第28話 もう滅茶苦茶だ。



速足で立ち去ろうとしたが掴まった。


一体俺に何のようがあると言うんだよ。


俺はお前らにようは無い。


アイカには、嫌な予感がするから先に帰って貰った。


折角引き篭もり気味のアイカを連れ出したのにな…


仕方なく、近くの店でお茶をしながら話す事になった。


「それで、俺に何かようか?」


「「「「…」」」」


「黙っていたらわかんないぞ、用が無いなら行くぞ!」


「待ってくれ、話がある!」


「ガイア、話があるならとっとしてくれないか? 形上パーティに名前は残っているが、もう袂は別れたはずだ。お互いに用は無いだろう?」


「あの…リヒト僕が悪かったからもう一度戻ってきてくれないかな?」


「私達が間違っていたわ、私達には貴方が必要だわ、お願い」


「私も謝るよ、ごめんなさい!」


謝る必要なんて無い。


此奴らが言っていた事に嘘はあるのか?


其処だけを考えたら嘘は無い。


俺は四職じゃない。


だから、何時かは絶対に限界が来る。


『実力がついていかない』


そこに嘘はない。


確かに、動機は不純だし、欲望にまみれているが、言っている事は嘘じゃない。


だから謝って貰う必要なんて無い。


「エルザ、マリアン、リラ、何故謝る? あの時4人が言った事に嘘は無い、俺は魔法戦士だ! 皆に付いていけるようにかなりの努力をした。だが、そろそろ限界は近かった。突然なのには驚いたが本当の事だから気にする必要は無いんだ」


「「「リヒト」」」


「俺達にはお前が必要な事が解ったんだ! この通り頭を下げる、戻ってきてくれないか?」


「何度も言わせないでくれ! あの時のガイア達の判断は正しい。良いか? 四職が強くなるのには限界が無い。それに比べて魔法戦士は上級職で四職に次ぐジョブだが限界はある! だから謝ることは無い…俺はもう限界が近いんだ、あの時4人が言ってくれた様に抜けるのが正しい、もう一級の冒険者から抜けて並みの冒険者として暮らすつもりだ」


「なぁ、リヒト、それは本音か? 俺がこのパーティをハーレムパーティにしたから怒っているんじゃないか?」


どう答えるべきか、角が立たない様にしないとな。


「いや、このパーティはハーレムパーティで良いんだ! 勇者が魔王を討伐した後は三職(聖女、剣聖、賢者)が異性だった場合は側室や正室になる事は多い。歴史が物語っている。だから怒るわけないだろう? これは命がけで魔族と戦う勇者の特権だ! まぁ幼馴染が全員四職なのは少し寂しいが、これは女神が決めた事、仕方が無いだ」


確かに三人は幼馴染で気心の知れた仲だが、あるのはあくまで『友情』だ。


寂しいか寂しくないかと言えば、確かに寂しいが、それは『親友』『悪友』が居なくなる…その感情に近い。


リラと仲良くしていたのは、三人の中でいつも孤立しがちだったからだ。


好きと言う感情が無いのか?


そう言われれば『ある』


特にエルザにはな。


だが、それは恋愛じゃない。


一番近い感情は『友人が嫁を貰うから、もう夜遅くまで飲みに行けない』『一緒に馬鹿が出来ない』そんな感情だ。


これは恋ではない『友情』だ。


勇者パーティからの追放は『友達を失った』それだけだ。


「確かにそうだが、三職全員が勇者と結婚しない場合もあるだろう?」


ああっ凄く面倒くさいな。


ガイアは三人が好き。


三人もガイアが好きなんだから…それで完結で良いじゃないか?


俺が雑用係で必要なのかも知れないが…巻き込まないで欲しいな。


「だから、それが俺に何か関係があるのか? ガイアは三人が好き、そして、エルザ、マリアン、リラもガイアが好きなんだ! それで良いんじゃないか? 俺も悪かったんだよ、空気が読めないでな、まぁそれは『幼馴染』や『親友』となかなか別れる覚悟が出来なかった俺の甘えだ…逆に謝るから許してくれ」


「あの…リヒト、頼むから戻ってきてくれないかな? 僕からお願いしても駄目?」


「まだまだ、リヒトが必要なの、サポートを頼めないかな」


「お願いだから戻ってきて」


いや、此処で戻る訳にいかない。


友情は大切だけど、今の俺にはもう愛すべき存在が居る。


アイカに出会う前なら『友達』だから、そう考えたかも知れない。


だが、悪いがもう無理だな。


「この場所に『俺の居場所はない』悪いが断らせてくれ」


なんだ、ガイアが考え込んでいる。


嫌な予感がする。


「なぁリヒト…別にそんな事を気にする必要は無い。俺にとってはお前の方が大事な仲間だ! そうだな、リヒトが戻ってくるなら三人とは別れる。俺にとっては『友情』の方が大事だ…感情まではどうする事も出来ないが、三人とはお前が付き合えよ!魔王討伐迄は一緒に居ないと不味いが、なんならお前等4人が同じ宿で過ごして、俺だけ別宿でも良いぞ」


此奴、なにを言っているんだ?


あんなに欲しがっていた『幼馴染』のハーレムパーティだろう?


それにそんな事言ったら4人の連携が狂うだろうが…


「ガイア、冗談だよね! さっきも同じ事を言っていたけど、本気じゃ無いよね? 僕、信じないよ!」


「流石にこれは無いよ!さっき言っていたのは悪い冗談だと思っていたんだけど…本気なの? 散々好きだ、愛している! そう言っていた癖に…ふっふっふざけないで!」


「冗談はやめてよ…幾らなんでも酷いよ」


これマジでヤバいんじゃないか?


もう真面な連携も組めなくなるんじゃないだろうか。


阿吽の呼吸だからこその幼馴染パーティだ。


もし、それが崩れたら、個々が強くても不味い事になる。


「ガイア冗談はよせ!お揃いのネックレスをつけて将来を誓い合った仲じゃ無いのか?」


俺を追放した時に4人はお揃いのネックレスをしていた。


いや、今もしている。


これは前世でいうエンゲージリングと同じだ。


「そうだよガイア、僕たちは永遠を誓った筈だよね」


「そうよ一生傍に居る…そう誓ったじゃない」


「将来はお嫁さん、そう言ったよね?」


「なぁ、お前等よく考えろよ、俺は勇者なんだぜ! よく考えたら正室になる人物は王女の可能性が高い、そして側室に貴族や有力者が加わるんだぜ! そうなったらお前等何番目だ! これは俺にもどうする事も出来ない、なぁそんな俺の側室になるより、リヒトの1番の方が良いんじゃねーか! 幸い一線を超えちゃいねーんだ…此処が考え所だぞ…これが俺が真剣に考えた結果だ」


「そうかい!ガイアー-っ最低だよ! そんなの僕は気がついて居たよ…それでも僕はガイアを選んだのに…馬鹿ぁぁぁぁー-っ」


「そう、その程度だったんだ…うふふふふっ、好きだ、愛しているって言っていたのに…そんなの解っていたわよ! 勇者だもんね、政略結婚だってある…理解していたわよ…だけど『気持ちはある』そう思っていたのに、違ったようね…もう良いわ…もう良いー――っ」


「あはははっ告白されて浮かれて、私馬鹿みたい…本当に馬鹿だわ、もう良いよ…もう良いや」


三人ともテーブルを叩いて出て行ってしまった。


「あいつ等馬鹿だな、俺達は四職だ、魔王討伐までは別れられないのにな!リヒトこれで俺の気持ちは解っただろう! なぁに、俺を除けば彼奴らが好きになりそうな男はお前しか居ない! しかも魔王討伐までは俺達は他の人間と大きくは関われない! これであいつ等はそのうちお前の物だ…どうだ!親友、これなら帰って来てくれるな!」


なんだ、これはもう無茶苦茶じゃないか?


この状況を笑っているガイアがなんとなく薄気味悪く思えた。














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