第19話 商人として

俺が干し芋とドライフルーツ等の保存食を売ったせいで経営危機に陥った教会兼孤児院を再建する為に(俺のせいなのは内緒)


院長さんに会っているのだが、寄付金を渡すと感極まって泣いてしまった為、落ち着くまで待っているところだ



「うっ、ズズっ、申し訳ありません恥ずかしい所を見せてしまい」


「子供達を思っての事なのですから、恥じる事など何ひとつありませんよ、お湯とタオルを用意したので顔を洗って下さい」


「これは、、、過度な遠慮は時に失礼にあたりますね、遠慮無く使わせていただきます」



顔を洗いさっぱりした院長さんは、まだ目と鼻が赤いがなかなか可愛い顔をしている



「ふぅー、ありがとうございました、おかげでさっぱりしました、それで寄付の他にお話しがあるとか?」


「私は商人なのですが、今は露天で商売をしております。それでこちらの孤児院でパンを焼いて売っているというのを聞きまして、私の指定するパンを作って頂きたいのです。」


「確かに孤児院ではパンを焼いていますが、最近では冒険者ギルドでもパンは売れないからと買い取って頂けないのですが宜しいのでしょうか?」



ぐはぁっ!


パンが売れないのは俺のせいですね、罪悪感がはんぱないわ



「その事に関しては問題ありません、最近商業ギルドで柔らかいパンのレシピが売り出されたのは知っていますか?


その柔らかいパンを作って頂きたいのです。レシピも用意してあります、契約書を作って正式な取引としたいのですがいかがでしょうか?」


「こちらとしてはとてもありがたい話なのですけれど、これではそちらが損をしてしまうのではありませんか?」


「心配して頂きありがとうございます。ですが商人というのは損をするのは命を失う事と同義と考えます、このお話も絶対とは言えませんがかなりの儲けを見込んでおります。」


「そこまで仰られるのであればこちらに否やはありません」


「それでは買い取り価格を決めましょうか、パン1個銅貨2枚でいかがでしょうか?」


「えっ?、、、パン1個で銅貨2枚とおっしゃいましたか?」


「ええ、パン1個で銅貨2枚です。もしかして安かったでしょうか?」


「安いなどとんでもありません!銅貨2枚で構いません!」




こうして俺は無事に孤児院でパンを作って貰う契約をした。


帰り際に買い物に行くというシスターさんと雑談をして知ったのだが、冒険者ギルドは孤児院のパン2個を銅貨1枚 で買い取っていたらしい



それを大きさ別に銅貨5枚~銀貨1枚で売ってたんだから、シスターさんが怒るのも当然だろう


とは言え冒険者ギルド以外でカッチカチのパンなんて売れないし、ギルドの権力を恐れて孤児院で直接安く買うなんて事も出来なかったらしい



まあこれで今後も冒険者ギルドには関わらない事が確定したな







「メリルただいま~」


「おかえりおにいちゃん、孤児院はどうっだった?」


「無事に契約してきたよ、2~3日練習が必要らしいからパンを卸して貰うのはそれからだね。仕込みは終わったの?」


「バッチリだよ♪」


「それじゃあ今日も張り切って売りまくりますか」


「おーー!!」




ーーーーーーーーーーーーーーー




今日もウィンナーサンドは大人気で、あっという間に200個が完売した。


孤児院にはパンを1日で300個は欲しいとお願いしている、孤児院にどれだけの生産能力があるのかは知らないけど


作れば作るだけ売れると知れば頑張ってくれるだろう。


それにウィンナーサンドを売るのは午後4時くらいからだから、凄く早起きをする必要もないのが良い





家に帰り夕食の準備をする


今日はコンソメで味付けしたベーコンと野菜のスープ、ポテトサラダ、卵サンドにしてみた


それとデザートはどうするか、異世界小説だとパウンドケーキがわりと出てくるんだよなぁ、材料がシンプルだからかな?



『コンコンコン』



おや?


ドアをノックする音が聞こえたけど、住み始めたばかりの我が家を訪ねて来る人に心当たりはないんだが




「はーいどちら様ですかー?」


「あたしだよ、宿屋のヘレンだよ」



ヘレン?


確かに宿屋の女将さんの声だけど、女将さん『ヘレン』って名前だったのか!


なんかもう女将さん感が強すぎて名前知らなくてもなんの疑問も無かったわ(笑)



「今開けますよー、、、『ガチャ』いらっしゃい女将さん、こんな時間にどうしたんですか、ん?隣にいる男性は?」


「食事中だったかい?」


「ちょうど準備しているところなんで、よければ一緒にどうですか?食べながら話を聞きますよ」


「そうしてくれると嬉しいね♪あんたの料理は美味しいから、それでこっちの男は肉屋のロンだよ」


「ロンです、よろしくっす!」


「ああ、よろしくな。さあ遠慮せずどうぞ、適当に座って待ってて下さいすぐ用意出来るんで」


「ふふっ、楽しみだねぇ♪お嬢ちゃんも元気そうで良かったよ、あんたの旦那はしっかり稼いでるかい?」


「うん、でもこれからもっと沢山稼ぐの♪」


「あははははは(笑)ウィンナーサンドの事は噂になってるよ、あの子の料理の腕なら余計な心配だったかねぇ。でもどこか頼りない所があるから、お嬢ちゃんがしっかり支えてやんな!」


「うん!頑張る!!」


「ちょっと女将さん、メリルに何言ってんですか!」


「可愛い子を路頭に迷わせない為のアドバイスだよ、それにしても今日の料理も見たことないのばっかりだね、それに見た目も綺麗だ♪」




「まあ良いです、冷めない内に食べましょうか、いただきます。」


「「「いただきます」」」




「「「美味しいーーーー♪」」」



三人とも口に合ったようで夢中で食べている♪


食べながら話を聞くのは、、、


無理だな(笑)




俺は用意していたパウンドケーキが足りるか心配になりつつも、みんなとの食事を楽しむ事にした。






つづく。


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