閑話 酒とドワーフと酒好きな人
side:ドワーフの里の見習いドワーフ
「お~いバッグズ、聞いたか?」
「あぁん?なんだビッゲズじゃないか、またボッジズの野郎が酔って路上で寝てたんだろ」
「違、、、違わないけどよぉ、そっちじゃねぇんだよ、オリビエ様の話だよ」
「あれか、なんか火酒より旨い酒を造るからって里のドワーフを集めてるんだろ、そんな酒あるわけねぇよ」
「それがよぉ、案外デタラメな話でも無いらしいんだよ、親父のとこにオリビエ様から酒が届いたんだけどよ、それを飲んだ親方連中が里を出て移住するって言い出して、長老達と揉めてるんだよ」
「そういや、ビッゲズはオリビエ様と遠縁だったか」
「おう、それで長老達は里から出て行くなら二度と火酒は売らんぞって言ってる」
「今でも火酒は俺達には売ってくれないのにか?クソジジイ共め馬鹿にしてやがるな」
「だからよぉ、コレ飲んで旨かったら一緒に移住しないか?」
「なんだよその瓶」
「ヘッヘェー♪親父に送られて来たビールって酒を1本こっそり頂いて来たんだ、移住したら定期的に飲めるらしいぞ」
「ビッゲズやるじゃないか!さっそく飲もうぜ、、、ってコルクが無いな?」
「珍しいだろ?専用の道具で開けるんだけど、瓶の先っぽに付いてるギザギザを下からハンマーでこうやって、、、よっと」
『シュポッ』
「おおっ!こりゃ良い♪コルクより手軽だし安物のコルクだと中で割れちまうからな、とにかく飲もうぜ」
『トクトクトクトク』
「あれ?エールに似てるけど、エールじゃ騒ぎにならないか、それじゃあ」
「「カンパイ、んぐんぐ・・・」」
「「ウメェー!!」」
「これが火酒より旨い酒か!」
「火酒なんて飲んだ事無いから分かんねぇけど、これから造るって話だから違うんじゃねぇかな?」
「こんなに旨い酒が定期的に飲めるのに更に旨い酒が・・・
ビッゲズ、俺は移住するぞ!クソジジイ共に偉そうにされるのにはウンザリしてたんだ」
「へへ♪そう言うと思って、もう荷物を纏めて来たんだ、って言っても仕事の道具しか無いけどさ(笑)」
「ははは、俺だって似たようなもんだよ、今から取って来るからボッジズの野郎にも声かけといてくれよ、里の入口で待ち合わせだ」
「おう!」
ーーーーーーーーーーーーーーー
side:酒好きなサウスビーチの領主
まさかオフューカスが事故で亡くなるとは思わなかった、しかもレオニードとニコライの両方同時とはな
奴等、ワシが探りを入れたら一目散にキャラバンシティに逃げおった、あれでは探られては困ると叫んでいるのと同じであろうに
奴の屋敷を調べたら予想通りというより予想以上だったが
地下からエルフ、ダークエルフ、獣人、人族、等々何処かから拐って来たと思われる者達で溢れておったからな、おまけに銀に混ぜ物をした偽銀貨も大量に見つかった
オフューカスの一族郎党は捕まえて取り調べ中だが全員処刑台送りだろう、おとなしく砂糖の儲けで満足しておれば良かったものを、
身の丈に合わぬ贅沢をしたせいで、砂糖の儲けだけでは領地の経営が成り立たなくなっておったからな
お陰で奴の領地をワシが治める事になったのに、事後処理に追われて手付かずだ
あまり長く放っておくとあそこの領民の生活が立ち行かなくなるのだが、こちらも余裕が無いのが現実だ
シン殿なら何か方策を出してくれるやもしれんが、今回はこちらの事情に巻き込んだかたちだからな、これ以上迷惑はかけられん
あの御仁は優し過ぎる所があるから、今回の出来事に対して気にしておるかもしれんが、、、それは周りの者達に任せるか
良き仲間が多いというのもまた才能であろう
『コンコン、ガチャ』
「失礼します。」
「何用だセバス」
「先程、池田屋商会から旦那様と奥様宛に荷物が届きました、こちらにお運び致しますか?」
「そうか♪運んでくれ」
「かしこまりました。皆様、運び入れて下さい。」
「「「へい!」」」
池田屋商会からか、以前手紙にて酒と美容品を送ってくれるよう頼んでおいたからそれであろう、仕事が早くて助かる
「ん?、、、ちょっ、ちょっと待てセバス!その巨大な木箱は何だ?」
「池田屋商会からの荷物でございます。手紙も一緒に届いておりましたので、どうぞ」
「うむ」
しかし、大人が余裕で入れそうな木箱を10個も寄越すとは、さすがに代金を考えると恐ろしくなるのだが(汗)
とっ、とりあえず手紙を読むか、ふむふむ、木箱の中身は酒と美容品の他は、試作品の保存食と日持ちする菓子にドレスまであるのか
なるほど、妻のソレイユや他の使用人達の感想を教える代わりに代金は不要と
ほっ
正直助かったな(笑)
だが返礼は必要だ、エモンズ商会に頼んで魚や貝を贈ればいいだろう。シン殿は珍しい物が好きらしいから冒険者に頼んで探させてみるのも面白いか、案外サウスビーチの新たな名物が出来るかもしれんしな♪
それに、最近トラサンダー氏が砂糖の製法を無償公開してくれたお陰で砂糖が普及してきたからな
シン殿なら砂糖を使って更なる美味しい菓子を作るだろうから、対価を払って我が家の料理人に教えて貰うか
はっきり言ってレシピを見ても、シン殿が作ってくれた料理と同じ味には程遠いのだ
いっその事、娘の誰かと結婚してくれんかなぁ
今すぐが無理でも数年後に末の娘と結婚してくれても良いのだが
そうすれば酒に合う料理も毎日食べられるし、酒に入れる氷も何時でも出して貰えるのだがなぁ
「旦那様、よろしいですか?」
「おっ、おう、どうしたセバス」
「本日の仕事は終わったのでしょうか?」
「まだ終わっておらんが、木箱の中身を確認せねばならんだろう」
「それなら私と使用人で確認して目録を作成してお渡ししますので、旦那様は仕事に専念して頂いて結構でございます。」
「そっそうか、しかし輸送中に酒が悪くなっていないかの確認をだな」
「残念でございます。シン殿には、旦那様は酒に狂い仕事が出来なくなる、恐ろしい病に侵されているとお伝えする事になるとは、もう二度とお酒を飲めなくなりますが致し方ありません」
「あぁー!分かった、仕事をすれば良いのだろう!」
「はい、旦那様なら本日中に仕事を片付けるなど容易いと、不肖セバス心より信じております。」
「それは、夕食までに終わるという意味か?それとも日付けが変わるまで、という意味か?」
「本日の私の業務は夕食まででございます。遅番担当に引き継ぎますので問題ありません。」
「それは夕食後も仕事を、、、あっ!逃げるなセバス!ワシは書類仕事は苦手でひとりでは終わらんのだ(汗)」
「私にも生活がありますので、これで失礼致します。」
『タタタタタタタタ!』
「あっ?!、、、待て、いや、待ってくれセバース!」
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