第21話 プリンスエドワード島1
8月27日
憧れの島・プリンスエドワード島にやって来た。バンフを発って3週間が経過していた。
プリンスエドワード島は、”セントローレンス湾に浮かぶ揺り籠の島” と呼ばれており、島全体が一つの州になっている。 1864年に州都シャーロットタウンで建国会議が開かれていて、1867年にはカナダは独立国家となり連邦制が発足した。プリンスエドワード島が連邦に加盟したのは1873年である。
ケベックシティーからプリンスエドワード島までに2泊を要したが、いずれも途中宿泊地である故、のんびりとした道中であった。
1泊目のエドマンズトンは木賃宿みたいなホテルだった。『犬も歩けば棒に当たる』と言うが、『貧乏旅人歩けば安宿に当たる』と言うところか、適当に歩いてたら行き当たった。それにしても、いくら素泊り7ドルでも掃除ぐらいはしておくべきであろう。古いのは構わないが、床が埃だらけは良くないよな。古い壊れそうな机があったので引出しを開けてみたら、案の定そこにはゴキブリの死骸が…。
2泊目はモンクトン。ここはまともな安宿だったが、安宿では長期滞在のアル中乞食と遭遇する機会が多くなる。風呂に時計を忘れて取りに戻ったのがきっかけで初老のアル中のおっさんと知り合いになった。彼は部屋を訪ねてきて1時間ほど話していったが、予想通り後で返すから金を貸してくれと言ってきた。2度と似たような失敗はしない。しっかりと断っておいた。大都市が集中している東部ではこの手の人間が多いようだ。
この街では潮津波公園で面白い見ものが在るというので行ってみた。公園内にプチコディアック川という汚い川があり、普段は殆ど水が流れていない。ところが夕方になると、突然川下から水が押し寄せてくるという。毎日、時刻が掲示されるのでそれに合わせて出かけてみた。時間通り17時23分、川下から汚い水がどっと押し寄せて来た。
この川は湾に繋がっており、海水の干満によりこのような逆流現象が起きるようだ。川は汚く見えたが水の色が茶色く濁ったような色だったからそう見えただけかもしれない。
モンクトンを出発した時から既に汽車が遅延していたが、アマーストでCNRがバスをチャーターし、予定より早くプリンスエドワード島の州都、シャーロットタウンに到着した。
まずはシャーロットタウンで何日か過ごし、それから ”赤毛のアン” の縁の地、キャベンディッシュを訪れる予定である。兎にも角にも宿探し。庶民的なゲストハウスは何件か見つけたが、どこの玄関にも "No Vacancy" の木札が下げられている。
やっと、Watt's House というゲストハウスが "Vacant" になっていたので、留守番のおばあさんに中を見せて貰った。鍵のない部屋が一部屋空いているようだ。もう少し落ち着ける部屋がいいな。で、もうひと頑張り、他のゲストハウスも見てみたいと思い、ここでは決めなかったが、他は全て満室で結局戻って来た。
(街で一番最後に満室になるゲストハウスか、まあ仕方がない。期待はしない事だ)
ところが、気ままな一人旅の良さはここにあり。この宿には素晴らしい人達が宿泊していた。
女将はWatt さん。ワットさんは未亡人のようです。70歳ぐらいに見えるが、本人は "almost 60" と言っていた。
(ホントかな? たぶん、嘘だろな)
自分以外に3組の宿泊客あり。
Gary。ゲイリーはトロント在住の31歳の男性で、牧師さん。長めのあご髭が立派だ。毎年この時期に1週間余り、この宿に滞在して、近隣の教会で説教をしているようだ。
Janis、Sharon。トロントからの2人旅の女性。
Janis。ジェニスは25歳の白人女性で、ボーイッシュでスタイル抜群の美女。
Sharon。シャロンは27歳の黒人女性でかなり太めで温厚な女性。
Anne。アンは24歳ぐらい。赤毛のアンの Anne Shirley と同名だ。ふっくらぽっちゃりしてて物静かで可愛い。7か月滞在してるそう。親戚の娘かな?
Janis と Sharon は自分と同じ今夜からの宿泊である。バスの中で私を見かけたそうだが、こんな魅力的な女性に気づかなかったとは、シャーロットタウン目前でかなり緊張してたのだろうか?
2人は昨夜、トロントからの汽車の中から Northern Light (北極オーロラ)を観たそうである。ワァー、観たかった。
この日、2人には随分英会話を教えて貰った。
Gary には女将の超早口英語をゆっくり英語に”通訳”して貰った。
プリンスエドワード島では、”女の子らしい旅”をしてみよう…かな⁉
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