第141話 異世界の年末 その4
「いただきます」
「「「「「「いただきます♪」」」」」」
今日は大晦日、我が家ではお藤さんが年越しうどんと天ぷらを作ってくれた
俺は海老天とちくわの磯辺揚げをリクエストして、うどんにはおあげさんも乗っている、きつねうどんに海老天もあるとか誕生日でも食べられへんで(笑)
天ぷらはそれぞれ好きなのをリクエストしたから、天ぷらが大皿3枚に山盛りになっている
他のみんなが何をリクエストしたのか気になったんだけど、まさか大皿に山盛りで出てくるとは!
まあみんな全種類食べられないと落ち込んじゃうからな(笑)
大皿には、海老、ちくわ、ナス、舞茸、かき揚げ、さつまいも、メルルーサ、牛肉
定番の天ぷらばかりだけど、異色のメルルーサは鱚(きす)の代わりに使っていて、肉厚の白身魚でなかなか旨い♪
しかし、牛肉の天ぷらをリクエストしたのは誰だ?ってケイトしか居ないか
美味しいんだけど、やっぱり牛肉は天ぷらってイメージじゃないんだよなぁ
元世界で生活してた時は、大晦日に両親以外の誰かと過ごすなんて無かったからな、テレビとラジオが恋しい時もあるけど
そんなの吹き飛ばすくらい、みんなと過ごす毎日は賑やかで楽しいな♪
父さん、母さん、もう墓参りに行けないのが少し心残りだけど俺は元気に楽しく異世界生活を送ってるよ
「ご主人さま~?」
「おっ?!おう、メルルーサが美味しすぎてぼーっとしとったわ(笑)スミレはメルルーサ好きか?」
「うん!ご主人さまも好きー♪」
「俺もスミレが好きやでー♪」
いかんいかん、大晦日って事でちょいとセンチな気分になってしまった、センチな気分のおっさんなんて誰得やねん!
俺はもう新しい人生を歩んでるんだ、元世界の事は心のアルバムに仕舞って本棚の奥に大事に保管しておこう
もう二度と開ける事は無いかもしれんが、新しいアルバムが増えたら古いのは見なくなるもんだし、それで良いと思う
今はみんなとの楽しい思い出を増やす方が大切だしな♪
そんなこんなで楽しい夕食を終えて、みんなが寝静まった頃
俺はお藤さんに呼ばれてリビングに来た、テーブルには酒と餅米を使った料理、カオマンガイがある
これがエスニック料理、カオマンガイか!
餅米の上に野菜と鳥肉が豪快に乗っていて、何やら良い匂いのソースがかかっているのだが
「お藤さん、カオマンガイを食べる為だけにこんな時間に呼び出した訳では無いですよね?」
「そうね、シンさんには話があって呼んだの、でもその前に、日本の事はあの子達には話してないの?」
「話してませんね、日本の事なんて前世の記憶ってだけですから、わざわざ話す事でも無いでしょう」
「その辺りは私が口を出す事では無いからシンさんの判断に任せるわ。とりあえず冷めないうちに食べながら話しましょうか、エスニック料理がこっちの人達の口に合うか不安だったから確認してもらいたくて」
「スンスン、確かに独特な匂いですね、とにかく食べてみますか、いただきます、、、もぐもぐ、もぐもぐ、もぐもぐ、旨っ!!お藤さん、これめっちゃ美味しいです♪このソースがなんか分からんけど美味しいです!」
「うふふ、喜んで貰えて嬉しいわ♪」
「この味なら問題な、、、い訳無いやん!独特な調味料すぎて騒ぎになるかも
お藤さん、この調味料の作り方って」
「残念ながらさっぱり分からないわね、私も料理を作った後に気付いたのよ、この家の厨房には各種調味料が揃っていたし
前世の記憶もあるから当たり前のように作ってたけど、コショウですら高価なこの国では、未知の調味料を使ったエスニック料理は宝石を食べる方が安いと思われても仕方ないわ、アストレア様に食べて貰うのは慎重に考えた方がいいかも」
「ですよねー、でも他の餅米料理かぁ」
「ふふふ、ちゃんと問題にならないように塩ダレも作っておいたから大丈夫よ♪」
「おおっ!流石お藤さん♪そうなるとエスニック料理は我が家限定ですかね」
「当分はそれが良いわね、そこで本題なのだけど、この家には各種調味料が揃っていて私は凄く嬉しいんだけど疑問もあるのよ
いくらシンさんが貴族との繋がりがあるとはいえ、味付けは塩のみで焼くか煮るかの料理が基本のこの国で、どうやって仕入れているのか」
「あぁ~、やっぱり普通は気になりますよね」
「そりゃあねぇ(笑)でも触れられたくない事なら今のやり取りは忘れるけど」
「まあお藤さんなら教えてもいいか、お藤さんはユニークスキルは知ってますか?」
「ええ、人によって色んなのがあるのよね?私は収納のスキルくらいしか知らないけど」
「俺もユニークスキルを持ってるんですけど、元世界の一般的な店に売ってる物なら魔力を対価にして手に入れれるんです。
詳しい理屈とかはさっぱり分からないんですけどね」
「便利なスキルがあるのねぇ」
「あんまり驚かないんですね」
「驚いたわよ、前世の記憶が甦ってから数十年たっぷりとね(笑)
だから驚きはもう充分なの、今は驚きより、シンさんが居ればこれからもっと楽しい毎日が過ごせそうって事の方が大事よ!」
「それなら良かったです」
「それで、そのスキルはお店に売ってる物なら何でもいいのかしら?」
「必ずしもそういう訳では無いですけど、欲しい物があるんですか?」
「私、ミシンが欲しいの!商会で服飾部門を立ち上げるんだし、洋服を作るにしてもミシンが有るのと無いのとでは全然違うのよ、どうかしら?」
「えぇーと、ちょっと待って下さいね」
俺はスキルの「店」でミシンを検索する、この「店」の品揃えって未だによく分からないんだよな
バイクは売って無いけどパーツは売ってたり、商品のチョイスは創造神様が気まぐれで決めてそうだけど
そんな事よりミシンだよ、、、あった!でもこれはどうなの?
「お藤さん、一応ミシンは有ったんですけど、足踏み式ミシンなんですよね」
「ちょうど良かった、私足踏み式ミシンしか使った事無いのよ、それにここじゃあ電気が無いでしょ」
電気式のミシンを使った事が無いとは、やっぱりお藤さんは相当上の世代の人だったか
取り敢えずミシンを購入、値段は4000mp、約40万円か、安いんだか高いんだかさっぱり分からんな(笑)
とにかく購入、ポチっとな『ドス!』
購入した物はある程度狙った場所に出せるようになったけど、床上にドンピシャで出すのはまだ難しいな、5㎜ほど浮いてしまった
「きゃっ!、、、本当にミシンが」
「これで大丈夫ですか?メンテ用のオイルとか細々した物も付いてますね」
「ええ、これがあれば今まで作るのを断念してた物も作れるわ!シンさんありがとう♪」
「どういたしまして。おっと!そろそろ日付が変わった頃ですかね
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
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『タララリンララリンララタリラリラ~ン♪』
シンはあしぶみしきミシンをてにいれた。
かしこさが3あがった
すばやさが1あがった
ちからが1さがった
うんが2あがった
しょうにんレベルが4あがった
ような気がした。
つづく。
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