第56話 怨霊7

「徹、お前が守りで俺が攻撃で文句はないな。」

そうバレットが言いながら黒騎士に突っ込んでいった。


「了解しましたけど、先に突っ込んでいくのやめてください。」

そう言いながら僕も地面を蹴った。まあ防御力が高い僕が、守りを行うのは妥当だ。僕の動きは基本的に武道を真剣にしていた人間には劣るし、身体能力を限界まで引き出しても、多分スキルで強化してるバレットさんには及ばない。


黒騎士は、剣を横に振った。この攻撃はさっき見た、飛ぶ斬撃だ。それに、バレットの父親の理性が吹き飛んでいるので動きが単調だ。これなら、余裕で攻撃が読める。僕が前に出て、飛ぶ斬撃を受け止めると、バレットは僕を踏み台にして宙に上がり、黒騎士に剣を振るった。僕を流れるように踏み台にしたことは後で追及するとして、僕の今することは、黒騎士の剣を止めることだ。


宙から落ちてくるバレットに向かって剣を構える黒騎士とバレットの間に割り込み剣を受け止めた。

「僕にはダメージが入らないので、僕ごとスパっと斬ってください。」

そう、叫ぶと、バレットは


「知らないからな」

そう叫びながら僕の後ろから剣を振るった。痛い、死ぬほど痛いが、このぐらいの痛みは何ども体験したことがあるので、大した問題ではない。僕を挟んで斬ることで威力は多少は落ちるが、確実に攻撃があたる。


『ギャアアア』

黒騎士に傷はついたが、大したダメージを与えることが出来なかった。これはジリ貧だ。


「作戦変更しましょう。」

僕は黒騎士と距離を取りながらそう叫んだ。


「判断が早くないか?徹。」

そんな風にバレットは、叫んだが、判断も何も、どちらも攻撃力が足りていないのだから、だから最高火力を出せる人を呼んで来るしかない。


「だって、僕らどっちの攻撃も大して通じないじゃん、ああなんで、ずっとラスボスラッシュなんだよ。とりあえず、ここで時間を稼ぐか、ルナを呼びに行くかどっちをしますか?」

そう、言うとバレットは、


「俺は、まだ普通に攻撃が通じると思っているから、お前が呼んで来い。」


そういうので僕が走って、里に戻ることにした。多分、ここにクロモヤが集まってきたってことはあっちのクロモヤがなくなっているはず。つまり、ルナに魔法を使ってもらうことが出来る。ルナが来ればなんとかなる。ルナは体力とかは運動神経はあれだけど、魔法はたぶん天才的だし、まあルナに出来ないことは僕がすれば良いのだから。ルナを見つけてルナを運べばよい。まあ、ついて来ないように言って、それで結局助けを呼ぶとか、少し恥ずかしいが、僕の恥など誤差みたいなものだ。


「徹さん、なんでここにいるんですか?兄は?」

走っているとアインさんに出会った。というか、ここら辺には、気を失っている獣人族の人が何人かいた。まあ生きてそうだったし、今はそれどころじゃないと思ってスルーしていたが、なるほど、アインさんはその人たちを助けているらしい。


「君の兄は無事です。今、ルナを探してるんです、こっちにもうクロモヤはいませんよね。」



「クロモヤはいません、ルナさんは、多分、もう少し戻ればいます。」


そう軽く言葉を交わしてさらに里のをめがけて走った。流石に迷子にならないように

あらかじめ大体の位置を把握したので、里まではすぐにつくことが出来た。バレットも流石に負けて死ぬことはないだろうけど、でも速いほうが良いに決まっている。


ルナはすぐに見つかった。ルナは美人なので非常に目立つ。

「徹、どうしてここにいるんですか?」

そうルナが話始めたがとりあえず、それをガン無視してちょうどお姫様抱っこをした。


「とりあえず、時間がないから」

そう言って僕は再び来た道を引き返し始めた。


「なななな何ですか?徹。何なんですか?いきなり」

めちゃくちゃ、暴れるルナの拳を数発受けつつ、僕は走りながら説明を始めた。


「クロモヤがこの里からいなくなりましたよね。」


そう僕が言うとルナはひとまず落ち着いたのか。冷静な声で

「それが、いきなり公衆の面前でお姫様抱っこ誘拐と何が関係あるの?」


「それで、そのクロモヤが本体に集まって、強くなって僕では攻撃力が足りないので、ルナに倒してもらうの手伝って貰おうと思って。」



「やっぱり、私がいないとダメなのね、徹は。私に任せなさい、よくわからないですけど、倒してあげますよ。」

ルナは少し機嫌よさげにそうつぶやいた。


「それなら、もっと速く走ってもいいですか?バレットを置いてきてるので、ちゃんと暴れないで捕まってくださいよ。」

そう言いながら僕は全身の力を全て振り絞って走り出した。


「分かったよ、徹。ちゃんと捕まっておきますね。」



割とすぐについた。

「…………気持ち悪い、徹。次から、この感じで移動するのはやめましょう。それと、あの黒色の動いてる何かが敵ですか?動きが速すぎて攻撃を当てれる気がしないんですけど。」


バレットと黒騎士はまあまあの移動速度で剣で打ち合っていた。バレットは軽く息を切らしていた。早くしないとまずいな。

「ルナ、当てれば倒せますか?」


「徹に誓って約束するよ。」

そうか、当たればよいのか。なるほど、


「ルナ、帰りは、ルナが僕を運んでくださいよ。バレット、交代です。それとなるべく遠くに離れることを進めます。」

そう言いながら黒騎士の所に僕は突っ込んで行った。


「…………分かった、俺が離れれば良いんだな。」


ボロボロになったバレットさんがまあまあ距離を取ったところで、僕は剣で攻撃することをやめて黒騎士を掴んだ。少しの間、黒騎士の動きが止まった。それで

「ルナ」

と叫んだ。


「徹滅却魔法」

息ピッタリである。当たりが眩しくなって、多分、体が三回ぐらい散る痛みをくらい。当然の権利のように意識を失った。



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