王様ゲーム

 大きな声で王様になった娘が、

「一番の人と五番の人がキス」とはしゃいだ。

今度は王様役の娘の隣にいた男が

「誰だよ、早く手を上げなよ」と急かした。すると、この場所に似つかわしくない地味な男女が手を上げた。数合わせにでも呼ばれた二人だろうか。

「えっ」

「あっ」

地味な男女は躊躇いの声を出して顔を赤くした。酒が入る席とはいえども恥じらいの方が勝る。

「キス、キス、キス、キス……」

周囲の囃子たてる声が次第に大きくなってくる。

その勢いに押されるよう二人は隣り合わせになり、顔を近づけた。互いに緊張で小さく震えている。

「もう、早くしなよ」誰ともなく苛立ちの声を上げると、二人は観念した様子で、唇を重ねた。

周囲は歓喜の声を上げて手を叩いて二人のキスを盛り上げた。

しばらく二人は時間が止まったように微動だしなかったが、そのうちどちらともなく唇を動かし始め、激しく音を立て互いの口を慾るように吸い合った。

「ヤバっ」一人の娘が声に出す。隣の娘は、顔を赤く染めて激しくキスをする二人から目を逸らせないでいる。向かいの男子たちからは固唾を飲む音が聞こえた。

実は二人は恋人。人前では恥ずかしがっていてもやることはやっている。


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