第8話 バンフの春スキー
ウィスラーから帰った後、スキー場が閉鎖した後の事も考えながら相変わらずのんびりとスキー中心の生活に浸っていた。流石に4月下旬ともなるとかなり暖かい。
ウィスラーと同様、ここバンフへの日本からの春スキーツァーはシーズン中より割安料金なのか、一度だけだが日本人団体客と一緒になった。たまたま行きのバス車内で隣に座ったオッサンがツァーコンダクターだった。日本から16人プラス1で来ているとのこと。
年中海外旅行ができて、この仕事に大満足しているとの事であったが、実に羨ましい。彼らとはこの日1日しか顔を合わさなかった。翌日レイクルイーズに行ったのだろうか?
ベストシーズン中と比べてスキー客が少なくなった精か、併設のレストランで働いている女性とリフトで一緒になる事もある。ある時、その一人に5月末に自転車でジャスパーに行くつもりと言った後、"I may be killed by Bear."と言ったら、"No,friendly." と言って笑っていた。この頃は自分にとって熊は恐怖以外の何物でもなかった。
長期海外旅行をしている人と一緒になる事もある。ある男性は半年はスキーをして、半年は旅行をしているそうで、今年はスキーの後、日本、オーストラリア、ニュージーランドを訪れるとの事であった。どんな仕事をしているのだろう? 他人の心配をする事はないか。自分だって似たようなものだ。
ある日、帰りのバスで隣り合わせたおばさんはフランクフルトからの旅行者でいろんな国を旅しているようだ。発音が分りにくかったのはヨーロッパ英語の精かな? 日本人は英語をあまり話さないとかなり強調していた。
一度だけサンシャインで盗難にあった。日本から持参の安いスキー手袋をトイレで盗まれた。春スキーとは言え、リフトでは手が冷たい。カナダにも悪人はいるようだ。
その後、よく似た赤色の手袋をしている女性をを見かけたが、気が弱い精か声を掛けられなかった。同じ色の物はいくらでもあるだろうし、内容が内容だけに今までのように明朗な会話とはいかないだろうし、日加紛争になっても困るし。
4月30日。今日から夏時間。時計の針を1時間進める事になった。同じ街に居るのに変な気分だ。太陽が真上にあるうちにリフトを止める事になる。何とも勿体ない。
5月になって急に日本人の姿が目立ち始めた。GWの精だろうか。バンフスプリングスホテルに宿泊しているツァー客が多いようだ。
今まであまり顔を合わさなかったバンフ在住の日本人とも顔を合わせる機会が増えてきた。自分の他にもバンフに長期滞在中の日本人がいた。彼はケンちゃんと呼ばれており、昨年12月から滞在しアルバイトをしながら居候生活を送っているようだ。本人は歌手の狩人の兄貴に似ていると言われるそうだが、むしろアイ・ジョージに似ているように思う。何度か一緒に滑ったがスキー技術はなかなかのものだ。
ある日、ケンちゃんと近江屋で働いてる顔見知りのユキちゃんにサンシャインで遇ったので一緒に滑った。見知らぬ女性が2人一緒だったが、行きのバス車内で見かけていた女性だった。帰りの車内でも一緒になったので一人と話したがGWを利用しての旅で残念ながら明日帰国するとの事だった。KDDの社員でよく海外旅行をしているようだ。今日が27歳の誕生日だというが22歳ぐらいに見える相当な美人だった。
夏時間になってから16時半のリフト終了までサンシャインでスキーをし、それからテニスをするという日課がルーティン化してきた。何しろ22時半頃まで外は明るい。
天気の良い日のサンシャインは暖かく、上半身裸にGパンで滑っている男子やら上半身ビキニにGパンの女性をよく見かけるようになった。
また、膝から下がなくストックの先端にミニスキーを付けて高度な技術で滑っている男子も見られた。彼にとっては、新雪よりザラメ雪の方が滑り易いようだ。
上半身下着のようなアンダーシャツにGパンの若い女性とリフトで一緒になった事があった。"Are you not cold?" と訊いてみると即座に、"No." と返ってきた。18歳ぐらいかなと思いつつ、"How old are you?" と訊くと何と、"Fourteen" だって。14歳なら中学生だ。
5月も下旬になり、滞在期間が明日で切れる。
ヴィザの延長申請にカルガリーにあるイミグレーション(入国管理局)に行ってきた。3か月前のバンクーバー空港での時と違って割と楽に許可が貰えた。予め紙に必要事項を書き記しておいたのが良かった。
帰りに動物園にも寄ってみた。ここでも珍しい動物が見られて楽しかった。
5月22日、サンシャイン・スキー場は多くの雪を残したままクローズとなった。他の2スキー場とともに。
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