DEPTH003 『ブルーシャーク』結成

「――あっ、艦長」


 副艦長が気づくと同時に、那珂野なかの小隊全員が敬礼をした。


「おう。 それで? 誰が殺した?」

「それが、その・・・。不明で」


「そうか・・・。口を割らないつもりか、よぉく分かった。 あと3秒後に名乗り出ないと、真っ暗な深海に四肢ししを縄でくくっておもりを付けて置いて行くぞ」


 沖野おきのの脅しに委縮いしゅくしたのか、その場にいた31人全員が手を挙げた。


「はぁ・・・、なんで殺したりした?」


 その後、尋問じんもんという事で一人の女性士官を別室に移動させた。


「――あたしは、ラフォード・フォトリー。よわいは13歳さ」


「さてと、ラフォードさん。 何故なぜ、クーメリア・ズファイラ艦長を殺害した?」


「それは・・・、皆の親友であるアレンを侮辱ぶじょくして部屋から無理やり追い出したから」

「たったそれだけの理由で?」


「ええ、そうよ。 それにアイツ、なんて言ったと思う?」


「聞かせてくれるか?」


「アレンの事を『無能で役立たずの雌犬』と言ったのよ? どう思う?」


 ええ・・・、酷い言い方だな。さすが、乗員たちからクズ判定されていた艦長様だ。


「な、なるほど・・・。そいつは酷いな・・・」


「ね? だから、殺したの。そして、アレンを見つけようと扉の前に移動したら――」

「那珂野小隊と出くわしたのか・・・」


 ため息を吐くと同時に、ラフォードが「――ところで、尋問官さん?」と話し始めた。


「ん?」


「名前、教えて欲しいのだけれども? いいかしら?」


「あんた、本当に13歳か?」

「そうだよ?」


「――はぁ・・・。 俺は沖野海斗、この潜水艦――ブラックシャークの艦長だ」


 その後、ラフォードを部屋に帰して行く宛のなくなった彼女たち総勢32人に対して取引という勧誘をしてみた。


「――なぁ、アレン・マードルド」

「は、ハイ?」


「行く宛が無いンだろ?」

「あ、まぁ。そうですね」


「なら、このふねで通信長として働かないか?」


「それは・・・、故郷を裏切れということですか?」

「捉え方によれば、そうなるな」


「少し、相談してもいいですか?」


「ああ、構わないよ。 別に今日中という強制では無いのだから」


 そして彼女たち32人の答えが出たのは、3日後の夕方だった。


「私たちは、沖野艦長の指示に従いここに絶対の忠誠を誓います。 なので、このふねで働かせてください」


「祖国を裏切る事になるが・・・」


 彼女達の眼に決意の炎が燃えているのが見えたので、それ以上は口を閉じ「分かった。 改めて、アレン・マードルド! 君には通信長を任せる、それと同時に32名には特殊作戦部隊を任命する!」と告げた。


「「イエス・サー・イエス!」」


 特殊作戦部隊と言ってもアルファチームやブラボーチーム、チャーリーチームという感じに分けてそれぞれのチームの得意小銃を持たせ作戦に行かせるという感じだ。


 アルファチーム隊長にはもちろんアレン・マードルドを任命し、ブラボーチーム隊長にはラフォード・フォトリーを任命した。残るチャーリーチーム隊長には32名の中で最年長のニミッシュ・ランドール【16歳】を任命した。


 次の日、特殊作戦部隊の名前がブラックシャークにあやかって『ブルーシャーク』になった。

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