第74話 魔法と科学?
『カキィィーーーーーーーーン!!』
「・・・あぁ~、飛んで行ったな」
「はい、壊れずに綺麗に飛んで行きました」
俺は今、ニィナと2人で街の直ぐ側にある森に来ている
そして今飛んでいったのは木のコップだ
俺が以前ニィナにあげた伸縮型の特殊警棒でぶっ叩いて貰った結果、木のコップは壊れずに飛んで行った
何故こんな事をしているかというと、創造神様からお供えの対価として回復魔法を貰ったからだ
どうして突然回復魔法をくれたのかは謎だけど、あって困らないからありがたく頂戴したまでは良かった
しかし試しに使おうとしても都合よく怪我人や病人なんているわけもなく
回復魔法を持て余していた所、ふと思い付いた
回復魔法ならゲームの定番、自動回復(リジ○ネ)的なのが出来るんじゃなかろうか?
早速自分に自動回復を使ってみたけど、効果が分からん!
わざとダメージを受けるとか嫌す過ぎるので、なんとなく持ってたコップに自動回復をかけて、ニィナに警棒でぶっ叩いて貰ったという訳だ
結果
コップは壊れずに綺麗な放物線を描いて飛んで行った
おそらく自動回復が発動して、目にも止まらぬ速度でダメージを回復したが
衝撃はそのままだから壊れずに飛んで行ったのだろうと推測する
物にも回復魔法が有効とは、摩訶不思議なアドベンチャーが始まりそうだ(笑)
これを人で検証する勇気は無いが、まあ保険としては充分かな
そしてこの結果から俺は思い付いた、アレに使えるのではと
『パシュッ、、、ガチャン、、パシュッ、、、ガチャン、、パシュッ』
飛距離は約500mが限界か、、、
俺は今、ゲパードM1対物ライフルの試射をしている
当たり前だがスキルの「店」に本物の銃は売ってない、だから俺が今持ってるのはモデルガンになる
このモデルガンは超リアルに作られてはいるけど観賞用の物だから、BB弾は飛ばせない
では何故試射が出来るのか?
それは魔法と科学が融合した結果だと俺は思っている
遡ること約1ヶ月前
その時やる事が無く暇だった俺は何気なくスキルの「店」を見てたんだ、そしたら小学生向けの科学の実験キットが沢山あったので懐かしさもあり片っ端から購入した
レモンに銅板を刺して豆電球を点灯させたり、電池にスチールウールをくっ付けて火をつけたり
水を電気分解して酸素と水素を作ったり
ひとしきり遊んで実験キットをスキルの収納に入れた時にそれはあった
『酸素×1』『水素×1』と
いつもは気体のみを収納する事は出来ない
例えば、膨らませたゴム風船を収納した場合、ゴム風船の中にある気体も一緒に収納される
だけど、ゴム風船の中の気体だけを取り出す事は出来ない
同様に中の気体はそのままでゴム風船だけを取り出す事も無理だった
では何故、酸素と水素は収納出来たのか?
それは魔法で作り出した気体だからだろうと推測する
水を電気分解する実験キットを使った時、俺は魔法で水を出し指先から出る雷を使って電気分解した
指先からパチパチしてるだけの物を雷と呼べるのかは知らないが
それらを使い電気分解は成功した、その時実験キットの周辺に残っていた酸素と水素も一緒に収納したものと思われる
たしか電気分解したら酸素と水素の混合した気体が出来ると思うんだが、何故別なのかそこは謎だ
『水素×1』というのがどれぐらいの量なのかもさっぱり分からんけど、魔法で作り出した酸素と水素は収納出来る事が分かった
俺は以前から考えていた、命の値段が安いこの世界で生きて行くには戦う為の武器がいると
一応俺も警棒を持ってるし、一般向けの防犯グッズで催涙スプレー付きの透明な盾なんかも購入した
盾で防ぎつつ、盾の隙間から催涙スプレーを噴射出来るのだけど
ニィナやケイトが護衛でいるのに俺が盾で戦うような事態になったらそれはもう終わりだろう
とはいえこの世界で生活していたら魔物に遭遇する事も、盗賊に襲われる事もあるかもしれない
魔物に関しては危険な奴、例えばゴブリンやオークなんかはダンジョンか森の奥地にいてそこから出てくる事は稀らしい
比較的危険の少ない牛っぽい魔物や豚っぽい魔物なんかは街の近くにもいるが、依頼を受けた冒険者が狩って肉屋に並んでいたりする
最低限戦えるチカラが必要なので、遠距離攻撃出来る物は何かないかと探して真っ先に考えたのが銃
しかし、火薬も無いからどうにもならなかったけれど、回復魔法を使う事で解決した
まずモデルガンを購入し自動回復をかける、次に空薬莢の先に魔法で弾の形にした氷を付ける、この氷の弾にも自動回復を忘れない
そして収納にある、あらかじめ酸素を混ぜた水素を薬莢の中に出す!出す!出す!出す!
10個水素を入れた所で入らなくなった
これを銃に装填し、薬莢の中に雷魔法を発動
『パシュッ』
水素の爆発により氷の弾は無事発射され500mほど先で消滅した、魔法の有効範囲外かそれとも魔力切れか
しかも凄く小さな発射音しかせず
更にライフリングも何も無いのに風の影響もほぼ受けず真っ直ぐ飛んで行った、これが魔法の成せるチカラか?!
威力は約30m先にある50㎝程の太さの木を貫通して、ヤスリをかけたように綺麗な穴が開いていた
これだけ綺麗に貫通すると急所に当たらなければたいしたダメージは無いかもしれんが
目的は遠くにいる相手に対しての牽制とか時間稼ぎなので、まあ良いだろう
自動回復が無ければ水素の爆発によってとんでもない事になってたと思うけど、瞬時に回復魔法が発動するお陰で銃も俺も無傷だ
万が一、この銃が盗まれても他人には使えないはず
魔法が得意な奴がいても水を電気分解する知識がなければ駄目だし、そもそも自動回復がなければどうにもならんからな
しかし冷静に考えたら、俺はとんでもないものを作ってしまったのではないだろうか?
どうしよう(汗)
豚に真珠
猫に小判
ゴブリンに焼きたてのパン
そんな言葉が似合う男、長倉真八
これは彼が、自身の持てるチカラをそんなに使わず生きていく、わりと無駄の多い物語である。
第5章 完
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