第29話 カナダ最後の地、Roko との出遇い
9月18日。
Janis に巡り逢ったプリンスエドワード島、黒犬と巡り遇ったマグダレン島に別れを告げて、ニューブランズウィック州のセント・ジョンにやって来た。
カナダ太平洋鉄道の最寄りの駅から宿泊先のYMCAまで2マイルもあり結構な運動だ。親切な駅員さんが行き方をメモしてくれたが、途中2度人に訊ねて漸く到着。それにしてもこのYMCA、安いだけの事はありかなり汚い。
翌日、セント・ジョンについての予備知識は全く無いので、YMCAの受付のおばさんに観光案内所の場所を訊き、そこで資料を入手した。午前には資料を基にアメリカ・ニューヨーク迄のスケデュールができた。
午後からは、市内をのんびりと散策したが特に目についた物はなかった。
9月20日。
ニューブランズウィック州の州都フレデリクトンにやって来た。注目していた教会大聖堂は期待はずれで少しがっかり。街は緑の樹木に覆われとてもきれいだ。セント・ジョン川の側の緑は特に美しく、ケベックシティーの高台を Akemi さんと歩いた時の事を思い出す。
翌日ものんびりと街を散策してみた。街路樹のカエデが実に美しい。とりわけ、シャーロット通りのは素晴らしかった。他には特に見るべき物はない。
フレデリクトンは訪れる街ではなく、住む街である。
9月22日。
今夜がカナダ最後の夜になる。当初予定してなかった Lise 推薦のセント・アンドリュースで途中下車だ。
セント・ジョンでバスを乗り換え、アメリカ・ボストン経由、ニューヨーク行きのバス車内でアジア系の若い女性に遇った。目が合ってすぐ、相手から笑顔と共に声がかかった。
"Are You a Japanese?"
"Yes."
「日本人に遇うの、久しぶりです」
「私も」
彼女の隣に同席する事になった。通称 Roko と言う20代の日本女性で、池袋に住んでいるそうである。
5月中旬に日本を発ったそうで、3か月半、サンフランシスコ、ロサンゼルスを中心にアメリカに滞在し、9月早々にカナダに入国。今日、アメリカに戻るとの事である。
海外旅行はハワイ、ヨーロッパに次いで3度目だそうだ。航空券は、1年間有効のオープンチケットを利用しているのは私と同じだが、彼女は1年間滞在の予定との事。1年間の女海外一人旅、何か訳ありかな?
予定では、ボストンまで行って、朝ニューヨーク行きに乗り換えるようだ。私は1日遅れで同じルートを辿る事になる。
セント・アンドリュースは、先日心残りな別れ方をした Lise が、すごく良い街と推奨してくれていた。私と旅のスタイルが似ている彼女の感覚を信じて、カナダ最後の地として訪れる事は決めていた。
久しぶりの楽しい日本語での会話で、時間はあっと言う間に過ぎていく。私の降車時刻が近づいて来た時、彼女が躊躇い気味に呟いた。
「もうすぐ降りると分かったら、何だかお尻がムズムズするようで、落ち着かないですね」
「それじゃあ、一緒に降りよう。私も明日、同じルートを辿るんだし」
暫く考えた末、結局一緒に降りる事になった。これが旅の醍醐味である。”吉と出るか、凶と出るか” は分らないが…。
ホテルはバックパッカー向きの安い所は既に満室の為、少し高いホテルに宿泊する事になり、彼女からの提案でツインルームを利用する事になった。
宿が決まった後、近くのレストランに入り、2人で談笑しながらのんびり食べてたら、ウェイトレスの老婦人が何度も食器の片付けにやって来る。
(日本人は話が長く、なかなか食事が終わらない)
といらいらしてるようだ。
のんびりしてるのがカナディアンではなかったかな⁉ 日本人は談笑する時はのんびりですよ。
第三章 プリンスエドワード島発、さよならカナダ 完
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