第70話 周囲への対応方針

 到着した森林の様子は、かなり静かだ。風もほとんど吹いていないため、葉が擦れる音も聞こえてこない。

 樹木の高さはおよそ8~12メートルほど。枝はあまり広がっていないので、日光が地上までしっかり届いてきて十分な明るさがある。残念ながらこの樹木も、私が着陸した森と同様、果実がついていない。時期が悪いのだろうか?


 鳥の止まり木としては申し分ないようで、そこかしこから鳥の囀りが耳に入ってきている。甲高く、それでいて透き通っていて綺麗な鳴き声だ。そういえば、レイブランとヤタールの鳴き声を私は聞いた事が無いな。

 意思の疎通が出来ていたため、あの娘達は勿論、皆の鳴き声を私はほとんど聞いた事が無い。

 まともに鳴き声を聞いた事があるのは、初対面の時のホーディと、同じく初対面のゴドファンスの時ぐらいか。鳴き声を聞かせて欲しいと尋ねたら、聞かせてくれるのだろうか?まぁ、それは後にしよう。


 地面の凹凸はほとんどなく平らかつ水平で、非常に歩きやすい。石が埋まってせり出しているという事も無いので、躓いて転ぶという事も無いようだ。


 資料室で調べた内容では、森の広さは約20ヘクタールで中央には半径30メートルほどの泉が湧いている。泉の水は微量ではあるが緑の魔力を含み、回復薬の素材に適していると書かれていた。


 この泉の水で育つ植物は通常の植物よりも良く育つのだそうだ。そのため、"楽園"へ向かう冒険者達が使用するような回復薬や魔術具の素材を泉の周辺に栽培して、高品質な素材を安全に入手する事を可能にしたのだ。つまり、天然では無く、人工的に造られた森林というわけだ。


 勿論、"楽園"で入手した素材で作製された回復薬や魔術具は、この森で得られた素材で作製された物よりも遥かに性能が高い。

 だが、それらの道具は性能が良すぎるのだ。それこそ、一流の冒険者が切り札、もしくは奥の手として温存しておくほどの性能だ。


 作製のためには"楽園"から生きて帰って来る事が絶対条件のため、入手難度も段違いに高い。当然、作製難度も相応に高くなる。間違っても、中堅の冒険者が常用できるような代物ではないという事だ。


 "楽園"で得られる資源で生計を立てているこのティゼム王国では、"楽園"での生存率を高めるための高品質な回復薬や魔術具の需要は、尽きる事が無い。

 そんな回復薬や魔術具の素材が安全に手に入るこの森林は、ティゼム王国の中でも極めて重要な土地だ。

 そのため、国が信用のおける人物を管理者に任命して、森林の状態を管理し、保ち続けている。当然、森を荒らしてしまうような魔物や魔獣は存在しない。見つけようものなら、即刻排除されるだろう。


 そうしてこの森の安全を維持しながら、低級の冒険者やイスティエスタを出入りする商人たちへ素材を採取させているのだ。

 命の危険が無くかつ、素材採取の練習も行える。この森での採取依頼は、まさに"新人ニュービー"にうってつけの依頼というわけだ。


 私がエリィに斡旋された依頼は全部で五つ。回復薬の素材を二種類、魔術具となる素材を二種類、そして中央の泉の水の採取だ。

 森の奥を見渡せば、こちら側に向かってくる人影をちらほらと見かける。

 おそらくは私と同様、採取依頼を受けた"新人"なのだろう。

 彼等は自分の背中よりも大きなバックパックを背負っている。あのバックパックには、さぞ大量の素材が詰め込まれている事だろう。


 彼等の移動速度が一般的な"新人"や"初級"と変わらないのであれば、所持品の重量の事も考えると、そろそろ帰還した方が良いのだろう。私には『収納』があるので、まるで問題が無いし、そもそもあの程度の重量では何の重りにもなりはしないが。


 さて、時間に余裕はあるが、手早く済ませてしまうとしよう。


 それは何故か。


 いるのだ。この森にも、野生の動物が。

 いや、この森にも、という表現は間違いだな。ホーディを始めとして、私が会った事のある森の住民は皆、魔物ないし魔獣だ。

 今回は彼等と触れ合ってみようと思う。野生の動物と会うのは初めてになる。少しだけ緊張するな。


 と思っていたら、こちらに向かって生きていた"新人"と思われる三人の冒険者達が、私に話しかけてきた。

 彼等を"新人"だと思ったのは、装備が真新しくそれでいて服装に汚れがほとんどついていないからだ。

 "初級ルーキー"であるならば、多少の依頼をこなして、装備も消耗しているだろうからな。


 「こんにちは。ええっと、貴女も、"新人"の冒険者?」

 「ああ、昨日登録したばかりでね。そちらはこれから帰りかい?」

 「ああ、この荷物だからね。今から帰ってちょうど、街の鐘が六つ鳴るぐらいだと思うよ。」

 「貴女、特に何も持っていないようだけれど、大丈夫?失礼だけど、手ぶらじゃ、この森の採取依頼はこなせないわよ?」

 「気遣いありがとう。だけど、問題無い。・・・・・・こんな感じでね。私は荷物を持つ必要が無いんだ。」

 「う、嘘だろっ!?『格納』っ!?それに"二色持ち"っ!?ど、どうしてそんな人が今更"新人"なんだっ!?」

 「私はつい最近人の街に訪れたばかりでね。それまでは人と関りを持っていなかったんだ。だからまぁ、私の能力はランクで判断しない方が良い。冒険者になったのも身分証が欲しかったからだからね。」

 「あ、アンタ、よく見たら、竜人ドラグナムじゃないかっ!?い、いったい今までどんな生活を送ってきたんだ!?」

 「それを見ず知らずの他人に訊ねるというのは、いくら何でも野暮というんじゃないかな?君は、赤の他人に自分の事をとやかく詮索されて、その相手に良い感情を持つのかな?」


 やはり、こういった場所で手ぶらでいるというのは、目立つものだな。いきなり質問攻めにあってしまうとは。

 こんな事なら、安易に『収納』を使うところを見せるべきでは無かったか?

 いや、私が竜人だと判明したら、結局何らかの理由を付けて絡んできそうだな。


 相手が格上の存在である事を教えておくのは悪い手段では無い筈だ。

 念のため、少し睨みつけながら二色の魔力をほんの少しだけ開放して、前歯が見えるように笑みを浮かべながら、彼等の行動の是非を問いかける。


 ほんの少しと言っても私の感覚だ。彼等からしたら膨大な量だし、元々私の目つきは睨みつけるような眼をしている。そこにシンシアや肉串の店主がドラゴンのような歯と言っていた鋭利な前歯を見せれば、威圧としては十分だろう。


 これで大人しく引いてくれると良いのだが・・・。


 「ヒッ、ヒィイイッ!?」

 「やっ、た、たすけっ・・・!?」

 「すみませんっ!仲間が大変失礼しましたっ!自分達と同じランクという事で、相手の実力も考えずに対等の相手だと判断してしまいましたっ!!責任は俺が負いますっ!二人を見逃してやってくださいっ!!」


 ・・・・・・やりすぎた。


 三人のうち二人は恐慌状態に陥って腰を抜かしているし、一人は今にも命を差し出してしまいそうな勢いで土下座をし始めている。

 "新人"相手には刺激が強すぎたのだろう。幸い、バックパックの密閉能力が高いからか、彼等が頑張って集めた採取物はこぼれていないようだ。


 やはり、魔力を開放したのがまずかったのだろうか?もっと緻密に操作できるようにして、人間達に過剰に反応させない力加減を覚えないとな。


 とにかく、だ。この三人にはさっさとイスティエスタに帰ってもらおう。そして、今後は私に関わらないでいてくれるとありがたい。


 「・・・こちらとしては少し驚かせようとしただけだから、そんなに怯えなくていいよ。ただし、忘れてはいけないよ?人によっては軽い気持ちで言った言葉でも、相手を激怒させてしまう可能性があるという事を。」

 「ハ、ハイッ!そ、それでは、失礼しましたーーーっ!!!」


 土下座をしていた冒険者が恐慌状態になってしまった二人を何とか起こして、そのまま三人は脱兎のごとく逃げ出してしまった。

 相当に怯えた彼等の様子を見ると、初めて会った時のホーディやウルミラの反応を思い出すな。

 あの子達も、初めて会った時は相当怖がられてしまっていた。まだあの時から三ヶ月程度しか経っていないけれど、既に懐かしさを感じるな。


 っと、感傷に浸りすぎだな。早いところ依頼の品と泉の水を回収して動物達と触れ合うとしよう。




 ・・・・・・私は、先程怖がらせた冒険者達への対応を間違っていないと信じたかったが、どうやらそれは無理なようだ。


 私は、間違っていた。


 動物が、動物達が皆凄い勢いで逃げていくんだ!ほんの少し私が近づいただけで!モフモフが!フサフサが!私が一歩踏み出しただけで逃げていくんだ!


 原因なら、分かり切っている。

 こうなってしまったのは間違いなく冒険者達を威圧しようとして魔力を開放したからだ。それしか考えらえない。


 少し考えてみれば当たり前の話だ。例え魔獣でなくても生物は等しく魔力を宿す。

 そして彼等野生の動物達も魔力を感知する事が出来るのだ。つまり、私が冒険者達が恐慌状態になるほどの魔力を開放した結果、当然森にいる動物達もその魔力を感じ取ってしまったという事だ。逃げられて当然である。


 当たり前の話だが、私ならば、例え逃げられたとしても容易に追いつく事は可能だし、そのまま毛皮を触れたり抱きしめたりも出来る。

 だが、怖がられている状態でそんな事をしてしまったら、相手に強いストレスを与えるだけだ。

 既にウルミラと初めて会った時に経験しているしな。最悪の場合、ショック死させてしまいかねない。そんな下劣な真似、出来るわけが無い。


 非常に不本意だし、残念ではあるが、回収は終わっている。もうイスティエスタに帰るとしよう。夕食までの時間は図書館で本を読んで過ごすとするか。



 帰りの途中、私から勢いよく逃げ出していた冒険者達を見かけたが、あえて無視をした。


 どうやら、落ち着きを取り戻し始めたところだった。もしもあの状態で私が彼等の前に顔を出したら余計に恐怖を与えてパニックになっていた事は容易に想像がつく。

 全力で逃げ出して、一安心と思った矢先、逃げ出した原因が目の前に現れるのだ。パニックになならない筈が無い。


 そういうわけだから、少し回り道をして彼等を追い越してイスティエスタの西門に到着した。現在の時間は三回目の午後の鐘がなって5分ほど経過したところだ。

 西門を出た際に会話をした門番が驚いた表情で此方を見ている。


 「えっと、忘れ物ですか?凄い速さでしたよね・・・?」

 「忘れ物では無いよ。採取が終わったから戻ってきただけさ。」

 「えっ?あの、失礼ですが、何も持っていないように見えますが・・・?」

 「・・・これで納得してくれるかい?」


 出発するときは確かに敬語は無かったはずなのだが、今では敬語を使われている。

 原因として考えられるのは、私の走る速度を認識して格上だと判断したからだと思うのだが、それにしても態度が変わりすぎじゃないだろうか?


 それと、人間達に『格納』や『収納』を使える者がいない事と、私のランクが"新人"のためか、見たままの状態、つまり『収納』に該当する魔術を使用できないと見られている。

 まぁ、当然の話だ。魔力も抑えている以上、私が魔術の使い手かどうかも分からないだろうからな。


 ある程度ランクが上がるまでは、聞かれる前に実施して見せた方が早いだろうな。

 だから、質問をしてきた門番に『収納』から採取した素材の一部を取り出して見せておく。


 「か、『格納』・・・。た、大変失礼しましたっ!」

 「いいよ。ランクが低いうえに手ぶらで行動している私にも原因がある。というか、それしか原因が無いからね。今後は、ある程度ランクが上がるまでは、あらかじめこういった魔術が使える事を実施して見せておくさ。」

 「ええっと、余計なお世話かもしれませんが、あまり、同格の冒険者には見せない方が良いですよ?」

 「便利だからね。この魔術は。使える者がいたら、是非仲間になってもらいたいだろうね。」

 「はい、それに、貴女は竜人な上、大変器量も良いですから、勧誘が後を絶たないと思いますよ?」

 「忠告、ありがとう。それじゃあ、また。」


 態度が急変した事に訝しんだが、なんだかんだでこの門番は最初から対応が丁寧だった。今のところは、信用に値する人物とみて良いんじゃないだろうか。

 素直に礼を言って街へ入り、冒険者ギルドへ報告へ行こう。


 冒険者ギルドに入ると、正面のカウンターにエリィがいたので、そちらに向かう事にした。この時間帯は皆、依頼を片付けている者が多いのか、過去2回よりも、周囲に冒険者の気配は感じられない。


 まぁ、一日中この場所で依頼も受けずに何もせずに過ごす事など出来ないだろうから、当然だろう。今後、依頼の受注や報告はこの時間帯に行う事にした方が良いかもしれない。


 「あっ、ノアさん、どうも。今朝とは服装が違いますね。」

 「ああ、私が元々持っていた服は露出が高すぎる、と街を案内してくれた子供達に注意を受けてね。服屋で選んでもらったんだ。」

 「その服って、北大通り沿いのお店のですよね?結構、良い値段がすると記憶しているんですけど・・・。」

 「大体、一着銀貨2枚掛かったよ。けど、どれも良い出来栄えだったからね。納得したうえで支払っているよ。」

 「どれもって事は、一着だけじゃないんですね・・・。ちなみに、ノアさんの宿泊先を教えてもらう事はできますか?」

 「宿泊先は"囁き鳥の止まり木亭"だよ。」

 「この街でも有数の老舗宿じゃないですかっ!?ノアさんってお金持ちだったりするんですかっ!?」


 エリィの所に向かうと、依頼の報告をする前に今の私の服装について尋ねられた。

 クミィが結構良い値段がすると言っていたし、やはり、平均で銀貨2枚するのは高い方なのだろう。宿泊先を答えたら、驚かれてしまった。

 あの宿は本来ならば、"新人"や"初級"が宿泊できる宿では無いのだろうな。


 「所持金は、銀貨数枚程度なら気軽に出せるぐらいには持っている、と答えておくよ。あまり他人に見せるものでもないだろうからね。」

 「ぎ、銀貨数枚を気軽に・・・。ノアさん、それだけお金があるなら、音の鳴る時計にも手が届くんじゃないですか?」

 「届くとは思うよ。だけど、折角冒険者になったんだ。目標はあった方が良いだろう?そういった物は、冒険者として稼いだ資金で買う事にするよ。」

 「色々と規格外ですね・・・。あっ、ご用件があるんですよね。すみません、話を遮ってしまって。」

 「構わないさ。貴女と話をするのは嫌いじゃない。」

 「あ、ありがとうございます・・・。それで、ご用件は何でしょうか。」


 エリィが言う通り、私の所持金ならば十分に音の鳴る時計が手に入るだろう。

 だが、私が冒険者の目標として決めたからだろうか?それとも、最低でも所持金の二割近い額がするからだろうか?不思議と、今すぐに時計が欲しいとは思わない。


 エリィに話を脱線させた事を謝られたが、気にする事では無い。むしろ、好感を持つ相手との会話は、望んでいるぐらいだ。

 少々照れさせてしまったようだが、要件を伝えよう。口で説明するだけではまた冒険者達や門番たちのような質問をされるだろうからな。

 あらかじめ『収納』から依頼の品を一つ取り出すのを見せてから説明しよう。


 「こんな感じで、依頼の品の採取が終わったから、報告に来たよ。納品はこの場で行えばいいのかな?」

 「『格納』・・・つくづく規格外ですね・・・。納品は別室にて行いますので、ご案内しますね?此方へどうぞ。」


 そう言って、エリィが席を立ち、此方を見ながら奥へと移動する。ついて来い、という事でいいのだろう。大人しく彼女の後ろへ付いて行くとしよう。


 「それでは、此方の部屋で納品の品の査定を行いますので、お入りください。室内に鑑定士がいますので、その人にギルド証と納品の品を提示してください。」

 「査定は貴方がやるわけじゃないのかい?」

 「私はただの受付ですもの。大事な素材に悪戯に触る事なんて出来ませんよ。査定はその道の専門家である鑑定士が行いますから、詳しい話も聞く事が出来ると思いますよ?」

 「それは助かる。それじゃ、此処まで案内ありがとう。」

 「はい。失礼しますね。」


 査定はエリィがやるわけでは無いのだな。ここで査定をして納品が終わったら、再びエリィの元まで行き、報酬を受け取る、という流れで良いのかな?

 では、部屋に入るとするか。


 部屋には大柄な庸人ヒュムスの成人男性が両手両足を大きく広げて寝転がれるような巨大な机があり、その奥に、小さな人影が見えた。此方に背を向けて何らかの本を読んでいるようだ。


 「失礼するよ。依頼の品の査定を頼むよ。」

 「ほう。貴女が昨日登録した規格外の竜人か・・・。それでは、ギルド証と納品物の提示をお願いしよう。」


 声を掛けられて振り向いた鑑定士は、矮人ぺティームの青年のようだ。外見に関しては本当に庸人の子供のようで、シンシア達よりも少し年上ぐらい、といった外見だ。知らない者が見たら勘違いをするんじゃないだろうか。


 ちなみに、私はどういうわけか庸人と矮人の区別がしっかりとついているようだ。一目見て彼が矮人である事が分かった。


 尤も、目の前の矮人の醸し出す雰囲気はとても落ち着いていて、子供のようには到底思えない。彼を見て庸人の子供だと思う者は、見た目だけでしか判断が出来ないような者だけだろう。


 彼の言葉に従い、ギルド証と納品物を『収納』から取り出し、巨大な机の上に置いていく。ああ、そうか。納品物によってはかなりの場所を取ってしまうからな。それでここまで巨大な机を置いてあるのか。


 「こりゃまた随分と規格外な"新人"が現れたものだな。貴女の周りが騒がしかったんじゃないかな?」

 「まったくもってね。多少不愉快だけど、直接話しかけてこない連中に関しては無視する事にしたよ。」

 「大人な事だね。・・・・・・うん、どれも良い状態だ。一日で資料室の本を読破したと聞いていたが、事実のようだね。本に興味があるのかな?」

 「ああ、これから夕食の時間までは図書館で時間を潰そうと思っているよ。良ければ、図書館が利用できる時間を教えてもらえるかな?」

 「図書館は午前の鐘が七つ鳴ってから午後の鐘が九つ鳴るまでの間だよ。ここの資料室よりも時間が短いから、その点に気を付けると良い。」


 話の途中で本についての話が出たので、図書館についての情報を聞いておいた。現地で聞いても問題無いのだろうが、事前知識という物は欲しいものだ。


 資料室よりも利用できる時間が短いのはやはり蔵書の数が多いからだろうか。管理すべき物が多ければ、それだけ人員も時間も取られるだろうからな。


 「納品物は全て問題無いよ。ただ、ちょっと聞かせて欲しい事があるんだが、答えてもらえるかな?」

 「何かな?別段、変わった物は無い気がしたけれど。」

 「品物はね。だが、品物を保存してある容器。貴女は、コレ等をどこで手に入れたのか、教えてもらえないだろうか。この容器は非常に質が良い。他の冒険者達にも、採取にはこの容器を使う事を推奨したいぐらいだ。」

 「ああ、それは魔術による自作だよ。ここで実施しようか?」

 「こ、これが魔術によるものだってっ!?!?しかも今見せてくれるのかっ!?ぜ、ぜひ、是非頼むっ!?」


 何のことは無い。納品物を保存したのは『我地也ガジヤ』で適当な大きさに制作したガラス瓶だ。いくら『収納』に入れる事が出来るからと言って、むき出しのまま納品するわけにはいかないからな。それぞれの大きさに合った無色透明のガラス瓶を作製したのだが。


 ・・・・・・これは、やらかしてしまったか?

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