第14話 エルフと楽園

目が覚めるとベットの上で寝ていた。あれ?これまでの全部が夢だったとかそんな夢落ちだったり。いや、違うは、だって見たことない場所だし。それに右手に手錠がかけられており、反対側はベットの鉄格子につけられていた。ここは、多分、洞窟から抜け出して、それで街に運ばれたっていうところか。




それに僕の目には人が移っていた。耳が尖がっているから恐らくエルフだろう。透き通るような白い肌、輝く青色の眼、美しい金色の髪、目を見張るほどの美貌の人物だった。


彼女はしばらくこっちをジッと見て、それで

「…………」

無言でどこかに去って行こうとした。普段はこのようなことをいうタイプではないが、思わず僕は、言葉を発していた。


「なんか言えよ。普通、こう言うときってなんか言いますよね。何ですか、謎の無言は」

少女は目を見開いてそれから


「えっと、その……話すかどうかは、私の自由なので。それに人と話すのが久しぶりで話し方が分からなかったんです。だから、は、話せなかっただけなんです。」

なるほど、コミュ障らしい。


「それは、なんかすいません……それで、えっと、この手錠を外してくれませんか?」


彼女はこっちを見て

「それは無理です。その、あの君が危険かもしれないから無理です。そもそも君は何ですか?人間、魔物?それともそれ以外の何か?」


「えっと、普通の人間ですけど。」

流石に酷いと思う、


「普通の人間は、私の魔法を食らって、無傷なのわけないです。」

魔法?スキルのことか。あっ、気を失う前に燃えたのは、彼女の攻撃だったのか。まあ、彼女の主張はその通りだ。


「えっと、じゃあ、これならどうですか?手錠を外して、僕を追い出すのはどうですか?」


彼女はキョトンとした表情で

「それも無理です。今、君が外に出てもまた熊に取り囲まれるだけだと思います。だ」

えっ?ここは、街とかじゃないの?


「えっと、ここは、どこですか?街とかじゃないんですか?」


「えっと、何を言っているんですか?ここはダンジョンの中ですよ。世界樹のダンジョン99階層です。町に行くにはダンジョンをクリアする必要があります。」

ダンジョン?世界樹のダンジョン、思い出せ、見たことがある。軽くだが見たことがある。『世界地図とダンジョンについて』って本になんか書かれていた。ああ、思い出せない。


「じゃあ、このベットとか、明らかに明るいこの場所はどうしてですか?ダンジョンが何かよく分かりませんけど。これは何ですか?」


彼女は首を傾げた。

「それは、この空間の周辺に結界を張って、それでいろいろな物を私の魔法で作ったので。明るいのは魔法で照らしているので、えっと?うん?ダンジョンが分からないって?ここまで攻略して来たんじゃないんですか?」

言っている意味が分からなかった。これは、あれか。魔法ってスキルがあって、それがいろいろ出来るってことか?


「ああ、えっと僕、ここに飛ばされたんです。スキルで。」


「…………それは、お気の毒ですね。」

そういうと彼女は僕の手錠を外した。


「あれ?外してくれるんですか?」

彼女が急に手錠を外してくれたので、少し驚いた。


「それは…かわいそうなので。まあ、ここまで自力で来てないなら、ここからの脱出は不可能ですよね…………」

うん?どういうこと?ここから出られない、つまりダンジョンから出られない。ダンジョンを出るにはクリアする必要がある。


「えっと、つまり、このダンジョンはクリア出来ないってことですか?」


そういうと彼女ははにかみながら、

「少なくとも私はここから400年ぐらい出れていません。それと約400年間ここに自力でたどり着いた人はいません。」


えっ

「何歳なんですか?見た目は20歳にしか見えないですけど」

衝撃的だった。だって、この目の前の人物は少なくとも400歳は超えているのだ、見えない、うそだろう。


「えっ?そ、そっちですか?年齢なんてもう分かりません。でもえっと、エルフ族は寿命が長いので…………」


ああ、そうか、寿命が違うのか。なるほど。いや、こっちじゃない。

「そうなんですね。………ああ、話がずれましたね。そのこのダンジョンについて教えてくれませんか?」

今の僕は地上に出たかった、あの謎の青年に一言、言いたいし、シャーリー様、アンナさん、とか優斗とか、クラスメイトとか心配だし。このスキル保存の解除の方法が分からないと、たぶん僕は実質的に不老不死だ。それはまあ強いと思うけど、辛い。ここで何千年過ごすのはつらいと思う。


そう僕が言うと彼女はゆっくりこっちを見て

「えっと、その。その前にご飯でも食べながら、自己紹介でもしませんか?後、その着替えも用意しておいたので、着替えてからこの部屋を出てきてくださいね」

それは確かにそうだった。彼女の名前を知らなかった。服も焦げていた。


その言葉に従い、何か用意されていた着物のような服装に着替えた。それから部屋を出ると洞窟の中に草原が広がっていた。それで昼間のように明るかった。すごいな、ここ、さっきまでの洞窟と同じ場所とは思えない。なんだ、ここ、楽園か?

彼女は剣を持って立っていた。いや、刀か。それを僕に差し出して。

「これ、あげます。」


「えっと、貰えるものは貰いますけど。その何でくれるんですか?」

いきなり刀をくれるのは意味不明だった。


「ああ、これは、いらないものなので、えっと、昔、ダンジョンを攻略するために剣を作って、だけど剣は私使いこなせなかったので」

必死に剣の説明を彼女はしていたがそういうことではなかった。


「えっと、僕が危ないと思ってさっき、手錠をしていたんですよね。そんな僕に武器を与えていいんですか?」


「あっ…………」

アホなのかも知れないこの人。彼女はアタフタしていた。


「いや、えっと、別に攻撃はしないので大丈夫ですけど。」


「……とりあえず、ご飯でも食べましょう。」

彼女はそう言って軽く笑った。


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