22話:同期全員とコラボ!! 1

「ここがエターナル事務所の本社か…」


僕は今、自分が所属しているVtuber事務所エターナルを入口前で見上げていた。


女装をしながら…


――――――――――


「それで、今週の土曜日にエターナル事務所の本社で16時から同期のコラボを行いたいと思っていますが…配信の準備もありますので15時には到着していてほしいのですが…予定はありませんよね?」


「はい、ないです」


「よかったです。るいさん、エターナル事務所の本社の場所は分かりますか?」


「あ〜…えーっと…」


よくよく考えてみると僕ってエターナル事務所の本社の場所知らないな…

所属してから意外と時間経ってるのに…


「分からないですね…すみません」


「謝らなくていいですよ。るいさんはまだ本社に来たことがないので、分からないのはしょうがないです。」


「はい…」


「エターナル事務所の本社の場所は後で送っておきますので」


「分かりました。あ、コラボって言っても何をやるんですか?」


「本社に来てからのお楽しみって事で。それとるいさんに言わなければならないことがあるのですが…るいさん、女装して本社に来てください」


「……え??女装!?」


「はい、女装です。るいさんの女装姿が可愛かったので」


「な、なんで女装を…って、え!?僕の女装姿を知っているんです!?」


「美咲(アガット)さんから写真を頂きました。頬を赤くして恥じらいながらスカートを抑えている姿はくるものがありましたね」


「い、いちいち言わなくていいですから!」


美咲ちゃん…僕の女装写真を渡すなんて…!!

本社で会ったときにけちょんけちょんにしてやる!!


「と、というか…僕が女装をしなければならない理由ってなんですか…?」


「私と美咲さんが見たいからです」


「え、それだけのために…!?」


ど…どうしよう…女装を同期の皆や街の人に見られるのは恥ずかしい…

だけど…見られたい気持ちもある…


「それだけのためとはなんですか!るいさんの女装姿はとんでもない価値があります!」


恥ずかしいけど…価値があるって言われたら…


「わ、分かりました…女装して行きますよ…!」


「よっしゃぁぁぁぁぁっ!!!男の娘の女装きたぁぁぁぁ!!!あぁ、今週の土曜日楽しみになってきた!早く土曜日にならないかな♪」


「え……?」


なんか琴葉さんキャラ違くない…?

え?こんなよっしゃぁぁぁとか言う人だったの?


「…あっ…い、今のはなんでもありませんので…るいさんの聞き間違いです…では通話切りますね」



「…………今の聞き間違いは無理あるんじゃない…?」



――――――――――


と、言うわけでエターナル事務所の本社まで来たのだが…めちゃくちゃ入りづらい!!

僕なんか、場違いじゃない??

正直僕ここまでエターナルの事務所の本社が大きいとは思ってなかったんだけど!!

あ〜…どうしようかな…もうここで10分は見上げてるよ…


「ん〜……」


「あれ…?るいじゃない。どうしたの立ち止まって」


「ふぇっ…!?」


きゅ、急に後ろから話しかけられてびっくりしてしまった… 

後ろを振り返ってみると…

茶髪のツインテール、瞳は黒と茶色が混ざったキリッとした目付き。小さい鼻に小さい唇でとても可愛い。白いパフスリーブブラウスに膝丈の黒いスカートがとても良く似合っている…


ん…?可愛いなぁと思ったけど、美咲じゃん!


「美咲…ここで僕の女装写真を琴葉さんに見せた恨みを晴らしてやる!!」


「え…あぁそれは謝るから…」


ポカポカポカポカポカッッッ……!!!


「だから叩くのやめてもらえるっ…!?」


「やめない!この恨みが晴れるまで叩き続ける!!」


ポカポカポカポカポカポカッッッ……!!!


「い、痛くはないんだけど、恥ずかしいから!周りの人達皆見てるから!」


「……えっ??」


周りを見てみると皆僕たちの事を見ていた。


「あの子可愛い〜」


「同じ服着て姉妹なのかな?」


「妹ちゃん、お姉ちゃんのことポカポカ叩いて可愛いねぇ」


と、聞こえてきた…

そ…そっか…ここ街中だったんだ… 

今のやり取り全部見られて……

今の状況を理解すると恥ずかしさが込み上げてくる…


「は、早くエターナル事務所の本社に入ろう…!!」


僕は美咲ちゃんの手をとってエターナル事務所の本社まで走る。


「わ、分かったけど。これ余計に姉妹みたいに思われてるわよ…!」


僕はそれを聞いてさらに走るスピードを上げた。

そして勢い良くエターナル事務所の本社の中に入る。


「はぁっ…はぁっ…」


「るい…貴方体力つけなさいよ…そんなに疲れるなら…」


「はぁっ…はぁっ…運動しても…全然体力つかないよ…」


「男なのにそれで大丈夫なの…?いや…体力ない方がるいは可愛いか…」


「それ聞こえてるからね…というかなんで美咲ちゃん僕と同じ服着てるの?」


「ん…?あぁ…るいとお揃いがいいなぁって思ってね。どう?似合ってるでしょ?」


「うん…似合ってるけど…同じだから僕たち姉妹に思われたじゃん…恥ずかしかったよもう…」


「姉妹に思われたのはこの服のせいでもあるけど、るいが私をポカポカ叩いたってのもあるわよ?というか…それがあったからあんなに見られたのだし」


「美咲が僕の女装姿を見せた恨みだから…」


「ポカポカ叩いて恨みを晴らすって考え方がもう可愛いのよ…」


「バカにしてるでしょ!それ!」


「してないわよ…というか早く行かないとまずくない?私が来たとき残り20分だったし…」


「今は…14時50分…やばいよ…配信の準備もあるだろうから急ごう!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る