第146話 "影縫い"の事情
モスダン邸から離れて現在地は職人街。この街に滞在する数多くの職人が住まう地区であり、また彼等が店を構えている場所でもある。それには職人達が使用する道具の販売店も含まれている。
時刻はそろそろ午後7時。職人達が各々の店を閉め始める時間だ。店の中で商品を物色していた客達も店から出て、食事に向かおうとしている。
そうして店から出て行く者達の中に、彼女はいた。
彼女は私の接近に気付いているだろうか?とりあえず、このまま近づいて声を掛けるとしよう。
「やぁ、久しぶり、というにはまだそれほど時間が経っていないかな?まさか、王都で貴女に会えるとは思っていなかったよ。」
「っ!?・・・ご無沙汰しております。ノア様・・・。」
「夕食は食べたかな?良ければ一緒にどうだい?私としては、貴女とこうして再び会えた事だし、話をしたいんだ。」
人の目があるためか、流石に片膝をついて礼をする事は無かったが、それでも彼女の態度は相変わらず恭しい。
それはそれとして、彼女から歓喜の感情が読み取れるのは、やはりこの服装が原因かな?
私はついさっきモスダン邸で豪勢な夕食を食べたばかりではあるが、だからと言って食事が入らないと言うわけでは無い。
その気になれば、私はドラゴン丸々一体食べても満腹にならない自信があるのだ。
魔力を介さない自然現象、物理法則を完全に無視してしまっているが、私の場合、口から体内に取り込んだものが胃に到達した時点で即座に分解されて魔力に変換されているようなのだ。
だからどれだけ食べても体型に変化が起きないし、満腹になる事も無い。
満腹感を得られる事が無いと思えば、少々どころでは無いほど損をした気分になるが、制限無く美味いものを食べる事が出来ると思えば悪くない。
だが、何時かはこの魔力に変換する機能自体を抑えて満腹感を得られるようにもなってみたいものだ。
おもむろに食事に誘ってみたが、さて、彼女の返答は?
「・・・ええ。夕食は未だで御座います。ノア様がお望みでしたら、喜んでご一緒させていただきます・・・。」
「それは良かった。それなら、私が宿泊している宿に行こうか。あの宿の料理はとても美味しいよ?」
「ノア様が行く場所であれば、どこへでもお供する所存でございます。」
そうだ。そう言えば彼女も私の前ではこういう反応をする人だった。
出来る事なら、私の意見にただ従うだけでなく、自分の意見も持って伝えて欲しいのだけど・・・。
まぁ、いいか。今は都合が良いのだし、彼女と共に"白い顔の青本亭"へと向かうとしよう。
ちょうどいい機会だ。。ついでと言っては何だが、彼女に個人的な頼みをするとしよう。
「そうだ。折角だから、新しい服を作ってもらおうかな?仕事道具、持ってきているよね?やってもらえる?」
「勿論で御座います。再びノア様の衣服を作れる事、私にとってこの上ない喜びで御座います。」
「それは良かった。じゃ、宿まで案内するよ。行こうか、フウカ。」
新しい衣服の製作を依頼すれば、フウカは即答で私の要求に応じてくれた。その声色には歓喜の感情がまるで隠されていない。
私の衣服を作れる事が純粋に嬉しいようだ。
仕立て屋・フウカ。
彼女自身が名乗ったわけでは無いが、彼女が"影縫い"で間違いない。
私が関心を覚えるほどの速さで移動したのは、影に潜っての移動。針と糸を魔術で操れば衣服の製作も容易だろう。
そして彼女の恭しい態度と新たな主を得たという証言に加え、予定の時間に本来いる筈のない人物が訪れている。
偶然にしては重なり過ぎだ。これだけ状況証拠が揃っていれば、彼女を"影縫い"として判断しても良い筈だ。
私の誘いに応じてくれた事だし、フウカを"白い顔の青本亭"へ連れて行こう。私への協力も仰ぎたいし、彼女がヘシュトナー侯爵に従う理由も聞きたいからな。
宿へ戻って来ると、ご機嫌な様子のブライアンに出迎えられた。
そして何やら食堂が何時にも増して賑やかに感じる。
そう言えば、王都に来た初日も今日と同じぐらいの時間に夕食に訪れ、人が込み合っていたわけだが、今日もまた人が混んでいるのだろうか?
「よう、嬢ちゃん!お帰り。今日は何時にもまして大活躍だったそうだな!」
「耳が早いね。ひょっとして食堂の賑わいは?」
「おうよ!嬢ちゃんの活躍を聞いた連中が、自分で見て来たかのように嬢ちゃんの活躍を吹聴してるぜっ!」
なんとまぁ。一体どういう経緯で情報が出回ったのやら。
「嘘偽りでなければ構わないのだけどね。」
「その辺は御機嫌に話をしている連中に確認を取ってくれや。しっかし、それにしてもよぉ・・・。」
ブライアンが何かを言いたげに私とフウカを交互に見ている。
はて、彼はフウカに何か思うところがあるのだろうか?
「?彼女がどうかしたのかな?」
「初日はともかくとして、嬢ちゃんは顔が良い奴とよく、ウチで飯を食べるなぁって思ってよ?」
ふむ。確かにフウカは妙齢の美女という言葉が似合う顔立ちをしているとは思うが、そこまで頻繁と言えるだろうか?
初日の事も言及している辺り、アイラの事も言っているだろうし。
「頻繁にって言っても、マックスと彼女ぐらいなものだろう?そこまでは頻繁では無いと思うよ?」
「嬢ちゃん、たったの五日間で同じ宿に三人の美形と食事を取っといて、頻繁じゃないって言われても、全然説得力がないぜ?」
「そうかもしれないけど、私が王都にきてからまだ五日間だよ?これから先はどうなるか分からないじゃないか。それに、客が増える事はブライアンにとって不都合な事では無いだろう?」
「まぁな!つーか、俺が言いてえのは文句じゃなくて、その逆だ。美男も美女も、連れて来てくれりゃあ、ソイツ見たさにウチに客が来てくれるからな!むしろ嬢ちゃんには、仲良くなった美人を頻繁にウチに連れてきて欲しいぐらいだぜ!」
そう言う事か。まぁ、ここの宿の食事は美味いからな。別に親しい人物を連れてくる事に否やは無い。
それなら、今度はマーサやピリカを誘ってみるのも良いかもしれないな。
「それで、今日は席は空いているのかな?私は構わないのだけど、彼女をあまり待たせたくは無くてね。」
「それに関しちゃ問題無いぜ。本日の主役を待たせるなんてこたぁ、したくねえからよ!予め一つ席は取ってあるんだ!」
有り難いとは思うが、そう言う事は程々にしておいた方が良いと思うよ?私が直接予約したわけじゃないのだから。
とりあえず、今回は相席という形を取らずにすぐに席に就けるようなので案内を受けて席に移動するとしよう。
食堂へ移動すれば、食事を取っている客達から盛大に迎えられた。
彼等にとって、やはり宝騎士を上回る実力を持った人物と言うのは、非常に珍しく、興味があるのだろう。
「おおっ!本日の主役のお出ましじゃないかっ!?」
「宝騎士様と戦って圧勝したんだってっ!?凄いじゃないかっ!」
「いやぁ、私は出来ると思っていましたよ!?何せあのマコト=トードーが贔屓にしていると言う話も耳にしていましたからね!」
「私は頭が上がらないと聞きましたよっ!?」
「あのオリヴィエ殿下も貴女の前ではとても明るい表情をするそうですし、いやはや、貴女がこの街に訪れてからというもの、この国は良い方向へ変わりそうな気がして仕方がありませんなぁ!」
おおむね彼等が耳にした内容は、私の記憶と一致している内容だな。ならば特に注意する必要もないか。
酒の効果も相まって気持ちよさそうに会話をしているのだし、ここで水を差すのは無粋というものだろう。好きに語らせるとしよう。
「私は彼女と会話をしながら食事を楽しむから、そちらはそちらで好きにし楽しむと良いよ。」
「おや、これはまた、見ない方ですな。それにしても、ノアさんは見目の良い方と食事を取る事が多いですなぁ。いやぁ、羨ましい。」
「何せノアさん自身が大変美しい方ですからなぁ。この食堂の一部分だけまるで別の店かと思うほどに見栄えが良くなりますからなぁ!」
「はははっ!あまり口が過ぎるとブライアンが[この宿が汚いとでも言うつもりかっ!!]、と怒鳴ってきますよ?」
「違いあるまいっ!」
「「「わっはっはっはっ!!」」」
ここで食事をしていた者達は皆が皆酔っぱらっているためか、会話にやや整合性が取れていない気もする。
だが、酔った勢いと言うものがそれを払拭して笑い話へと変えている。ここから食堂の終了時間まで、今日は一日中賑やかになりそうだな。
私にはあまり関係のない話だ。それよりもフウカと話すべき事を放しておこう。
私達の周囲にはマックスの時と同様防音魔術を施している。これで私達の会話の内容が誰かの耳に入る事は無い。それに加え、私にも、フウカにも、そしてこの宿にも、音声を他所へ伝えるような魔術が施されていたり、同様の効果を持った魔術具が取り付けられているような事も無い。
『
これで存分にフウカと会話が出来る。
注文した料理を口にしながら、彼女に確認を取っていこう。
「済まないね。今日はちょっとした催しがあったから、その事で皆騒がしくなっているみたいなんだ。」
「先程、宝騎士に圧勝した、と商人の方々が仰っていましたね。相手は、どなたなのですか?」
「グリューナと言う
「まぁ!宝騎士・グリューナと言えば、現状ティゼム王国最強の人物としても話題に挙がるような人物ではないですかっ!?そのような方ですら、ノア様は歯牙にもかけないのですね!?」
フウカの耳にはまだ私がグリューナと試合をした事は耳に入っていなかったらしく、純粋に驚いている。
回りくどい話はあまり好きではない。早速本題に入るとしよう。
「グリューナとの試合をしたのは、彼女の増長だけが理由じゃないんだ。」
「他にどういった理由が?」
「この国にとってかけがえのなかった人物、マクシミリアン=カークスの娘、シャーリィ=カークスを護衛するために、学校へ入れるだけの信用を得るためさ。」
「・・・・・・かの巓騎士の御息女に、何かあるのですか・・・?」
フウカの心音が少しだけ乱れたな。彼女はヘシュトナー侯爵が私を雇おうとしている事をまだ知らないようだ。
「うん。インゲイン=ヘシュトナーなる侯爵が彼女と、マクシミリアンの妻、アイラ=カークスを手籠めにしようと企んでいてね。私はその護衛と言うわけさ。」
「・・・あのお二人を・・・国民が知ったら暴動が起きてしまいそうな内容ですね・・・。カークス騎士団長はこの国にとって象徴のような方でしたから。」
これは、フウカは何をするかは聞かされていないな。
条件さえ満たす事が出来れば、確実に従わせる事が出来ると思っている辺り、ヘシュトナー侯爵は大分フウカの、"影縫い"の事をかなり下に見ているようだ。
「で、私はヘシュトナー侯爵の事を少し前から知っていてね。彼はある程度ではあるが、私の実力を把握しているんだ。彼は、私を雇ってアイラとシャーリィを捉えてくるように要求すると思うよ。」
「そのような些末事に、ノア様を・・・。」
「で、私を雇えなかった時の保険として、貴女を招集した、と言うわけだね。」
「っ!?!?」
いきなり話が自分の正体に振られてしまっては驚くなと言う方が無理がある。彼女の驚愕も当然の反応だな。
「ノ、ノア様は、私の事を・・・?」
「実を言うと、彼等が密会をしているところに忍び込んで、会話の内容を聞かせてもらったんだ。その後、ここの冒険者ギルドマスターから、ヘシュトナー侯爵が招集をかけた人物の特徴を聞いたよ。私には広範囲を知覚できる魔術が使えてね、今朝の時点で貴女の存在をこの街で確認したから、"影縫い"は貴女しかいないな、と判断したわけさ。」
「・・・・・・御慧眼、お見事に御座います。仰る通り、私は雇われの暗殺者、"影縫い"と呼ばれておりました。」
「フウカは既に、暗殺者として働くつもりは無いようだね?」
「・・・はい。・・・ですが・・・。」
やはり、彼女にはヘシュトナー侯爵に従わざるを得ない、何かがあると見て間違いないな。そしてそれは彼女にとって非常に不本意な事のようだ。
ならば、私がやるべき事は決まっている。
当初の予定通り、フウカから事情を聴き、彼女がヘシュトナー侯爵に従わなければならない理由を取り除くのだ。
「聞かせてもらえるかな?貴女がヘシュトナー侯爵に従わなければならない理由とやらを。と、そうだ。その前に、私の予定をフウカに話しておかないとね。」
フウカから事情を聴く前に、これまでの経緯を説明しておこう。
夕食を楽しみながら、私はこれまでの経緯をフウカに一通り説明した。
まぁ、流石にオリヴィエの事情までは説明していないが。
「そのような計画まで・・・。ノア様は敵対した相手には容赦をしない御方なのですね・・・。」
私が敢えてヘシュトナー侯爵に雇われる事、彼に無理難題を押し付けてアイラとシャーリィを引き渡さない事、増長させ、戦力が整わないまま騎士達を襲撃させて返り討ちにした後、これまでの不正の証拠を叩きつけて断罪する計画を説明した際の、フウカの反応がコレである。
「正直なところ、私は貴女が"影縫い"で良かったと思っているよ。」
「えっ?」
「私の事を主と慕ってくれている者が一緒に行動してくれると考えれば、これ以上なくやり易いだろうからね。現に今もこうして話し合って今後の打ち合わせのような事が出来ている。」
「ノア様・・・!私の事を配下としてお認めに・・・っ!?」
「残念だけど、貴女を私の家に連れていく事は出来そうにないけれどね。あの場所は、ちょっと人が住めるような環境じゃないんだ。それでも、貴女の私を想う気持ちを無下にする事は出来ないよ。」
他の人々の衣服と、私が所有するフウカの服と比べてみると分かる。正直なところ、彼女の仕立て屋としての腕は超一流と言っていい。
彼女が私のために衣服を仕立ててくれると言うのなら、是非とも歓迎したい。
いやまぁ、私に仕えたいと願ったグリューナの願いを断っておきながら、フウカを配下として認めるのは不公平で理不尽かもしれないが、フウカはグリューナと違い、常に私の傍に仕えたいと言っているわけでは無いのだ。
気持ちとしては、贔屓にしている仕立て屋と言った感覚である。
そんな事を聞いたらフレミーが憤慨するかもしれないが、家で、"楽園"で活動する際は勿論フレミーが仕立ててくれた衣服を着用するとも。
しかし、フレミーが用意してくれる服は彼女の糸が用いられるため、おいそれと人前に出す事が出来ない。それは私の存在を世界中に公表した後でも変わらない。
間違いなく衣服に込められたフレミーの魔力に当てられて、過剰な反応をする人間が出てくるだろう。
だから私が人間達の生活圏で活動する際には、人間達が所有する素材で人間達が製作した衣服が必要になってくるのだ。
そういう意味では、フウカの存在はこれ以上なく私にとって有り難い存在だ。それこそ、彼女を配下として認めて、定期的に私用の衣服を用意してもらいたいと思えるほどに。
「ああ・・・っ!なんて・・・!なんという事なのでしょう・・・っ!今日まで絶望の淵に追いやられていた私の心が、今、一瞬にして雲の上まで上り詰めたような気持ちですっ!これほど・・・っ!これほど嬉しい事が今までにあったでしょうか・・・っ!」
「さて、フウカ。改めてあなたの事情を聞かせてくれるかな?貴女がヘシュトナー侯爵に従う理由を。配下が問題を抱えているのなら、それを解消するのは主の務めだろうからね。」
「・・・っ!・・・っ!?・・・っ!?!?」
フウカが感激のあまり声を失ってしまっている。両手を口元に当て、顔を左右に小さく振りながら感激に打ち震えてしまっているのだ。
これは、彼女の事情を聴くには彼女が落ち着くまで待つ必要があるかな?
時刻は午後9時30分。食事を終えた私達は、私の部屋へと移動して先程の会話を続けている。
「つまり、肉親の命を握られている、と?」
「はい。現状、あの子達の病の進行を抑える手段は、ヘシュトナーしか持ち合わせていないのです。」
フウカがヘシュトナー侯爵に従う理由は、やはり人質、弟と妹の命を握られているためであった。
それも、単純に彼等を特定の場所に監禁しているだけではない。彼女の弟妹は不治の病に侵されていた。既に二人の意識はほとんどなく、ヘシュトナー家のみが保有する秘薬の効果によってその命を取り留めているにすぎない状態だ。
尚、病に侵されているのはフウカの弟妹だけではない。同様の病に侵されている者達は他にも大勢、それこそ村一つ分の子供達が病に侵されているのだ。
フウカの故郷の子供達である。残念ながら、大人達は既に命を失ってしまっているのだそうだ。
フウカが無事な理由は、当時彼女は既に成人を迎えていて、彼女が村を出た後に病が村に流行り出したからだと言う。
久しぶりに里帰りをした彼女が見た光景は、大人は誰もが亡くなっていて、自分の知らない者達が、病に侵され苦しむ子供達を看病しているという、あまりにも悲惨な光景だったのだ。
肌の接触や空気で感染するような伝染病では無いらしく、病に侵された子供達にフウカが触れても、彼女が病に侵される事は無かった。
それでも彼等の血液や唾液、汗などの体液が身体の内部に入ってしまった場合、病が発症してしまうらしく、現在は人知れぬ場所で隔離されている、との事だ。
ヘシュトナー侯爵は、"影縫い"の正体がフウカである事は知らないようだが、"影縫い"が村の関係者である事自体は把握しているようだ。
彼女を従わせるために、村の子供達の病状を抑えているのである。
そしてフウカがヘシュトナー侯爵に出した条件とは、村の子供達に会わせ、その様子を確認させる事。
隔離場所は王都からそれなりに離れているらしく、搬送のために時間が掛かるため到着から活動までに時間が掛かるようなのだ。
分かってしまえば後は容易い。村の子供達を助けて、ついでに信頼できる場所に預けてしまおう。それでフウカがヘシュトナー侯爵に従う理由は無くなる。
一応、この事はマコトにも伝えておくとしようか。彼に伝えても良いか、フウカにも確認を取らないと。
そもそも、彼女はマコトの事をどう思っているのだろうか?嫌っていなければ良いのだけど。
「フウカ。貴女は冒険者ギルドマスターのマコトと戦った事があるわけだけど、彼と仲良くする事は出来るかな?」
「あの、ノア様?あの方とは仕事の都合上やむを得ず戦う事になってしまっただけであり、特別嫌悪の感情を抱いているわけではありませよ?そもそも、あの方も国の英雄の一人なのですから、嫌悪を抱くどころか、尊敬しています。味方であると言うのなら、非常に心強いです。」
良かった。これなら、思った以上に事がうまく運ぶ事になりそうだ。
「それなら、マコトに貴女が"影縫い"である事と、ヘシュトナー侯爵に従う理由を彼に話てしまっても良いかな?と言うか、何なら直接会って話をするかい?」
「つまり、ノア様はあの方と気軽に会話が出来るのですね・・・?聞く人が聞いたら言葉を失ってしまいそうですね・・・。ええ、構いません。あの時の事も謝罪したいですし、お手数をかけて申し訳ありませんが、あの方との会話の機会を、設けていただけますか?」
「お安い御用さ。ちょっと待っていてね?」
フウカに断ってマコトに『
〈おや、ノアさん。お疲れ様です。本日はグリューナの事と言い、エリザの事と言い、本当にありがとうございました。〉
〈気にしないで。で、今はその二つの件の処理で忙しくしているところかもしれないんだけど、もう一つ報告する事が出来てしまってね。こうして連絡を入れさせてもらったんだ。立て込んでいるようならまた後で『通話』を掛け直すけど、大丈夫そうかな?〉
〈ええ、まぁ、問題は無いのですが・・・。今日は物凄く物事が大きく動く日ですね・・・。それで、今度はどういった内容でしょうか?〉
〈ああ、"影縫い"と接触して、事情を聴かせてもらったよ。マコトにも彼女の事情を直接説明したいから、明日また時間を設けてくれないかな?ああ、そうそう、彼女は味方だよ。安心して。〉
〈へっ!?かっ!?みっ!?ええーーーっ!?!?〉
流石に驚くか。マコトとしては今回の件で最も懸念すべき相手だと思っていただろうからな。
ま、何はともあれ後は明日だ。
確認を取ったら、今日はもう風呂に入って寝るとしよう。
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