第48話 怨霊と騎士4

流石に面白い話をするのに限界を感じて、門から自力で帰ることにした。そして迷った。森だから、ここは、絶対に里の外であることは分かる。


「…………」

まあ運よく知り合いに出会った。


「…………」


「何で、ここにいるんですか?徹さん。また迷子ですか?」

ある日、森の中、ユグさんに出会った。


「迷子というか。よく知らない場所ではこれが普通だと思います。」

森で、知らない土地で迷わないほうが難しい。


「迷ったら落ち着いて立ち止まれ。」

そう割ときつめな言葉を貰いつつ、僕の部屋の近くまで案内してくれた。『てか、なんで僕の部屋知っているんだ』そう尋ねようと思ったが、いつの間にか帰っていた。なんなのだろうか?あの人は、悪い人では無さそうだが、謎だ。流石にそこからは、迷わないので部屋までたどり着いた。



部屋のドアを開けるとあの怖い人はいなかったが黒い鎧に身を包んだ、ルナがいた。

「何してるんですか?ルナ」


「…………なんで私、顔も隠しているのに分かるんですか?驚かそうと思ってわざざ着て待ってたのに。」

暇なのか?でもルナは忙しいんじゃないでしたっけ?


「それで、何ですか?その鎧。」

暇なのはまだ分かるが、鎧を着ている意味は一ミリも分からなかった。


「徹へのプレゼントらしいですよ。」

鎧か…………鎧は


「要らないですよね、僕に鎧。」

だって、重くなって動き落ちるだろうし、防御とか対して意味をなしてないし、いやでもたまに、痛みに耐えきれず気絶する…………でもそれを発生させるときの痛みは鎧で防げないから関係ないか。うん、要らない。


「私も思ったのでこうやって驚かす為に使おうと思いました。」


「じゃあ、後で返しておいて…………換金してもらってください。」

鎧は使うだけでなく売れば良いのだ。


「換金………ああ、お駄賃貰ってきましたよ。まあ正直多いのか少ないのか私には分かりません、徹には分かりますか?」

貨幣を見せられたが、もちろん僕にも分からなかった。この国の貨幣の価値などしらない。だから多いのか少ないのか分からない。


「とりあえず、ルナの魔法でしまっておいてください?」

そういうとよくわからない魔法でしまった。ちなみにしまえる量には上限があるらしい、そしてその量は少ないらしい。まあ、杖が多分場所を小さくしている原因だとにらんでいるが、まあお金がしまえたのでどっちでも良いか。


「それで、徹に相談があるんですけど良いですか?」

ルナは鎧を取りながら真剣な表情で呟いた。真面目な顔とカオスな状況を混同しないで欲しいが、まあとりあえず、真剣に聞き返した。


「何ですか?」


「私、あのクロモヤをどうにかするまでここに残りたいと思っているんですけど。良いですか?」

ああ、なるほど、まあ


「別に良いですけど。その代わりに次の街まで案内人をつけて貰いましょう。」

決して迷子になることを恐れているわけではない。そうだ。恐れているわけではないのだ。その言葉をいうと何故かルナの表情が恐怖に変わっていった。うん?


「…………ととと徹、うう後ろ、後ろをみてください。」

僕が振り返ると血まみれと騎士がいた。


「ぎゃああああ」


思わず僕が叫んでしまうと同時に笑い声が聞こえてきた。あっ……

「徹さんは私は分かりませんでしたね。もちろん、赤いのは血じゃないですよ。」

兜をはずすとそこには、アインさんの顔があった。


「ルナ、流石にいたずらが悪質だと思いますけど。」

マジでびっくりした。本当に、最悪だよ。


「ルナさんを怒らないでください。私が提案したのに付き合ってもらっただけなので。それで、お願いがあるんですけど。」

なるほど主犯はアインさんのほうだったのか。全然なるほどではないが。


「どうしてこの状況でお願いが出来ると思っているんですか?」

そう僕が笑いながら言うと何故かルナが


「この状況でもお願い聞けますよね、徹」

と笑いながら言っていた。なんだこの茶番は、まあ少し楽しかったので良しとしよう。


「それで、お願いってなんですか?」


「私を族長にしてください。徹さんが指名できますよね。」

そうアインさんはこっちを見て言った。意外な頼みであった、そしてそれは無理な頼みでもあった。


「それは、もう君のお兄ちゃんに話し合いで決めれば?的なことを言ったので無理です。」

そう僕が告げると間髪を入れずにアインさんは言葉を発した。


「…………それなら、兄を族長にしない協力をしてください。」

何で?兄弟仲が良く見えるが。意味が分からない。もしかすると仲が悪いとかか?それなら僕はもう何も信頼できなくなる。


「何でですか?」

シンプルにそう尋ねた。


「それは、兄を外の世界に出して上げたいからです。兄は、絶対にこの里から出たいはずなので、族長にして縛っておくことは私がさせたくないんです。」

なるほど、仲良しだった。


「まあ、僕に出来ることなんて対してないですけど、とりあえず、クロモヤとそれが解決するまでは手を貸してあげますよ。その代わりにしっかりとこの世界のことを教えてくださいね。じゃあ、僕は寝たいのでとりあえず、部屋から出てて行って貰っても?」

まあ、今は特に焦る必要もない、という焦ってもどうしようもないこともあるし、落ち着いていろいろ知ることも大事な気がする。


「じゃあ、さよならアインさん」

そう言ってアインさんに手を振っているルナも部屋の外に押し出して、とりあえず、横になることにした。


僕はどこに向かい何をしたいのだろうか?そんなことが頭を軽くよぎった。まあ考えても無駄だろうか目を閉じた。



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