第207話 会長のお仕事
「はぁ」
「主様、あまりお気になさらなくても良いかと思いますが」
「そうなんだけど、相手は公爵令嬢だしお見合いも初めてだから緊張するんだよ」
思わずため息が出てしまいニィナに心配させてしまったか
季節はもうすぐ雨季
キャラバンシティを含むバルゴ王国の東部地方はもうすぐ10日ほどの短い雨季に入るらしい
なので雨季に入る前に畑のブドウを収穫してワインの仕込み、そして雨季が終わればいよいよウィスキー用の畑に苗を植えるんだ。
元世界だと苗から収穫までどれくらいの期間がかかるのかは知らないけれど
スキルの「店」で購入したブドウの苗は創造神様の創った物だからだろうか、たいした手間もかからず凄く順調に育ってデッカイ実を付けている
そのまま食べても美味しそうだけど、それはオリビエさんが許してくれそうにないからな(笑)
今回は全部ワインにするから、最近はその準備で忙しいんだけど、、、
アストレア様からお見合いの話をされてから約1ヶ月半が経ち、明日とうとうお見合い相手のアレサンドロ・ヴァン・スコーピオン公爵の4女
ペトルーシュカお嬢様がキャラバンシティにやって来る
アストレア様からは気に入らなければ断って良いと言われてるし、俺は最初から相手が誰であろうと断ると決めているのだが
公爵家のお嬢様だからなぁ
本当に断れるかは分からない
なるようにしかならないけど、この忙しい時期と相まってため息のひとつも出るってもんだよ(悲)
そんな今日は商会の本店で会長としてのお仕事だ。
メリルが提案した『配送業務』と『貸しテント』はお試しでやった初日から評判になり
他の商会も真似するくらいの人気になったのは良かったんだけど、当然ながら問題も出てきた
配送業務をやりたい人は沢山居るけど、荷物を持ち逃げされる危険があるので誰でも良い訳ではない
そのせいで配送業務は慢性的に人手不足、それなりに信用出来る人の奪い合いになっている
とは言え、他の商会にリヤカーは無いし、配送業務をする人にはテントの代わりに天幕を貸しているけれど、お世辞にも快適とは言えない為
今のところ商業ギルドの一人勝ちだ♪
池田屋商会にもリヤカーとテントを売って欲しいという問い合わせが殺到しているけど全て断っている
だけどもう少し落ち着いたらテントは売ってもいいかもしれない
何故ならこの辺りは雪こそ降らないものの冬は普通に寒い、天幕無しで野宿しても凍死はしないかもしれんが体調を崩してそのまま、、、
っていうのはよくある事みたいだし
それで商業ギルドが確保した空地に、主に配送業務をしている人達向けのテント広場を作り、犯罪や揉め事防止の為に池田屋商会で新たに警備部門を設立した。
最近まで研修も兼ねて、こども園周辺の警備をしていたのだがこの度正式に
『池田屋商会見廻組』
として活動する事になった。
メンバーはどっかの馬鹿な貴族が違法に手に入れた奴隷達がほとんどだ
主犯の貴族が捕まり残された奴隷達の処遇に困っていた所を、アストレア様に押し付けられたっぽい
池田屋商会は人手不足だし、主人を裏切れない奴隷はありがたいんだけど、このまま行くと奴隷商より奴隷が多くなりそうな勢いだよ
嘆いても仕方ないから気を取り直して、警備部門のメンバーにはスキルの「店」で揃いの制服も用意した
海上自衛隊陸上戦闘服、ブルーのデジタル迷彩仕様だ♪
元々コスプレ用のレプリカだから細部は違うんだけど、試しに制服を着せて整列させてみたら威圧感がハンパなかったよ(汗)
奴隷になると主人である俺に逆らえないし裏切る事も出来ないのだが、俺の奴隷になった経緯が特殊なだけに多少の反発はあるかと思ったら
逆に俺への忠誠心が限界突破して、気合いが溢れまくった結果の威圧感だった。
池田屋商会に連れて来られた時に皆ガリガリに痩せてたから、腹一杯食べさせれば大人しく命令に従うだろうとは思ったけど、原因はそのあとに与えたテントにあった
現在のキャラバンシティは人口増加による住宅不足の為、新しく来た奴隷達の住む場所が無くて代わりにテントと寝袋を支給した。
今回支給したテントは商業ギルドに提供してる物より少し大きい1人用のテントなんだけど
それがめちゃくちゃ喜ばれた!
理由を聞いたら他人に見られないプライベート空間があるだけで最高らしい。
他にも支給した寝袋が最高だとか、すきま風が入らなくて最高だとかあった
他にもなんやかんやあり
警備部門の奴隷達の俺への忠誠心が限界突破した結果
池田屋商会見廻組は、バリバリの武闘派集団みたいになってしまった(汗)
まあ、見廻組の組頭がニィナになった時点である程度覚悟はしていたけどな
とにかく!
揃いの制服で見栄えも良いから、将来的には憧れの職業になりそうな予感がする♪
それとちょっとした遊び心で、見廻組の制服の胸のワッペンには『JAPAN』
肩のワッペンには漢字で『池田屋』と『一番隊』の文字を入れてみた
メンバーは全員で9人、この9人が池田屋商会見廻組、『栄光の一番隊』初代隊員となる
今後、隊を増やすかは未定だけど領主不在のキャラバンシティなら、治安を守る組織は必要だろうからアストレア様に相談してみようかと思っている。
とまあ最近の出来事はこんな感じだろうか
今日のお仕事は定期的に行っているニィナによる見廻組への激励と
人手不足の配送業務に池田屋商会からも人を出す事になったから、俺から激励の言葉をかける為に商会の本店にやって来た
そして今、俺の目の前には配送業務を行う配送夫として3人の犬耳獣人、ダックス、コリー、ポチが緊張した面持ちで並んでいる
ダックス、25歳男性
コリー、19歳女性
ポチ、13歳男性
この3人は奴隷じゃないけど、ウチの人事部門担当の面倒くさい男のアルが、身元は確かだから問題無いって言うので見習いとして採用している
3人ともなんとなく顔が似てるから兄妹なのかもしれない
ウチの採用基準はほぼ信用出来るかどうかだけだから、従業員の事は名前と保証人が誰か、という事以外はほとんど知らなかったりする
この3人の保証人は、、、同じか
『ドーベルニーオ・ダニーホワイト・モノセロス』
家名持ちが保証してるなら確かに信用は出来る、、、か?
この国じゃ家名付けるのは自由だからなぁ、産業スパイの線もありそうだけど、アルが問題無いって言ってるし考えても分からんから、まあいいか
「それじゃあ3人とも配送業務を頑張って下さい、期待してます。」
「「「かしこまりました!!!」」」
おおっ!
この3人も気合いが凄くてビビるんだけど、頑張ってくれるなら問題無し!
次はニィナによる見廻組への激励だな
「良いですか皆さん、逃げる者は敵です、逃げない者は訓練された敵です。我らが主の邪魔をする者には地獄の苦しみを!」
「「「「「「「「「イエス・アイ・マム!!」」」」」」」」」
おぅふ(汗)
ニィナさん、いつからここは軍隊の訓練所になったのですか?
よし!
見なかった事にして早く帰って、カスミとスミレのもふもふに癒されよう!
つづく。
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