極秘ファイル『バラ園未解決事件簿』

クロノヒョウ

プロローグ


プロローグ



「ここがそのバラ園なのか?」


「そうですよヒョウさん」


 毎年バラの季節になると開放される大きな洋館のある広い庭園。


 なるほど、入場料を払ってまで見に来る価値はありそうだ。


「綺麗だな」


「ええ、本当に」


 私は助手、と言ってもこいつが勝手にそう言っているだけなのだが、クロノと二人でこの不可解なバラ園に足を運んでいた。


 広大な敷地内の庭は綺麗に手入れされており、様々なバラの花が見事に美しく咲いている。


 毎年訪れる多くの入場者が観賞しやすいようにと庭はまるで迷路のような造りになっていた。


「ファイルを見せてくれ」


「はい」


 クロノは鞄からバラ園での未解決事件をまとめた極秘ファイルを取り出した。


 事件の当事者や目撃者、担当者などから聞き出した情報を私がまとめた物だ。


「バラ園は全国各地、どこにでもあります。各地のバラ園の不可解な出来事をこのバラ園の管理人が調べているという噂があがっています。何か手がかりが見つかればいいですけどね」


 クロノの手からファイルを受け取りパラパラとめくっている時だった。


「こんにちは」


 声をかけられ振り向くと、若くて綺麗な顔立ちの好青年が立っていた。


「管理人のいばらです」


「君が?」


 想像よりも若くてハンサムな男に少し戸惑った。


「ご連絡差し上げたクロノです。こちらはとある小説投稿サイト『K』の研究をしておられるヒョウさんです」


「ヒョウです。よろしく」


「で、ご用件は?」


 私は手に持っていた極秘ファイルをこの蕀という管理人に渡した。


「私が集めた資料です。ぜひあなたの意見が聞きたい」


「なるほど。極秘のファイルを見せるからそっちも情報を教えろ。そういうことですね」


「さすがだ。話が早い。頼めるかい?」


「少しお時間を頂ければ」


「わかった。ではまた」


「それでは蕀さん、またご連絡いたします」


 用件を済ませ、混雑してきたバラ園を出た。


「うまくいきますかね、ヒョウさん」


「大丈夫だろう。彼ならやってくれるさ」


「だといいですが」


「さて、帰ってもう一度ファイルに目を通すとするか」


「はい!」




                 続く



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る