第72話 関わるのはやめよう。



なんだ、この万能感…何でも出来るし、最早怖い物なんて居ない…そう心が感じる。


レイラがあれでも遊び半分だったのが今なら良く解る。


貰った装備を身に着け、この辺りで決して人は入ってはいけないと言われる『ワイバーン砦』に来た。


本当に砦があるのではなく、岩場に無数のワイバーンが住み着いた魔境と言われる場所。


その怖さから人間は元より魔物すら居ない…そんな場所だ。


魔王であるレイラには遠く及ばない…とはいえ幹部級の魔族、サキュバスロードの力が宿った武器や防具や道具。


多分、この位じゃ無ければ、その力は試せない。


恐らく俺は…ガイアより、いや勇者パーティ全員より強い…そう思えてならない。


見渡すばかりの岩場にワイバーンが居る。


大きな個体だけじゃない、明らかに上位種まで居る。


昔の俺なら恐怖心から逃げた筈だが、今は違う。


まるでワイバーンが鳥にしか思えない。


俺はレイラから貰った剣を抜いた。


『ワイバーンを狩る』


そう決意すると、なんだか凄い快感が体に走った。



これは…凄い、今は悲しいけどまだ新品の体だが、前世の経験を考えても感じたことの無い…物凄い快感が走る…三人の美女が頭に浮かび…抱かれている、まるで、そうSEXしている以上の快感が押し寄せてくる。


『斬る』そう思った時には体が反応して、近くのワイバーンを真っ二つにしていた。


しかも…その死体は収納袋に収まっていく…


「あはははっ」


これがあの時にレイラが感じていた世界なのか?


体に快感が走り『最高に気持ち良い~』


『あはははっ、獲物を狩るだけでなんだ、この快感は…ハァハァ、ハァハァ凄い…』


凄いな、まるで裸の美女三人に密着され抱かれ、行為しながら戦っているみたいだ。


『ハァハァ…凄い快感だ』


快感が走る度にワイバーンを1羽1羽を簡単に斬り伏せていく、しかもその素材は勝手に収納袋に収納されていく。


ただ俺は快感に身を任せて、思いのままに剣を振るだけで良い。


それだけでワイバーンは死んで行き、相手の攻撃は胸当てが勝手に反応して避けていく。


「グワァァァァ~―ッ!」


剣を振れば振る程、快感が増してくる。


大きな胸を三人から押し付けられている様な快感が走り、とんでもない快感が体中を走り体が熱くなり顔も赤くなっていく。


そんな状態なら注意力散漫になる筈だが、可笑しな事に感覚がどんどん研ぎ澄まされていく。


まるで前世で言うレーダーみたいに全ての位置感覚を把握出来る。


快感だけじゃなく気持ち迄高揚してきた。


『あははははっ凄いなこれ!』


着の身着のままにただ剣を振るえば確実に一太刀でワイバーンが死んでいく。


物理的に剣が届かない場所のワイバーンにもその衝撃が届き、真っ二つになっていく。


サキュバスロードの力を借りた俺がこれなら、レイラはどれだけ強いんだ…そして、それより強い存在が確実に居る魔王軍…もう関わるのは止めよう。


『美女に抱かれている』その俺の気持ちを『三人』が感じたのか呼応したように形状が変わった。


剣は長くなり、より禍々しくなり、胸当ては軽装鎧に形状を替え羽が生えた。


収納袋は金色に代わり美しい女性のレリーフの金具がついていた。


羽?


まさか飛べるのか?


漆黒の蝙蝠の様な羽。


まるで前世で見た漫画の主人公のようだ。


『デーモンウイング』


間違ってはいけない。


あくまでこれは『デーモンウイング』だ。


空を飛べるようになり、ワイバーンの逃げ場を全部押さえた俺の前に、もうワイバーンは只の獲物にしか過ぎなかった。


どれ位のワイバーンを狩ったか解らないが…もう目の前には1羽のワイバーンも居ない。


50羽までは数えていたが…そこからは数えていない。


これでも、魔王クラスには瞬殺されるんだ…魔王や魔族に関わるのは絶対に止めよう…心に誓った。


◆◆◆


狩りを終えて宿に帰ると…そこには…何だこれ….


「ハァハァ~リヒトはぁはぁ僕あっあっ」


「リヒトさん、私、私ハァハァもうあっ」


「リヒト様ぁぁぁ、ああっ」


何が起きているんだ。


三人が床に横たわり胸や股間を押さえながら悶えていた。


その横に平然とそれを見下ろす様にレイラが立っていた。


レイラが何かしたのは間違いない。


今のレイラは仲間だから…何かの意図が有るのだろう。


「レイラ、これは一体?」


「リヒトちゃん、お帰りなさい! あらあら随分仲良くなったのね、少し焼けちゃうわ…うふふっ、この子達も仲間だから、少し強くしてあげているんですよ? まぁ、暫くは大変でしょうけど?」


三人は汗だくになって…色々と大変な事になっていた。


この部屋全体に『女の臭い』が充満する位…凄い。


「少し散歩してくる」


急いでドアをしめて俺は外に飛び出した。








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