29. 噛み合う歯車は勝利に向かって④
29. 噛み合う歯車は勝利に向かって④
新入生魔法競技大会終了まで残り25分。
オレは四大『破炎』グレン=フレイザードの攻撃を防ぎ、反撃する方法を考えている。
「次は私の番だと……ふざけるな!」
鼻息を荒くしてあのゴリラは激昂している。今のオレの実力じゃ小細工なんか出来るような相手じゃないし、そんなことをする余裕もない。
「貴様のような女がオレに逆らうんじゃねぇ!」
するとグレンは魔力を高め少し大きめな魔法を描き、巨大な火の玉を造り出す。またかよ……。
「どうだ!これがオレの本気だ!!死ねステラ=シルフィード!!」
そして火の玉は放たれる。それはまるで小さな太陽のようだった。あんなもん避けられねぇ……防ぐしかないのかよ……。というか、だんだん腹が立ってきた。同じ攻撃ばかりしやがって……芸がないんだよこのゴリラ野郎が!!!
「あーもうっ!いい加減にしろぉおおおおおお!!!」
オレは怒りに任せて両手で魔法陣を描き、そのまま風魔法を宿す。
「バカが!!そのまま焼き殺されろ!!」
「いつまでも調子に乗んなよゴリラ野郎!!」
オレはその巨大な火の玉を思い切り殴り飛ばしグレンへ弾き返す。
「なっ!」
すると弾き返された巨大な火の玉はグレンを直撃しその瞬間、辺り一面には爆発音と爆風が巻き起こる。そのままオレはグレンに向かって走り出す。ここで決める。
「受けてみなさいグレン=フレイザード!」
「くっ……」
そしてオレはそのまま風魔法を宿した右の拳を振りかざし、渾身の一撃を放つがグレンに受け止められてしまう。しかしオレはそれを読んでいた。
「甘いですわ!」
そう、すかさず左の拳を握りしめ振りかぶっていたのだ。これはさすがに避けられないだろう?そしてそのまま左手も振り下ろし、渾身のストレートを顔面へと叩き込もうとするが、グレンもまたそれを受け止めていた。
「打ち止めだなステラ=シルフィード!!」
そのまま両手を押さえられ、押し返されそうになる。こうなったらあれしかねぇ。オレは思い切り飛び上がりグレンに頭突きをお見舞いしてやる。ゴンッという鈍い音が響き渡る。
「がっ……」
そしてグレンはその場に倒れこみ悶絶しながら気を失う。これで終わりだな。
「はぁ~疲れた……」
オレはそのまま地面に座り込む。まったく……何回死ぬかと思ったことか……。まぁ勝ったからいいけどさ。
「それにしても……痛たた……額から血が出てるぞこれ?とりあえず治療費くらいは出せよな?」
オレは額を押さえながらグレンに近づき星を回収する。気絶しているようだが油断はできない。まだ何かしてくるかもしれないからな。
「うっ……くっ……」
「あら?起きましたの?」
「……くそっ……てめえゴリラかよ。魔法じゃなくて肉弾戦とかふざけてんのか?」
ゴリラにゴリラなんて言われたくないんだが。しかも最初に肉弾戦を持ち掛けたのはお前だろ
「『武器は一切禁止』それ以外は何でもありでしょうに。文句があるなら学園に言ってくださいまし」
「ちっ……覚えてろよクソアマが……」
グレンは舌打ちをしながらオレを睨む。まぁこいつも少しは手加減してただろうな、オレの風属性に自分の炎属性が優勢ってことは分かってたんだし、それでも勝てなかったわけだけど。
「ステラ=シルフィード……1つ聞かせろ。なぜあんな通信をしてオレと戦おうとした?」
オレはそのグレンの言葉を聞いて笑みを浮かべ話すことにする。
「あら?意外にも素直ですわね。もっと抵抗するかと思っていましたが……」
「いいから答えろ」
「ふぅ……簡単なことですわ。あなたがエリスに倒されないためですわ」
「なんだと?」
「私たちが勝つ方法はあなたより星を多く集めるかつ他の四大同士で戦い、勝敗がつかないこと。だからあの通信をおこなった。あの通信でエリスとラスターを引き離しましたわ。エリスはこう思ったはずですわ、『あの2人が疲弊したあと星を奪えばいい』そしてラスターは『ステラ=シルフィードがいないなら、その仲間の星を奪えばいい』と」
そう。エリスからすれば確実に勝利するためにオレたちの戦いのあと参戦して星を奪うのが理想だ。四元の法則があるとはいえ可能性は限りなく100にしたいだろうからな。だからギルに足止めを頼んだ。
そしてラスター。やつはずる賢い、オレたちが勝手にやりあって自分は確実に上位に行く方法を考えてカトレアたちを狙いにくる。あとは2人がうまくやってくれているだろう。
「ならもしお前がオレに負けてたらどうするつもりだった?」
「……初めから私とあなたの勝敗なんて、この魔法競技大会の勝敗には関係ないですわよ?」
「なんだと……一体……」
「さぁそろそろ魔法競技大会の終了の時間ですわ。きっと面白いことが起こりますわよ?」
そう、オレはステラ=シルフィードのように自信満々で答えるのだった。
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