36. ご褒美を差しあげますわ

36. ご褒美を差しあげますわ




 すごく安易にカトレアを泊めることになってしまった。今はリリスと作戦会議(?)をおこなっている。いや、良く考えたら別に何か起きるわけじゃないんだからそんなに焦る必要なんてないよな?


「エリック様。カトレア様は2日お泊まりをするのですか?」


「そうだな。そうなる」


「色々準備が必要ですね……。私がすべて用意しておきますのでエリック様は安心してください。無事に添い遂げられるよう応援しております!」


「待て待て!いつオレがカトレアと結婚することになってんだよ!?」


「えっ……違うんですか?」


「違うだろ!!」


 まったく、なんなんだこのメイドは……。変なことばかり言いやがって。


「意気地がないですね?カトレア様に好意を抱いてるのは誰が見てもわかりますが?」


「……否定はしない。でも、それはお前がオレが男だと知ってるからだろ!」


「……まぁ確かにそうですけどね」


「なら……」


「でも、それで諦めるには惜しいくらい素敵な方ですよね?カトレア様は」


 何も言えない。その通りなのだから。


「いい加減素直になったらいかがでしょうか?あの方は誰に対しても優しい方なのですから、今のうちに動かないと他の男性に取られてしまいますよ?」


「じゃあどうしたらいいんだよ?オレは男だとバレたら死ぬんだろ?」


「まぁ最悪バレても大丈夫でしょう」


「おい!」


「冗談ですよ。私もできる限りサポートしますから頑張ってください。」


 その時またまたタイミング良く、あのワガママ令嬢から通信が入る。リリスはそれをオレに渡してくるので仕方なく繋ぐことにする。今それどころじゃないんだよこっちは。


「もしもし?」


 《ごきげんようカラスさん。私は今、超高級マッサージの最中ですのよ。無事に魔法競技大会を乗り切ったのですわね?結果は不甲斐ないですが、命びろいしましたわね》


 うるせぇ。素直に褒めろ。なんでこいつはいつも上から目線なんだよ。


「ああ。なんとか無事に終わったよ」


 《あのゴリラを倒すなんて、少しは本気で卒業しようとしているようですわね?》


「当たり前だろ。オレはステラ=シルフィードとして卒業しなきゃならねぇんだからよ。そんな嫌み言うくらいならなんか褒美くらいよこせよ」


 《褒美?……そうですわね。よろしくてよ。カラスさん。あなたの指につけている指輪を見てくださいまし》


「ああ?」


 するとオレの指につけている指輪が光り出す。そして次の瞬間、眩しく光を放つ!目が開けられない!!


「うおっ!?なんだこれ!?」


 そして光がおさまる。オレは指輪を見るが特別変わったことはない。


「別に何も変わってないが?」


 《世間では魔女の魔法で、綺麗なドレスや馬車などに変わり舞踏会に行くというお話があるそうですわね?今私はあなたに魔法をかけましたの》


 元からかけられてるんだが……。なんでこんなに偉そうなんだよこいつ。


 《カラスさん。あなたは明後日の深夜0時まで、男だとバレても死なないように魔法を解除しましたわ》


「えっ!?」


 《リリスから聞きましてよ?あなた平民の女の子が好きなんですわよね?しかも泊まりにくるとか?もしあなたが自分のことを話すのならお好きにどうぞ。その時は仕方ないので諦めて戻りますわ》


 ということは、今ならオレがエリックだとみんなにバレても死なない。つまりステラ=シルフィードをやめてもいいということか?


 《もちろん。そうなったら初めの話しはなかったことにしますから。精々後悔しないように考えなさいな。では》


 それだけ言って一方的に通信を切る。くそっ!絶対あいつわざとだろ!


「エリック様。どうなさるおつもりですか?」


「どうもこうも……オレはステラ=シルフィードじゃないし、バレても死なないならそれに越したことないだろ」


「そうですか。私はあなたが決めたことには従いますので」


「悪いな」


「いえ、気にしないでください」


 しかし、本当にあのワガママ令嬢は何を考えているのか……。まぁ、これでなんとかなりそうだし結果オーライか。

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