シールダー陣営脱落RP

【GM】

■城塞での戦闘から少しして


【ユリウス(シールダー陣営)】

「…ヒルドル」


【ユリウス(シールダー陣営)】

誰もいない城塞の片隅で、ユリウスは己のサーヴァントを呼んだ。

しばらくすると彼の前に光が集まり、朧げに少女の姿を取る。


【シールダー】

「負けちゃったねぇ。あのランサー、なかなかの使い手だったよ。是非とも魂を持って帰りたかった」


【ユリウス(シールダー陣営)】

消滅したはずのサーヴァント、ヒルドルはそう言って笑った。

それもそのはずだ。ヒルドルは他のサーヴァントとは根本的に異なる。この聖杯を成り立たせるために必要な触媒であり、その霊魂は聖杯と接続されている。


【ユリウス(シールダー陣営)】

故に、サーヴァントとしての仮の肉体を破壊されようと聖杯があれば何度でも呼び直すことができた。


【ユリウス(シールダー陣営)】

…尤も、消耗した霊基を補ったわけではないため、兵器(サーヴァント)としての運用は不可能だが。


【ユリウス(シールダー陣営)】

「負けたことは構わない。もともと戦闘用としての運用を考えていなかったからな」


【ユリウス(シールダー陣営)】

重要なのはヒルドルがこの場にいることだ。このサーヴァントさえいればこの戦争はヒャズニングの再現とされ、聖杯"ユグドラシルの杯"の完成は問題なく進む。


【ユリウス(シールダー陣営)】

あの聖杯は北欧神話の神秘を呼び起こすためのもの。誰が完成させるかは重要ではない。完成さえすれば自動的にユグドラシルの杯として機能するのだから。


【ユリウス(シールダー陣営)】

あとは聖杯の降臨まで自分とヒルドルが生き残りさえすれば良い。


【ユリウス(シールダー陣営)】

「今後は守りを固める。いざという時はお前に守ってもらう必要があるかもしれんが、基本的には自衛に専念しろ」


【ユリウス(シールダー陣営)】

そう言うとシールダーに背を向けて部屋から出ようとする。

その時だった。


【ユリウス(シールダー陣営)】

部屋に真っ赤な血が飛び散った。


【ユリウス(シールダー陣営)】

「は…?」


【ユリウス(シールダー陣営)】

すぐには理解ができなかった。


【ユリウス(シールダー陣営)】

いや、それが何かは知っている。

だが、自分の胸を突き破って出現した光の槍が意味することを理解できなかった。


【シールダー】

「あっ、ごめんねマスター。結構我慢してたんだけど…、体を再構築した時に封印が緩んじゃったみたい」


【ユリウス(シールダー陣営)】

体に力が入らない。何かを喋ろうにも肺に穴が空いておりごぼごぼと血の泡が出るだけだった。ユリウスはなすすべなく床に崩れ落ちる。


【シールダー】

「今回のあたしは盾の乙女"ヒルドル"を強調されて召喚されてるから、戦乙女の権能が落ちた代わりに死神の側面が強くなっていたの」


【シールダー】

「仕方ないよね。グリムリーパーとしてのワルキューレは死に瀕した英雄の前に現れて胸に槍を突き刺して魂を回収するものだから。


【シールダー】

「…だから、あたしを召喚したマスターは『死に向かう勇者』じゃないといけなかったの」


【シールダー】

「安心してね。あなたの魂はしっかり私が回収した。何よりも見たかった神話の世界に連れて行ってあげるよ」


【シールダー】

ヒルドルはユリウスを片手で抱え上げる。その肉体にはすでに魂が入っていない。半世紀に及ぶ研鑽の末に北欧の地で完成させた大魔術はついに日の目を見ることなく失われたのだった。


【シールダー】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る