第十五話 精神世界と融合

「えっ!?」


 突然の事に驚く守。だが、不思議な事に飲み込まれた部分に痛みも傷もない。むしろどこか心が温かくなってくるくらいだった。


「大丈夫。私に身を任せて」


 まるで母親に宥めすかされている子供のように頭を撫でられる守。その間にも徐々に身体の中に瑠璃が入っている。


 そして瑠璃が入ってくる度に瑠璃や守の記憶が混ざりあっていく。


「るぅ……」


 記憶が戻ってきている事で守は目の前の相手が誰なのか気付く事が出来た。守の言葉に瑠璃が微笑み返す。


「まぁくん、どうしたの?」


 話をしている間にも記憶は流れ込んでくる。最初は守と瑠璃の記憶。だが、それも最初だけで次第に変化が起こる。瑠璃と守だけではなく、周囲にいたナナコ、未羽、眼鏡男、けんじぃの記憶も混ざってきたのだ。


 これは周囲と共鳴している事が原因だった。瑠璃にプレゼントされた宝玉を飲み込み、それによって瑠璃と守が繋がった。瑠璃の力がこもっている宝玉が守に合わさっていく事でその能力が昇華されていった。昇華されると今度は共鳴する力が拡がっていく事になり、周囲の記憶がどんどんと守に流れていく事になっていた。


 そうなると、守の中では様々な情報が頭の中に雪崩れ込んでくる事になる。組織の黒幕、狙い、仲間達の想い。中には顔から火が出るんじゃないかって内容もあったが守は触れない。触れない方がいい事も世の中には存在するのだ。


 考え事をしている間も瑠璃は焦らせる事もなく、守の次の言葉を待っていた。


「るぅはこれでいいのか?」


 融合した事で瑠璃が何をしようとしてるのかわかった守は、何度も躊躇いながらも瑠璃に話を切り出す。


「いいの。もうあの人達の好きにはさせたくないんだから」


「そっか……。俺に出来る事は?」


 瑠璃と守の目が合う。先程より近い距離になっているが、お互いに恥ずかしがる事はない。暫く沈黙しあっていると、瑠璃が溜め息を吐いた。


「何もしなくていいよ、って言いたいけど、それじゃまぁくんは納得できないもんね?」


 諦めたようにそういうと、守は力強く頷いた。


「あぁ、勿論だ」


「なら一緒に頑張ろう」


 瑠璃は微笑む。守もそれを見て瑠璃に微笑み返した。瑠璃はその間も少しずつ守に飲み込まれていく。守が決めた事でその速度がどんどん早くなっていた。


 すると、周囲から急に未羽の声が聴こえてくる。


「――にぃ! まもにぃ!!」


 そんなに時間が経ってない筈なのに懐かしく感じる未羽の声。それ程までに記憶が流れ込んできた衝撃は大きかったのだ。


「もうみんなが呼んでるよ」


 残り僅かになった瑠璃が守を見る。


「そうだな。行こう」


 最後に守から瑠璃の頭を撫でると、残っていた瑠璃の身体の全てが俺の中に入った。すると、もう用はないのか周囲の真っ白な空間にヒビが入り、壊れていく。


「お前らの思い通りにはさせない」


 意識が覚醒していくのを守は感じ取っていた。一瞬周囲が真っ白に光り、目を閉じたその後、気が付いた時には、元の場所に戻っていた。正確に言えば精神が戻ってきただけだが、守の感覚では元の場所に戻ってきたように思えたのだ。


 まずは、自分の姿を確認する。殆ど創りかわってしまったその姿は、全身が真っ黒に染まっている。


「これが俺の身体か」


 自分の身体の全てを把握した守は自らの胸を開き、心臓を飛び出させる。


「まもにぃ!!!!」


 突然胸元が開き、心臓が飛び出て来た事で慌てて駆け寄ってくる未羽。


(未羽が来る前に始めないといけないな)


 さらに言えば、未羽の声に反応してナナコもこちらに気付いたようだった。


「大丈夫だ。あいつらの自由にはさせない」


 そういうと、守は自分の心臓を掴み、そのまま引きちぎるのだった。


――――――――――――――――――――――――――――

 少し話がややこしくなってきまったでしょうか。


 今章も最後に近づいてきました。後数話でこの章は終わり、次が最終章になります。引き続き、最後まで応援していただけたら嬉しく思います。


 もし、少しでも面白かった! 応援してもいいよ!! って方いましたら、フォロー、応援、☆評価をよろしくお願いします。


 評価される事、それが何より執筆への励みになります。今後も精一杯面白くなるよう頑張りますので、是非、よろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る