2022年度共通テストは受験生の努力を蹂躙しながら無自覚に無双する~あれ、また俺難化しちゃいました?~(史上最強の共通テストを受けてきたとある受験生の話)
ダイニング
本編
社会科目の試験は強風のため30分遅れで始まった。思考力や判断力・表現力を問うという事前のお触書のとおりの問題が出された。
姓と苗字の違いなぞ私の知ったことじゃない。もちろん、知識を問うような問題もあったがセンター試験のころよりは大幅に削られている。
かわりに見たことのない史料を読解させる問題が増えており、半分ぐらい古文のテストになっていた。
知識がなくともいい線行けそうなテストである。直前にほかの教科の勉強を優先していた私は命拾いした。
この様子だと、直前に身に着けておいた知識が役に立つということは、ほぼないだろう。
昼食休憩のあいだじゅう、私はトイレに行ってみたりおにぎりをかじってみたり周りを眺めたり、と落ち着かなかった。机に突っ伏してみもしたが、当然眠れるはずがない。
次は国語の試験がやはり30分遅れで開始された。大問1、その1問目を見て私は面食らった。(4)(5)の形式が過去問と違っていたのだ。
漢字検定のときに見たような、漢字の意味を問うてくる問題だった。ただまあ、そんなに難しいわけじゃない。マークシートを塗りつぶして、次の問いに進む。
二つの文章を比較してうんぬんというのは、共通テストらしいが予想問題集でもさんざんやっていたので特に驚くほどでもなかった。私は口の中で噛みつぶされたあと、胃で分解され腸を通り、栄養分やら水分を吸い取られて再び体外に排出され、大問2へ進む。
大問2でも私は面食らった。今度は語句の意味を問うてくる問題が廃されていたのだ。過去問でもここでは傍線部の言葉の意味を答えよ、という問題があったのが登場人物の心情を問う問題に置き換えられていた。
私は、どちらかというと物語文のほうが苦手だった。
大問3、大問4は古文漢文だった。高校の先生は「古文・漢文は満点を取らなきゃダメ」と言っていたが、無理そうだ。会場の雰囲気もあったのだろうが、思っていたよりも時間が余らなかった。結局、勘で塗りつぶしたところが残ったままで、私は「解答やめ」の声を聞いた。
続いては、英語。リーディングからのリスニングという順番だった。以前、どこかで「R・Lと言われると、たいていの人はleft・rightを思い浮かべる」という言説を聞いたことがある。
私の場合は、もちろん違う。R・Lといえばもちろんreading・listeningだ。たいていの受験生はそうだと思う。
リーディングは、ただの注意力検査だ。単語もさして難しいものは出てこない。出てきても、ちゃんと注がついている。ミスリードされないように気をつければよい。ただし、分量は間違いなく多い。
リスニングも、前年の方式を踏襲ふしゅうじゃないよしていた。どこぞの国語とはえらい違いである。こちらも、真面目に勉強していればちゃんと結果がついてくるタイプの問題だ。どこぞの日本史とはえらい違いである。
これは共通テストが終わってから思ったことだが、英語はかなり良心的だった。難易度は平年並みからちょっと易しめといったところだ。あとは物理もやさしかった。二つの意味で。
ほかは……お察しください。
また、ご丁寧なことに、解答終了の10分前にも「残り10分です」と言ってくれるのだが、その声が野太いせいで、時間が来るたびに私は体をびくっとさせていた。
2日目である。私は数学ⅰ・Aの試験を受けるため、すでに着席している。昨日は一昨日とほぼ同じことをしていたが、東京で悲しい事件があったとニュースで少し見た。前代未聞だ。未曾有みぞうゆうじゃないよだ。
まあ、こんな事件があったんだから、これ以上の大事は起こらないだろうと私は思っていた。現実において一度あることは、まず二度ない。だが、これ以上のことが起きた。
今日は、昨日と違って電車が来ないということはなく、定刻通りに数学ⅰ・Aの試験が開始された。
問題構成は例年通りだ。大問1・2が必答で、大問3~5の中から2題を選び解答するという形式だ。
第一問は対称式の問題だった。(1)はそんなに難しくはないので、急いでマークして(2)に手をつけた。だが分からない。(1)が誘導になっているのは分かるのだが、その使い方が分からない。
結局、しばらく考えて解けはしたのだが、これはかなり手痛い停滞だった。貴重な時間を大幅にロスしてしまった。
次に二つ目の中問に移動する。地図の問題だった。三角関数の表を用いて角のおおよその大きさを求めなくてはいけない。マークの選択肢が文章になっているのは、共通テストになってから採用された方式だったはずだ。
ここも、マークはしたものの自信はなかった。
三つ目の中問に移動する。次は円に内接する三角形の問題だった。sinの値や辺の長さは正弦定理とか使えばおk、ちょろいちょろい。もしかして今年のテスト、簡単か? というわけで次の小問へ進む。
もちろん簡単なわけがない。2AB+AC=14の関係があるってなんだよ、そういうのは二次試験でやるって学校で習わなかったの? もちろん飛ばした。なお、後でやり直してなんとかなった模様。
第二問。一つ目のは2次方程式の共通解を求める問題だった。全然できませんでした! 30点満点で10点ぐらいしか取れてなかったです! この中問を取れなかったのが致命的だった。
2つ目の中問はおなじみの統計だ。例年ならサービス問題だったが今年は違かった。グラフから相関係数を求めるのだが、これが後でしょーもない引っかけ問題だったことが分かった。
私はもちろん間違えた。模範解答がなぜ正しいのかすら分からなかった。(後で調べたところ、外れ値によるものだと判明)。
時間を使わせるが点数は渡さないという、今年の共通テストの出題コンセプトがもっとも如実に出た問題だった。
あとで言われて気づいたのだが、太郎と花子はマスクをしていた。入試センターはそんなこと気にする前に、難易度調整をちゃんとしろ!
第三問はプレゼント交換を題材とした完全順列の問題である。2人や3人の場合はできなくもないのだが、4人になってからはお手上げである。とりあえず樹形図を書いて計算して出てきた数字をマークした。
まず合ってはいないだろう。こんなんだったら、時間がかからない分、鉛筆を転がしたほうがいくらかましだ。
第四問は整数の問題だった。不定方程式は苦手じゃないけど得意じゃないよ。途中まで順調に進んだのだが、剰余の使い方が分からずいまいち誘導に乗れなかった。いったん前の大問へ戻り、できてないところを埋めて帰ってきた。
ナニヌネノ という5桁のマークを見たときは目が飛び出そうになった。ふーん、そういうことね、となんとなくわかったような気分で慌ててマークをしている途中で、終了の指示があった。
問題文の量も相まって、とにかく時間がない。70分でやるっていうレベルじゃねーぞ。
結局20点分ぐらいはマークできなかった。実質80点満点である。まあ、しゃーない。それに、このテストで失敗したところで人生が変わるわけでもないし(変わる)切り替えていこう。
自分ができなかったということは、他の大半の人たちもできなかったはずだ。←(書いてあることは8割がた愚痴だけど、この考え方は本当に大事。受験生は忘れないように)。
※一番書きたいところも終わったし、数学Ⅱ・Bは自転車と歩行者の話だけします。諸葛亮が死んだあとの三国志演義みたいな感じだと思っていただければ……。
※ちなみに第5問は図形の問題でした。前の人が「図形簡単じゃなかった?」とかほざいてたので少し殺意がわきました。ちらっと見たらこっちも普通に難しそうだった。
数学Ⅱ・Bの問題文を見て、とっさに大学の二次試験の物理が思い浮かんだ。左のページは問題文でまるっきり埋められている。
問題文を読んでいき、条件は理解したがそうする必要性が全く理解できなかった。そういうバイトでもあるのかな?
なんでこうなった。数学ⅰ・Aでは問題を日常生活に結び付けようと頑張ってたじゃないか。しかも、結構難しかった。一応、最後まで埋めたが全くもって自信はない。
あとから思ったことだが、Ⅱ・Bもかなりたちの悪い難化のしかただった。ⅰ・Aがやたらと騒がれたせいで、影は薄くなっていたものの、去年この問題が出ていたら、間違いなく荒れていたはずだ。
いや、2022年以外のどんな年でも、だ。
理科も破竹の勢い(杜預並感)で飛ばしていきます。
化学は計算問題が多かった印象がある。時間的な余裕はほとんどなかったが、直前の数学で無我の境地に至っていた私には効かなかった。
ただ、計算に次ぐ計算を強いられてちょっとイラっとした。効いてて草。
物理は去年よりも易しかったような気がする。かわりに去年簡単だった生物が大幅に難化したようだ。
クラスメイトに授業中はずっと寝ていて、高3の冬休み前に留年しかけた人がいたが彼も生物選択だった。
平均点を大幅に上回って担任の先生に褒められたその人は、しれっと国立大に進学していた。それを知ったときは変な笑いが出た(こういう人でも国立大受かるから心配する必要はありません。そんなことする暇があったら勉強してください)。
試験は終わり、その日のうちに私と父は帰宅した。このときの私の気持ちを漢字一文字で表すならば、「解放感」というのが正しいだろう。
やっちまったな、みたいな感情ははっきり言って全くなかった。やばいな、となるのは翌日高校で事故採点(誤字じゃないよ)が始まってからだった。
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