第34話 修羅場⑥ 話し合い前



さてどうしょうか?


今、俺はエルザと一緒に貸して貰った部屋にいる。


時間はまだお昼過ぎとはいえ、アイカを一人で宿に置いておくのは不味いな。


アイカは基本引き篭もりだから、飯が無くても外に出ない。


今現在、お昼を抜いているから、夕方までには方をつけたい。


無理なら…また明日だな。


「どうしたものかな?」


「何も考える必要ないじゃん? リヒトが欲しいなら貰っちゃえば良いし、要らないならポイしちゃえば良いだけだよ? 僕はリヒトがする事には反対しないからね! だけど僕だけはポイしちゃ駄目だよ? それだけ気を付けてくれればね!うん、あとはリヒトが何でも好きにして良いんだからね!」


そう言いながら笑顔で剣を触っているエルザは少し怖い。


気のせいか顔の半分上が暗く見えるのは…気のせいだよな。


だが、アイカも胸がかなりのコンプレックスだから…


まぁ似たようなものか?


「そうだな、それでエルザに聞きたい事があるんだけど?」


「僕に聞きたい事?何でも聞いて、うん?」


「それで、マリアンとリラの胸なんだけどさぁ」


「む胸…そうやっぱりリヒトも小さいお乳が好きなんだ~どうせ僕は化け乳ですよ…醜い醜い…胸だもんねー――っ!」


「うあわぁ、うわぁ…違う違うから、剣抜くな、本当に違うから…」


「それじゃ、なんでそんな事聞くのかな? 胸の話がどうしたのかな?」


「だから、もし二人がエルザと同じ巨乳病だっけ? それだったら絶対にガイアは嫌うだろう? そうしたら引き取るのを前提に考えないといけないじゃないか?」


「ハァ~そう言う事…二人は僕と違い美乳だよ…まさか…二人を引き取って僕を捨てるの? 違うよね…僕たち親友だよね…」


胸は鬼門だな。


「美乳なら、無理して俺が引き取る必要は無いな。二人ともガイアが好きなんだから元鞘に納まると良いな」


「それは無理! あのガイアの話を聞いて、元に戻れると思っているのかな? 甘いよリヒト、好きだったのにあんな簡単に捨てられたんだよ?こりゃ無理だね!」


普通に考えてそうだよな…


「確かに…だがエルザは随分元気な気がするけど」


「僕? 僕はこれを機に欲望に生きる事にしたからね、うん問題ない!問題ない!」


「あっそう! だけど、それじゃどうすれば良いんだよ!」


「これはもう、勇者パーティ解散! それしか無いね」


「エルザ…そんな事出来ると思うのか?」


「そうだね、まずリヒトは四職じゃないから簡単だよね? 僕は剣聖だから教会からは三人に比べて軽く見られているし、支援団体も主流はギルドが多いから案外簡単かも、ただ、勇者に聖女、賢者は案外難しいかもね…賢者のリラはまだ可能性があっても勇者のガイアと聖女のマリアンはまず無理だと思う」


確かにそうだよな。


「それじゃ手詰まりか…」


「そうでも無いんじゃないかな? 僕とリヒトだけなら難しく無いし、面倒くさいなら…逃げちゃえばいいんだよ! 二人を連れて行っても良いし、僕とあの子とだけでも良いし最悪、帝国から南下して行けば、魔王も勇者も知らないような土地に行けるから、そこで暮らせば良いんじゃないかな?」


そんな事して良いのだろうか?


「そんな事したら、大変な事になるんじゃ…」


「あははっ大丈夫だって、帝国に魔族が進軍する為には王国を倒して聖教国を倒した後だから物凄く先の事だと思うよ?恐らくそうなる時には僕もリヒトももう死んだ後だと思う…それにガイアが戦わなければ十年も経てば、きっと次の勇者が生まれるんじゃないかな?」 


確かにそうだが…


「だが、数千、下手したら数万の犠牲が出るんじゃないか?」


「うん、そうだね! だけど、それは僕たちに関係ある? 自分の身なんだから自分で守れば良いだけじゃん! 幸い僕もリヒトもそんなに良い思いなんてしてないじゃん! そう考えたら恩賞を貰う前なら罪悪感なんてないんじゃないかな?」


報酬を貰ったなら、ギブ&テイクだが…勇者のガイアと違い言われてみれば恩恵なんて受けてないな。


『全てを捨てて去って行く』


そういう選択もありだな。


◆◆◆


「リヒト様にエルザ様、マリアン様とリラ様が落ち着かれたようです…良かったら話し合いをされては如何ですか?」


「うん、そうだね」


「そうだな…」


当ても無いまま4人での話し合いが始まる。



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