第19話【最終回】君がいてくれたから
―卒業式―
6年生たちにとってこの日は待ち遠しくもあり、悲しくもあった。
俺に限っては、後者の思いが強まっていた。
多くの友達と離れ離れになる。
そして、歩とは別々の中学になってしまう。
俺は、今までためた想いを今日伝えることに決めていた。
言わなきゃきっと後悔する。
そうして、俺は、家族の車に乗り、学校へと着く。
いつもの下駄箱のところに「卒業式」とでかでかと幕が張ってあり、今日で終わりなんだと強く思った。
家族は俺と別れ体育館に向かった。
いつも通りクラスに向かうだけなのに足が重い。
終わりなんて嫌だ。
そんな子供じみた思いを心の中で叫んでいると、
美咲「しっかりしなよ 最後なんだから 笑って」そう言って、俺のほっぺたを引っ張った。
隆之「いたた いたいたい(笑)」
美咲「変な顔(笑)」なんて子だ。そう言って、ほっぺたを引っ張るのをやめた。
隆之「何すんだよ」
美咲「そんな顔でお別れするつもりなの?」
隆之「...そだな ありがとう 引っ張ってくれて」
美咲「それは 変な顔見たかったからだけどね(笑)」
隆之「おい(笑)」
―卒業式(卒業式前の教室)―
俺たちは、そんな話をしながらクラスに向かった。
クラスに入り、みんなの顔を見た時 色々あったなと走馬灯のように思い出がよみがえった。
男①「先生に返事する時どうしよっかな」
男②「どうするって何がだよ」
男①「いや、最後ぐらいド派手なことしたいからさ」
男③「じゃあ、返事した後にお父さんお母さんありがとうって伝えれば?」
男①「それいいな! じゃあ、そうしよう」
男②「するのかよ!! 家に帰ったら親に感謝どころか𠮟られるぞ!」
男①「いや、俺の家族ならよく言った!!って褒められると思う」
男③「どんな家庭だよ!!」
こんなくだらない会話ももう聞けないのかと思いつつ、席に座る。
俺は、周りを見渡しながらこの光景を目に焼き付ける。
そんな時
歩「もう、終わるんだね」
隆之「あぁ ほんとにこのクラスでよかったー」
歩「私も このクラスのみんなと出会えてよかった」そう話していると
先生「はい、積もる話があると思うが 席に座ってくれ これをみんなに配るから回してくれ」そうして渡されたのは、バラの形をしたコサージュだった。そして、それを左胸につけた。
先生「今日は、他でもない君たちがメインで主人公だ お父さんお母さん、そして私に君たちの成長した姿をみせてくれ 君たちが私のクラスの生徒でほんとによかった ありがとう では、行こう」
男①「よし、俺の成長した姿見してやるぞ」
男②「絶対やめろ!(笑)」
こんな会話をみんなが聞き、笑っていた。
正直、これで終わる実感が湧かなかった。
そして、俺たちは、予行通り背筋を伸ばし体育館へと向かい、卒業式を無事に終えた。
―卒業式(卒業式後の教室)―
俺たちは、卒業式が終わったんだという気分になり、
泣く女子生徒、
強がりかずっと笑う男子生徒、
色々な想いがあった卒業式を終えた。
俺は、クラスのみんなに話をしに行った。
誰一人欠かさずありがとうと感謝を伝えて回った。
そして、先生がやってくる
先生「みんな本当にかっこよかった 感動をありがとう」そう言って、先生が泣いていた。
女子生徒がそれを見てさらに泣いていた。
俺も泣きそうになってしまったが、涙をこらえる。
そこに
歩「泣いてる?」目を真っ赤にしながらそう言ってくる。
隆之「そっちこそ泣いてるじゃん(笑)」
歩「仕方ないよ.. たかゆき こんな時に強がらないの」そんなことを言われたら 涙が止まらなかった。
いやだ、まだみんなと一緒にいたい。
俺は、そんなみっともない姿を見せた。
歩は俺の頭をなでる。
歩「たかゆき ほんとうにありがとう みんなとのお別れが終わったら、みさきと3人であの桜の木で話そ」そう言って、歩は違う子と喋りに向かった。
そうだ。
俺は、歩に伝えるんだ。
そう思い、決心し、みんなと再度話し合いに行った。
そして、一人ひとりにマイクが渡されて家族とクラスのみんなと先生の前で想いを話す機会があり、俺の番となった。
俺は、震える手でマイクを握り、
隆之「ぉおれは...」言葉が詰まった。
こんなことは初めてだった、緊張というより悲しくて。
その時
歩「がんばれ!」強く温かな言葉だった。
俺は、仕切り直し言葉をつづけた。
隆之「俺は、みんなと会えてほんとによかったです 最高なクラスだと思います
一部のみんなとは離れ離れになるけど、それはもう会わないことじゃないです
絶対にみんなとどこかで会えます
それは、高校かもしれない、大学かもしれない、成人式かもしれない、分からない
でも、絶対に会えます
みんなが大人になってまた会って、このクラスでの思い出を語り合えるそんな日は来ます
だから、言わせてください
みんな本当にありがとう!! また会おうね!!」
そう言って、俺は次の人へマイクを渡した。
みんなから拍手と『そうだ絶対に会える』といった言葉などが聞こえた。
俺たちは、その後俺たちは先生に向けて、いきものがかりの「ありがとう」を歌った。
次に先生から一人ひとり一言をもらい、卒業証書を受け取った。
そして、先生はみんなにありがとうと言い、本当の卒業式が終わった。
俺は、またみんなと喋り、家族に記念写真を撮ってもらった。
クラス全体の写真と仲の良い男子たちと そして、
歩「たかゆき 3人で撮ろ ほら、みさきも」
隆之・美咲「うん!」
そうして、3人で撮ったその写真は歩を真ん中にしてみんなが笑顔な写真であった。
美咲「今度は、2人で撮りなよ」
歩「えっ?」
美咲「最後なんだから早く!」
歩「はい!」
俺たちは、恥ずかしながら、お互いの肩が触れ合いながら2人横になって写真を撮った。
そして、また一人、また一人と教室から去っていく。
家族が帰る?って聞いてきたからちょっと待ってと言い、俺は、入り口の外に少し離れた位置にある桜の木へと向かった。
―卒業式(桜の木)―
例年、この日は桜が咲くかは厳しい時期であるが、今日は咲いてくれた。
本当にありがたい。
そう思いながら2人を待つ。
そして、2人が歩いてこっちに来る。
美咲・歩「お待たせ」
隆之「最後なんだな」俺は、桜の木を再度見ながらそう言った。
美咲「そうだね」
歩「でも、たかゆきが言ってくれたとおり、また会えるよ 絶対」
隆之「あぁ」
歩「よし、ここでまたみんなで写真撮ろう お母さん来て!」すぐにこちらに向かい
歩のお母さん「じゃあ、みんな取るわよ はいチーズ」桜の木の下で3人の写真ができた。
歩のお母さんは、その写真を美咲と俺の家族に渡すためか、気づいたらいなかった。
隆之「...みんなに言いたいことがあってさ」
歩・美咲「うん」
隆之「俺は、ほんとに2人がいなかったらこの学校生活が今のように楽しくなかったと思う
2人がいてくれたから楽しかったし、笑うのが増えたと思う
俺の友達でいてくれてありがとう」
美咲「それは、私たちも同じ気持ちだよ たかゆきが面白いから楽しかった(笑)」
隆之「その面白いって俺が面白いこと言って、面白いで、いいですよね?(笑)」
美咲「さぁねぇー(笑)」
歩「笑 2人がいなかったら私はどうなっていたか分からなかった こんな素敵な友達ができて私は幸せ者だよ 隆之 美咲 大好きだよ ありがとう」
隆之「こちらこそありがとう」
美咲「わたしもありがとう」
隆之「…」
俺は、歩に伝えなければ…
でも、一歩が出なかった。
その時
美咲「言いなよ」そう言いながら、俺の背中を押した。
隆之「ありがとな 美咲」俺は、前に踏み出せた。
美咲「私は少し家族のところ行ってくる」そう言って、家族の方へ向かっていった。
隆之「…」
歩「...」
少しの静寂が訪れた。
だが、それは、心地の良い静寂だった。
そして、俺は話す。
隆之「俺は、歩がいなかったらこんなにも楽しい学校生活をおえなかった
歩と出会って最初はさ、うるさい女子だなって思ったけど」
歩「えっ、そうなの?(笑)」
隆之「あぁ、でも、話していくうちにさ
楽しくなっていた
周りが、環境が、学校が、変わっていた
俺に光がともった
毎日同じことの繰り返しだった
でも、歩が変えてくれた
そのことを今日伝えたかった
本当にありがとう!!!」
歩「...それは違うよ」
隆之「えっ?」
歩「私は、隆之を変えたかもしれない
でもね、隆之の周りや環境や学校を変えたのは私じゃない
隆之自身が変えたんだよ
隆之が前へ進んだから今の隆之があり、
みんながいるんだよ
隆之が変えたんだよ!」
俺はその言葉を聞いて胸が熱くなった。
俺が変えたのか。でも、
隆之「でも、歩がいてくれたから!!
俺はこんなに幸せな日々を過ごせた
歩! こんな不愛想な俺に話しかけてくれてありがとう!!!」
歩はその言葉を聞き、泣いてしまった。
そして、歩は俺に抱きついて
歩「私こそありがとね 大好きだよ 隆之」
俺たちは、そうしながらゆっくりと流れる時を過ごした。
お互いの鼓動とは反対に。
美咲「お熱いお2人さん ちょっといいですか?(笑)」
俺たちはその言葉を聞き、離れる。
美咲「別に離れなくてもいいのに(笑)」
隆之・歩「…」
美咲「さ、私たちにはこれからも人生が続くんだよ
辛いこともあるかもしれない
でも、その時は私たちがいる
そんな時は頼ればいい
だから...バイバイしよ..」泣きながら美咲はそう言った。
歩「うん! 隆之・美咲 バイバイ!!」
美咲「バイバイ!!」
隆之「歩・美咲 バイバイ!!!」
そうして、俺たちは各々の家族の車に乗った。
俺は、カメラに保存した写真を眺め、泣きながら笑っていた。
「小学生編 完」
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