第58話 世界樹の女神1
とりあえず、暴れるルナを抱えながら逃げ続けていた。
「やっと見つけた。」
そんな声を聞いた瞬間、僕は何か穴に落ちた。気が付けば何か異様な空間にいた。そこでは、ルナさんは何か魔法なようなもので拘束されていて、僕に攻撃するのをやめた。さらにボロボロになっているバレットと少し雰囲気が違うアインさんがいた。
「バレット、何が」
そう僕が言ったときにバレットさんは一言、
「…………この人に聞くといい。」
そう自分の妹を他人のような態度で指さしながらつぶやいた。
「まず、何から話しましょうか。まず私は君が知っているアインではなくて、世界樹の女神です。」
流石にこの状況で冗談を言うはずもないし、多分、本当にそうなのだろう。世界樹の女神という存在に僕はあまり良い印象を抱いていない。それにこの見た目がアインさんの人物が世界樹の女神なら、アインさんはどこにいる。
「…………アインさんは。」
「そうだな、まずこの身体は、今、里でアインさんを名乗っている人物に殺されかけて、死にかけてしまった本物のアインさんの体です。今から戦うべき相手のスキルは、増幅と乗っ取りと洗脳の3つのスキルを使ってきます。条件は不明でしたが、存在を乗っ取るには、相手を殺す必要があるらしくて…………」
そう世界樹の女神はつぶやいた。
「つまり、アインさんはそれで、殺されてしまったってことですか…………でもじゃあ、貴方はその肉体を奪い取ったって」
そう僕が叫んだ時にバレットさんがつぶやいた。
「…………それは、違う。妹は、死にかけていた。俺は、お前らがクロモヤを倒した後で、妹の死にかけで血まみれの妹と遭遇した。意味が分からなった。問題は全て解決したはずだと思っていたからだ。でも、すぐに父の言葉を黒幕の言葉を思い出した。でも、そんなことは、もうどうでもよくて、ただただ願った。妹をどうにか生き返らせて欲しいと、そしたら、声が聞こえた。妹の命を助けることはほとんど不可能だが、死ぬまでの時間を稼ぐことは出来ると。」
「それが、女神さまの憑依ってことですか。」
「…………ああ、それで、俺は、その声に願った。俺は、まずは妹を殺しかけた相手をぶっ殺して、それから、妹を生き返らせるために、この世界にやってくる天使を殺してスキルを奪い取る。」
バレットはそうつぶやいた。
「ふう、なるほど。」
何も言える気がしなかった。家族が死にかけるなんて僕には経験したことがなかったし、それに僕が今のバレットに何を言ってもただの綺麗ごとになってしまう気がした。
「アインさんは、それを、あまり望んでいないと思いますよ。」
身体は完全にコントロールを失い、僕に攻撃するためにもがいているが、声は非常に丁寧なルナがそう呟いた。
「あんたに、何が分かる。」
そうバレットさんは声を荒らげた。それは、まあこの状況では必然だった。
「私には、分かりません。そんな良い兄を持ったことはないので、すごいアインさんが羨ましいです。それに私には、分からないですけど。アインさん『兄には、そとの世界に出て、それで自由に冒険とかしてほしい』って言ってたから、絶対に復讐とかでなんか性格が変わるのは違うと思います。」
ルナがまともすぎて、感動した。ああ、この人とダンジョンで知り合って良かったなと改めて思った。
「だったら、俺は妹を見捨てるのか?妹を見捨てて夢見がちの冒険者になれっていうのか?」
バレットさんはそう叫んだ。
ルナが何かを言って、僕が何も言わないのはカッコ悪すぎだろ。僕は、クラスメイトの親友のように主人公のようなセリフは言えないが、自分の言葉で
「まあ、つまりアインさんも助けて、それでバレットも聖剣?みたいなのになれば良い。復讐だけに囚われて、本来の夢を失うなってつまりこういうことですよね。ルナ」
「大体そういうことです。徹。」
「それで、妹が助からなかったらどうするんですか?」
そうバレットさんが嗚咽を混ぜながらつぶやいた。
「それは、絶対に助かります。だって徹も協力するので、でしょ、徹。」
ルナはそう言った。言っているセリフは完璧で、完璧に美人で、それで、めちゃくちゃ胸がドキドキしそうな雰囲気があるけど、でも身体の自由が聞かないで僕に攻撃しようと暴れているせいでそんなことは全部吹き飛んでいた。
「まあ、僕が協力して、助かる保証は知りませんけど、でも協力はしますよ、僕もアインさんの知り合いなので」
そう言うとバレットさんは、ただ無言でこちらに向かって頭を下げた。少し無言の時間が流れた。
「ゴホン、えっと、私が話しても良いか?」
世界樹の女神がそう言って話始めた。
「…………どうぞ、話してください。」
そう僕が言うと
「とりあえず、獣人族の里を救うには、あの支配されている状況を何とかすることが出来るのは、私とルナのどちらかですが、ルナには無理なので私がどうにかします。だから、二人には、その間時間を稼いでください。」
なるほど、時間稼ぎか、最近も似たようなことをした気がする。
「神様なら、すぐにどうにか出来るんじゃないですか?」
単純な疑問だった。
「無理だ。今の私は世界樹の女神、ユグドラシルであって、ユグドラシルではない。姿が変わったせいで、まあややこしい話をする必要ないな。つまり、私が力を使うのには時間がかかるだから、それの時間を稼いでくれ」
なるほど、神様にも制約があるのか。
「「分かりました。どのぐらい時間を稼げば良いんですか?」」
「1日、1日、この場所にたどり着かないようにして欲しい。そうだな、今の私でも出来る手出すけをしよう。バレットを私の騎士に、徹を私の守護天使に任命する。」
そう、女神は言った。一日?騎士?天使?
そんな言葉を聞いていたはずだが、気が付いたら、神殿の外にいた。なるほど、ここは神殿だったのか?
そして、囲まれていた。なるほど、この状況で1日か。地獄かな。
「あの方の為に死んで貰いますよ。お二人とも」
目の前には、謎の人物ライ(仮)がいて、そう不敵に笑みを浮かべていた。
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