃるようですので、はっきりと言いますけど


私に人を見る目はありませんよ」


「あら、過度な謙遜は失礼にあたるって教わらなかったの?池田屋商会を見れば優秀な人を選んで雇ってるのは一目瞭然じゃない」


「従業員が優秀なのは認めますけど、池田屋商会で働いている従業員の多くは、知り合いに頼まれたり、アストレア様から押し付けられたり、様々な事情から仕方なく雇った者達です。


数名ですが、私が直接声をかけた者もいますけど、優秀な人を見極めろと言われても私にはさっぱり分かりませんよ」


「じゃっ、じゃあどうしてあんなに沢山の優秀そうな人達が居るって言うのよ?優秀な人を見極める秘訣があるからじゃない!


まだシンさんと結婚してない他人の私には秘密にしておきたいって事なら、そう言いなさいよ無理に聞かないから」



「いえ、本当に秘密も何も無いんですが、、、


そういえば昔の偉い人が言ってたのを思い出しました『人は皆優秀な生き物である』という事らしいです」


「それが本当ならどうしてお馬鹿さん達が増えるのかしら?」


「まあ優秀な事と馬鹿は関係がありませんからね、頭は良いけど馬鹿な人というのはいつの時代も存在するものですよ(笑)


『優秀』と言ってもそれぞれで違いますから、ある者は剣術だったり、またある者は読み書き計算だったり


池田屋商会は出来るだけそれぞれの得意な事を活かす仕事をさせるようにしてます。


たとえ得意な事を活かせる仕事が無くても、1から丁寧に教えれば、何処に出しても恥ずかしくない程度にはなりますよ。」


「むぅ、、、」




ありゃ?


頑張って説明したのにペトラ様の御機嫌が斜めなんだが(汗)



「ペトラ様はどうにも納得されてない御様子、それなら従業員と直接話してみてはどうでしょう?


ウチは露店も出してますからついでに街を案内しますよ、せっかく遠方から来られたのですから、この街の名物料理も食べて欲しいですからね」



「名物料理?!やったぁー♪


お嬢様急いで下さい!この街の名物料理が私を待っています♪さあシン殿」


『ガバッ』


「わっ!シェラさん?!」


「え?ちょっ、シェラ?!」


「いざ名物料理を食べに!」


『ガチャ、ダダダダ!』








俺は今、シェラさんにお姫様抱っこをされながら街中を疾走中です。


後ろを見るとペトラ様もニィナにお姫様抱っこをして貰いしっかり追いかけて来ているけれど


この2人、本当は創造神様とちーちゃんさんの世を忍ぶ仮の姿なのでは、、、


それは無いか、本物の創造神様とちーちゃんさんなら、もっとシンプルに料理を要求してくるだろうからな


でも俺をお姫様抱っこしながら料理を求めて走るシェラさんは、凄くちーちゃんさんっぽいんだよな(笑)










春過ぎて


公爵令嬢とお見合いと姫抱っこ



人々の視線を集めてもなほひた走り


求める我が平穏は


神のまにまに





シン・ナガクラ、心の詩。






つづく。

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