欲の果て
もちづき 裕
第1話 新卒看護師はとにかく大変
このお話は私が病院で働いている際に起こった内容を混ぜ込んでいるお話となります。オカルトホラーですが、自分が経験した&同業者から聞いた話を盛り込んだものとなります。お楽しみ頂ければ幸いです!
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私、宮脇咲良、21歳です。
看護学校を卒業して、家から車で二十分の距離にある国立病院に就職しました。
30以上も診療科があって、えーっと、急に何処かの科を希望しなさいって言われても、何処がいいのかなんて分からないんですよ。
とりあえず内科・・は、後々潰しが効かないかなぁと思って(体温、血圧、脈を測って、薬を渡すだけ〜みたいに考えていたから)外科って書いてしまったわけです。
外科だったら手術後の処置とか色々と出来て、後々潰しが効くかなぁと思ったから。
それで結局は何処に配属されたのかというと、7階東病棟、ちなみに7階西病棟は外科病棟だから、私は希望の外科病棟には配属されなかったわけです。
じゃあ何病棟に配属されたのかっていうと、
「宮脇さん、脳外科病棟で早く戦力になれるようにがんばってね」
そう、私は『脳外科』病棟の看護師として配属される事になったのです。
ちなみに私たちを迎えてくれたのが山岡師長さん、色白で少し小太りの恰幅の良い人なんだけど、この人、去年まではオペ室に勤務していて、あんまりにも働かないし、看護師をゴミのように扱うから、オペ室看護師十二人が一斉に辞める事態を引き起こした人です。
私なんかは十二人も看護師が辞めるのなら、辞める原因になった師長さんを辞めさせる、または移動させればいいんじゃないって思うんですけど、病院側は十二人分の退職届を受理。一斉に抜けた十二人の穴は、ICUと外科、脳外科から看護師を移動させて埋める事に成功。各科で抜けた穴は四月から働く予定の新人看護師を入れて事なきを得たのです。そうして、その問題の師長さんは、十二人の看護師が辞めた半年後に脳外科へ移動しました。
つまり、働かない上に看護師をゴミのように扱う師長さんが、私たちと同じ四月より脳外科病棟で働くことになったわけです。
それから半年はあっという間に過ぎました。
先輩看護師さん達に虐められている間に、あっという間に月日が流れて行ったんじゃないかなぁって思います。うん、あれは虐めだよな。だって私が休憩室に行くと、みんな、揃って職員食堂がレストランに移動して行っちゃうんだもんね。
まあ、私はお弁当派だし、どこかに食べに行くわけでもないし、一人で自由気ままな方がいいから、全然いいんだけど。
でもこれ、地元の友達に言ったら、
「それって、まじで虐めじゃ〜ん」
って言っていたから虐めなんだと思う。まあ、いいけど。
それで今、消灯時間が過ぎた夜の十一時、準夜勤務の私は十六時から深夜十二時まで働く予定なんだけど、おじさんが一人居なくなったか病院内を探索中です。
ちなみに私が働いている病棟は7階東病棟、病院自体は四角い箱型の建物で、一階、二階に外来患者さんが受診を受ける診療室が並んでいて、3階は病院長とか総婦長さんとか、事務長さんとか?とにかくお偉いさんの部屋が並んでいて、その他には、総務とか経理とか・・・ちょっと良くわからないけどあって、4階から7階が入院病棟、8階は職員食堂と、一般の人が利用できるレストランとかがあります。
居なくなったおじさんは、交通事故で頭を打って脳外科に入院中なんだけど、頭を打った場所が悪かったみたいで、ちょっと・・いやかなり、普通じゃない。
つまりはこんな感じ。
エレベーターに乗り込み、一階から順にエレベーターの扉を開けながら確認していったんだけど、3階の扉が開いたところで目に入る床に落ちた『うんこ』
なんで床にこれほど立派な『うんこ』が落っこちているのかがわからない。
犬が排泄したものではない絶対に、明らかにこれは『人糞』だ。
エレベーター前でズボンを脱いでふん張ったのか、トイレでもよおした物をわざわざここまで運んで来たのか。
3階もまた消灯されているため、廊下は夜の闇の中に沈んではいるんだけど、窓から差し込む街灯の明かりの所為で、一寸先も見えないほど真っ暗というわけでは決してない。
「ここに犯人がいるに違いない」
なんて探偵みたいなセリフを吐き出しながら、立派な『うんこ』を跨いで3階フロアに降り立った。右を向いてから左を向き、おじさんが何処に行ったのかと考える。
ここはお偉いさんが居るフロアなので、左に曲がって少し奥に行けば、素敵な観葉植物が置かれたサンルームのように場所が存在する。ソファも置かれているし、自動販売機も置かれている。
なかなか過ごしやすい場所だから休憩時間に利用してもいいじゃないか、と、思うかもしれないけれど、職員の利用は暗黙の了解という感じでNG、お偉いさんのみが使える素敵スポットなのだ。
そんな素敵な場所も、消灯時間なので暗い、街灯の光が差し込んでいたとしても薄暗い。
「あああ・・・いた・・・いたよ・・・いた・・・」
おじさんはそこにいた。
高級志向のソファの上で、長々と寝そべりながら心地よい寝息を立てている。
「ちょっと!ちょっと!こんな所にいたら風邪ひきますよ!病棟に戻りましょう!」
「ゔ―〜ん?」
おじさんは目を開けた、文句も言わずに起き上がった。
おじさんは決して悪い人ではない、どちらかと言うと気性は穏やかで、こちらの言うことは聞いてくれる。
「さあ、立ちましょう」
立ったおじさんのお尻を確認すると、パジャマのズボンもパンツも汚れていない。
とりあえず、漏らして落としたというわけではないらしい。
『うんこ』を跨いで、エレベーターに乗り込んで、7階東病棟に移動をして、おじさんをベッドに寝かせて、
「すみません、3階の『うんこ』を処理するので、少し病棟を離れます」
と、同じく準夜勤務で働く先輩看護師に声をかけて、エレベーター前に放置状態のうんこを片付けに行く。
うんこ、おしっこ、オムツ交換、食事介助に痰の吸引、床ずれが出来ないように2時間ごとの体位変換、輸液の管理に、口から摂取できない患者さんへの胃チューブからの高カロリー栄養液の注入。モニター観察に、レスピレーター(人工呼吸器)管理、ドレーン管理に患者さんの精神的ケア。錯乱して暴れる患者さんがベッドから落ちないように押さえつけて、逃亡した患者さんを追いかける。
「私、なんで内科を希望しなかったんだろう・・・」
地元の友達が言うように、これが後の祭りってやつなんでしょうね。
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幽霊込みの話はこれから続きますので、ここで止めずに先に進んでください〜。
このウ◯コエピソードは実話です。
これは脳外科病棟、本当に大変なんだぞというジャブを入れたプロローグ。
これからどんどん、幽霊が出てきます。
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