第5話 店と揉める。
最初に服が必要だ。
そう思い古着屋に寄ったのだが。
「すいません、リヒトさん、流石に化け、いや大きなお胸の服は無いです」
この世界で服がすぐに必要なら古着屋で買うしかない。
だが、巨乳が殆ど居ない、この世界では彼女が着れる服も無いようだ。
「だったら、男物で彼女が着られる服とスカート、あと新品の下着を数枚くれ」
「それなら、どうにかなるかな…準備しますから少し待って下さい!」
「すいません…」
「謝ることは無いよ、全て解っていて買ったんだから」
「本当にごめんなさい…」
謝ってばかりだな。
これも全て『貧乳聖女』が全て悪い。
「すみません、こんな感じでどうでしょうか?」
野暮ったい男物の服にスカート。
今は着られるだけ良しとするしかないな。
まるで前世の世界だと『家出少女に服を貸したらこうなる』
多分、そんな服装だ。
「悪いが、暫くはこれで我慢してくれ、暫くしたらしっかりした服を買ってやるから」
「そんな…私なんかに服を買ってくれるだけで…充分です」
「そうか? 服は俺が買ってやりたいから買うだけだ!気にするな」
「洋服なんて…これだけでも嬉しいですから」
とんでもなく不憫に思えるな。
宿屋に向かう途中で飯でも食おうと行きつけの食堂に寄った。
「すみません、リヒト様、お連れの方と一緒だと不愉快になる方も居ますのでご遠慮頂けますか…」
行きつけなのにこれか?
結構金、落としたよな?
俺。
「そう、それじゃ悪いが豪華な弁当2つ作って貰えますか」
凄く嫌そうな顔をしたな。
「あの…それもお断りさせて頂きます」
ただ、弁当を作って貰うだけで、店にも入らないのにそれかよ!
なら良い。
もう我慢は止めた。
「それも駄目なら、此処のお客の冒険者全員と喧嘩だ! そうだそうしよう! あんたには手は出さないけど『冒険者同士の揉め事は自己責任』何をしても許されるからな、此処の客が俺達を不愉快!そう思っている!そう言うのなら仕方が無い、一般人には手を出せないが冒険者は別だ」
何人かの冒険者が席を立った。
「悪い、S級冒険者のリヒトとなんか揉められるか…リヒト、俺は無関係だ、勿論不愉快だなんて思ってないぞ!金払って帰る」
「私も怪我したくないから帰るね、あのさぁ、リヒトさんの連れが飲食店に好ましくないから追い出す!そう聞こえたけど! リヒトさんは、世界に数人のS級冒険者だよ!S級はギルドの看板だし冒険者の憧れなんだ!良い店だったけど、もう来ないよ…はいお金」
「悪いけど、俺達の憧れS級冒険者が出入りできない店じゃ…美味しくても来たくないな、リヒトさん、この店では食わないようにギルドの皆に言っておくわ」
俺は自分の味方の冒険者たちに酷い事を言ったんだな。
「悪いな、俺は皆に酷い事を言いかけたのに」
余りにも店員の態度が悪いから、つい無関係な冒険者まで巻き込んでしまった。
「「「「気にしないでいいさ、冒険者だからな!仲間だろう」」」」
「そんな…」
「もういいや、他で買うか、食べるか、するから!邪魔したな、もう来ない」
「待って下さい! これじゃ店が潰れちまう、お願いですから食事を、食事を食べていって下さい!」
「リヒトさん、ギルドの酒場で食べるか、弁当を頼めば良いんじゃない? あそこなら嫌な顔されないよ!」
そうだな、これでもS級冒険者。
ギルドに行けば良い。
そりゃそうだ。
「迷惑かけたから、良かったらギルドに来てくれ一杯奢るよ」
俺はお客の冒険者たちを連れてギルドに向かおうとした。
「ちょっと待ってくれ、いや待って下さい! 直ぐに作る! 代金も要らないし、お土産の弁当も無料で用意するから…お願いしますから、許して下さい」
揉めて敵を作るのも嫌だな。
「皆、悪いけど大事にしないでくれ、それじゃ『物凄く豪華な弁当2つくれ!』 あとこれで今日1日此奴らを含むお客全員にたらふく飯と酒を飲み食いさせてくれ」
俺は金貨1枚渡した。
恐らくこの店でこれから、のみ食べ放題じゃ金貨1枚じゃ少し足りない。
「あの、これは?」
「アンタと俺が揉めた為に俺は皆に奢る為に金貨1枚損した。アンタはアンタで金貨1枚で不足した分の食事の分を損する。冒険者や他のお客は嫌な思いをした…全員損した、それで手打ちでどうだ!」
「ありがとうございます…それで結構です、いえありがとうございます」
本当は、お客はただ飯とただ酒にありつけてラッキーなだけだ。
ただ、あそこで席を立ってくれた気持ちが嬉しいからこれで良い。
それに、店を潰すまで酷い事をされた訳じゃない。
これ位の落としどころで良い筈だ。
「それじゃ、皆は此処で好きなだけ飲み食いしていってくれ」
「「「「「おーっ」」」」」
俺達は豪華な弁当を受け取り宿屋へ向かった。
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