第12話 袋状のモノ

みんな会議や営業で出払い、

私の部署には私と、ひと回りほど年上の男性の先輩(上司ではない)だけがいて、先輩は近くのデスクに座って、何かこそこそしていた。


こそこそしていた。

オフィスでこそこそって、何か怪しい。

私は見るともなく、その先輩の様子をうかがっていた。


先輩は自分のお財布を出して、何かを出した。

その形が何やら袋状のモノに見えた。


お財布に袋状のモノ。


伝え聞いたのだが、殿方はいつ何があってもいいように、お財布に避妊具を入れているらしい(本当か?)。


先輩は今、それを出したのだ。

伝家の宝刀を、このオフィスで。

お相手は?このオフィスには、

私しかいないではないか!


取り返しのつかないことが起きてしまいました。


その先輩は袋状のモノの封を切った。

えっ、使うの?本当にそれ使うの?


でもその先輩はその袋状のモノの中身を、上を向いて口に入れた。


そして不意に立ち上がって、ウォーターサーバーの水を汲んでそれをゴクリと飲んだ。


そして私に言い訳するように言った。


「なんか今日、風邪気味でさぁ」


か、風邪薬でした。


ご、ごめんなさい。

私は取り返しのつかないことを想像していたのでした。





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