第10話ゾンビと彼女との夕食

ピンポーン

インターホンが鳴る。藤岡が玄関の扉を開いた。

「お酒、ワイン2本買ってきた」

彼女の名前は池田あかね。

「あかね、ミートローフつくったんだ。ついでに、茶碗蒸しも」

「藤岡君、ソファーの人誰?」

「親戚の栗原君」

「あっ、さっき電話に出た人ね」

栗原は天気予報に夢中で、2人がなにやら話しているところに気付いた。

「お、お主は?」

「藤岡君のフィアンセの池田あかねです」

「ふぃあんせ?それは、職業でござるか?」

「アハハハハ、あなたの名前は?」

「栗原新之丞と申す。以後、お見知り置きを」

藤岡は咳払いした。

そうだ。それがしあんまりしゃべるな!って言われてたんだ。

「栗原さんも、身体付きいいですねぇ。肌は決め細かで白くて」

「アハハ、それがし400年前に死んで、ゾンビになり、殿に助けていただき申した」

「栗原さんって、しゃべり方も、話もおもしろいね」


「さっ、運ぶよ~、栗原手伝って」


テーブルには、ミートローフ、茶碗蒸し、酒のつまみと赤ワインが並べられた。

「いただきます」

「かたじけない。馳走になるでごわす」

3人、ゾンビの話しをして盛り上がった。藤岡は赤ワインのコルクを抜き、ワイングラスに注いだ。

「殿!これはまさしく、生き血」

「バーカ、ワインと言って葡萄の酒なんだ」

「なんだ、葡萄酒か~」

「えっ、葡萄酒知ってんの?」

「当たり前でござる。これでも、城持ちでじゃったけん」


ゴクリ


「うんめ~。これがわいんなるものか」

「ごめんね、あかねちゃん」

「楽しいからいいの」

「おかわり」

栗原はほぼ1人でボトルを開けた。

2本目は白ワインだった。

「うんめ~。こりゃ、葡萄酒も400年経つと進化するんだなぁ」

藤岡とあかねは、ワインは栗原にプレゼントして、ハイボールを飲んでいた。

「藤岡君、もしかして、栗原さんホントにゾンビなんじゃないの?」

「じ、実は2ヶ月前に神之原公園で見つけたんだ。始めは大変だったけど、毎日、生肉食わせたら、腐った身体が再生したんだ。日光を浴びると火傷するんだ。躾たら掃除、洗濯してくれてね。アイロン掛けもしてくれるんだ。別に信じなくてもいいよ」

「藤岡君の話し信じてあげる」

「おい、そこのおなご、酌をせぬか馬鹿者!」

藤岡は思いっきり、栗原の頬を殴った。

首が、変な方向に曲がった。


キャー


あかねは、悲鳴を上げた。藤岡が人を殺した。


変な風に曲がった首の頭は、

「それがし、大丈夫でござる」

と、言うと両手で首を正常に戻した。

「ね、あかねちゃん、信じた?」

「半信半疑だったけど、確信したよ」

「殿。この茶碗蒸しは美味でござる。白葡萄酒と合うですばい」

「ゾンビと人間の同棲か~。何か映画観てるみたい」

「それより、あかね殿、ふくよかな乳じゃ」

栗原はあかねの乳に手を伸ばした。血が上った藤岡はまた、栗原の頬を殴った。首は吹っ飛んだ。

飛ばされた頭が、

「申し訳なく存ずる」

胴体が首を拾い。胴体に繋げた。

夜更けまで、3人は酒を楽しんだ。その途中、5回ほど栗原は藤岡に殴られた。

あかねは、ニコニコしながら酒を飲んでいた。

朝、栗原は眠り、お互い3時間睡眠のあかねと藤岡はモーニングコーヒーを喫茶店で飲み、最寄駅まで、藤岡はあかねを送った。

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