第26話 シャーロットタウン、再び

 9月8日

 5日振りに、シャーロットタウンに戻ってきた。前と同じゲストハウスに宿をとる。Janis も Sharon も Anne もいない。Gary は髭を剃って別人のように若々しく見える。夜10時前 Gary と2人でレストランに行ったが、そこで先日のショットバーでの自分の引き起こした事件について意見を訊いてみた。


"Gary, I had a Fight the other day. How do you think?"

"... Why did yo have a Fight?"


"U...n, maybe I like Janis."

"Yes. "


 その後、Gary は先ずパンチを否定した。当然であろう、彼はクリスチャンだ。彼ならどのように対応するか?

 パンチ否定の理由として、

"Janis is not your Wife, not your Sister, just a Friend."


 我々サイドの対応として、この様に話した。

"AT first, Janis say 'Don`t touch me.'."

"Next, You say 'Don`t touch her.` ."

 それから、パンチのジェスチャーを示した。

 が、すぐ否定して、

"No, Police-call"


 Gary はパンチは他の客の迷惑になる事、店の弁償が大変である事を強調していた。それは全くその通りであるが、警察を呼んでる時間が有る訳ない。さっさと彼女を引き離して店を出れば良いのだが、助平野郎がどう出るか? 出方によっては戦わざるをえなくなる。その場合は金的一発勝負に賭けるのみ。油断している酔っ払いだから、結構命中確率高くないだろうか。


 翌日、Gary に誘われて Thompson と言う牧師さん、及び彼の友人2人と共にキャベンディッシュの手前にある一流ホテルでのクリスチャンの会に出席してみる。会議には全く付いて行けず…。で、賛美歌だけは適当ながら一生懸命歌った。

 メンバーの中に一人、モンクトンの安宿で遭ったアル中のおっさんに似た人がいた。シャーロットタウンにクリスチャンの兄弟が居ると言ってたが、まさか⁉


 その翌日、再び Gary に誘われて、今度はすぐ近くの教会に同行した。昨日お会いした Thompson 牧師はここで働いている。ネイティブ同士の英会話には付いて行けないが固い雰囲気はない。

 Gary の説教の中で Japanese というのが聞こえたが、恐らく私の事を話しているんだろう。説教が終わってから信者の年配のご婦人が、" Are you a Japanese?" と声を掛けてくれた。

 

 Gary は私の事を他のクリスチャンに紹介する時、このように言っていた。

"He is not a Christian. But, he is very very very very interested in Bible."


 私はそこまでは…!

 旧約聖書には多少の興味はあるけど。とかく、白人さんは大袈裟です。


 9月11日。

 シャーロットタウンを離れる日がやってきた。

 Gary と共に庭に居る宿主の Watt 夫人に挨拶に行く。


"Mrs. Watt, I leave here Today. Thank You very much."


 あまり話さなかった Watt 夫人が繁々と私を見つめながら、イントネーションを強調して

"A nice Boy, a nice little Boy.....I miss You."


  Miss の意味が分らなかったが、察した Gary がいつものように通訳してくれた。私専属の便利な英英辞典である。


 昨日から Lise と言う小柄な若い女性が宿泊している。私が今日マグダレン島に行く旨話すと、自分も一緒に行くと言い出した。今日連泊する予定をキャンセルしての計画変更である。早速その旨、Watt 夫人に告げたところ、


"No, You can`t. You reserved."


 Lise は一瞬顔を曇らせた後、

"I don`t mind."


 少し、気まずい雰囲気が漂った。ゲストハウスなんだから、キャンセルさせてやれば良いのに。素泊まりなんだし。

 Gary の話によると、Watt 婦人は2人目の夫と別れた(死別かな?)後、一人で頑張ってるそうだ。

 Lise は悲しそうな顔で呟いていた。


"My Money...., She is a Christian....."


 クリスチャンの老婦人がお金を返してくれないとは思わなかったようだ。もう一泊したら? と勧めたが、気持ちはマグダレン島に向いてしまっているようだ。

「あれっ?」と思ったのは、Gary が私に、”She takes care of You.” と言って、更に "She looks after You." と言った事。

 確かに、私の英語は適当ではあるが、ジャパニーズ・イングリッシ 、ボディー・アクション、度胸には十分自信はある。Gary に心配して貰う事はない。





          第二章 バンフ発、プリンスエドワード島 目指して   完

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