第91話 探索


 横幅大体二メートルくらいの、長方形の空間に着地する。よく見てみると、空間は奥にまで続いているようだ。


「お~い」

 ミオが口に両手をあて、メガホンのようにしてそのだだっ広い空間に声を反響させる。ミオの声は、どこまでも響き続けて、やがて消える。


「奥が結構あるみたいね。どうする?行く?」

 セレスティーヌがミオに問う。特に取り決めているわけではないのだが、なんとなくダンジョンクエストにおいてはミオがリーダーのような扱いになっていた。まあ、ミオが終始一貫、最もダンジョンクエストに張り切っているので、パーティ内でそういう感じになるのはごく自然なことなのだが。 


「もちろんよ。前進あるのみ!」

 ミオはびしりと奥の暗闇を指さす。


「だけれど、明かりがないな」

 奥は何も見えない真っ暗闇だ。上部と違い、どうもここには松明のような光源となるものがないらしい。


「レイ、何かあるでしょ、こういうときの魔法が」

 セレスティーヌはすっかり俺を当てにしている。


「ちょっと待て・・・・・・お、あった。中級魔法【人体発光・レベル2】」

 発動した途端、グレートパーティメンバー全員の身体が、パアァァッと蛍光色に発光する。


 自分たちの身体に起きた異変に、目を丸くするセレスティーヌたち。そんな彼女たちに俺は言う。


「自分自身が光れば暗闇も照らせるだろう、ていう魔法みたいだな」

「これ、身体に影響ないんでしょうね?」

 いぶかしげな目で、発光する己の身体と俺を交互に見遣るミオ。


「多分、大丈夫なんじゃないかな?中級魔法ってことは、そこそこ使われているんだろう?」

「・・・・・・ま、いいわ。それでは進みましょぅ」


 ミオを先頭に先をゆく俺たち。


「レイ、ちょっと寒くない?」

 歩き始めて間もなく、アリスが声を震わせながらそう告げてくる。俺の返事を待たずに、セレスティーヌもその意見に同調する。


「うん、ちょっと私も寒さを感じるわね」

 それを聞いていて、俺も寒くなってくる。


「恐らく、上部より気温が低くなっていて、今の暖房魔法が効かなくなっているのよ」

「なるほど。じゃ、【炎の暖かさ】」

 【火のぬくもり】の上位互換的な魔法を皆にかける俺。皆、その暖房効果に満足そうにしてくれる。


 俺たちの身体から発せられる光で、ダンジョン内は照らされる。


 三十分ほど歩いたとき、急に視界が開けた。 広々とした空間がそこにはあった。


「ここは・・・・・・なにかしら?」

 ミオがなにげに呟いた疑問が、広大な空間に反響する。


「敵が出現しそうな気がするわね・・・・・・」


 アリスが不安げに漏らすので、俺は【千里眼】で一帯を探る。ぱっと見、モンスター始め、なにもいない。

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