第43話

スタジオに入り、萩原さんのところへ。ちょうど撮影を中断していたので、まなさんと写真のチェックをしていた萩原さんの肩を叩く。


「あの、私の仕事決まってんじゃないですか!」


「あーそうそう。さっき決まったんで…」


なんつー適当な。


「そうだ!お祝いに食事に行きませんか?」


「え?」


「まなちゃんも!」


「私用事あるんで」


「じゃあ田中さんたちと行きましょう!」


え、勝手に決めてんですけど。なんなんだ。


「場所は居酒屋とかどうですか?」


「私は未成年です」


「じゃあフレンチは?」


「私お金ないんですけど」


「おごりますよ?」


え、おごり?


「じゃ、じゃあ…」


「よーし!じゃあ予約の電話入れてくるんで!」


「ちょっと、萩原さん。これチェックして…」


えー萩原さん仕事中なのに。まなさんの言うことを聞かずにさっさとスタジオを出て行った。


「ねー、旦那のご飯とかいいの?」


とまなさん。そうか、まなさんは知ってるんだった。


「適当にしてもらいます」


「かわいそー」


いや、私はまなさんの藤原さんの扱いのほうが可哀想だと思うけど。


「予約できましたよ!」


萩原さんが帰ってきた。


「田中さん、餅月さん、そしてメイク室にいたクレアさんも行きます!」


えーなんでまたそのメンバーに?てゆーか、なんで他のモデルさんは誘わないんだ?


仕事が終わって、5人で行くことに。零さんにはメールしといたし、ま、いっか。

萩原さんが予約してくれたお店はオシャレなフレンチレストラン。こんなとこ、入ったことない。席に着くなり、萩原さんは発言した。


「ほのかさんの分はおごります」


「萩原さん、クレアにもおごって下さい」


「ダメです。小暮さんのモデルじゃないですか。小暮さんにおごってもらうべきです」


「ったく萩原ケチよね~」


「田中さんにももちろんおごりませんよ?」


「え!餅月にはおごると?」


「まさか」


萩原さんが冷めてる。


「じゃあーワインだけでもおごって下さい!」


「おごるわけないです」


「餅月に厳しすぎますって!」


メイク2人とは仲がいいのか、悪いのか。微妙なところだ。そんなくだらない話をしているうちに、料理が運ばれてきた。コースらしい。

さっそく食す。こんなの私作れる気がしない!おいしい。


「おいしいですね。クレアはフランスに住んでいたので、このお料理懐かしいです」


クレアさん金持ちかよ。自慢?


「そうなの?こんな豪華な料理食べてたの?」


田中さんがつっこんだ。ありえないもんね。


「パパがコックなの。いつも食べていました」


なーんだ。それは金持ちではないな。


「まじっすか?それはやべー金持ちですね!」


「餅月さん。レストランではお静かに」


騒ぐ餅月さんをあしらう萩原さん。職場では見られない光景だ。


「ワインうまい!ほのかちゃん、どう?」


餅月さんに勧められた。この人既に酔ってるし。


「未成年なんで」


「クレアもですよ。そういえば、ほのかさんと私って年が近いんでした!」


「そ、そうでしたっけ?」


「ため口でもいいかしら?」


「はい?」


「嬉しいわ!」


また手をにぎられてしまった。というかいいとは言ってない。


「にしても、この子たち若いわね~」


「田中さんが老けすぎなんですよ」


「何よ萩原。あんたなんかほのかちゃんからしたらおっさんなんだからね」


「そんなまさか。だとすると田中さんはおばあちゃんということになりますけど?」


「はぁ?最低。おごれ」


「え?なんでですか?いきなり?」


萩原さん、余計なこと言い過ぎ。

は、私まだクレアさんに手を握られたままだ。


「ほのかさん。私とお友達になって!」


「え?」


キラキラした目で見つめられた。なにこれ怖い。


「は、はい…」


「きゃあ!嬉しい!」


クレアさんはお酒飲んだんだっけ?このテンション怖い。


「じゃあ、ほのかさん。俺、萩原とも友達になりましょう」


「友達から始めましょうってか?」


「田中さん!そんなはっきりとは言ってません」


「下心丸見えなのよ」


「見せた覚えはありません!」


萩原さん、まじうざいわ。友達にすらなりたくない。


「ワインうめー!」


「餅月、あんた飲みすぎよ!」


「餅月さん!こんなところではしたないです」


「ねぇほのかさん。私と恋バナしましょう?」


「え」


なんというしっちゃかめっちゃかな食事会なんだろう。私を祝うんじゃないんの?

そして、餅月さんがあまりにも酔いすぎたので帰ることに。どういうことだ!

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