「憧れの歌」詩集

鏑木レイジ

第1話イエスタデイ

行きつくところ


憧れ。


深い眠りか、そうだ、浅い夢?


天使と、優しい朝の日差しは君に訊く。


「さあ、友よ。君は何を唄う?」


「憧れの歌」

と僕は言う。


ジョン・レノン。


情景あるいは憧憬。


一面に咲き誇る、白い野菊。


ブラッド。


手を取り合おう。ダンスを踊ろう。


リフレインするポップソングのフレーズに身をゆだねて。


夢見心地で、唄う。笑いが、響く。世界に響き渡る。


風、唄う。風、唄う。と風の中の声は僕を促す。夢を見る詩人の憧れのようにね。


「さあ、友よ。君はどう答える?」


「沈黙の歌」

と僕は言う。

 

すると喜びの歌が聞こえる。


ベートーヴェンの第9番「歓喜の歌」。


流転していく、同じフレーズ。聞き慣れたポップソングがラジオから流れている。


そうビートルズ。「イエスタデイ」。


そして第9は、蘇る。


夢の中から、旋律を撫でるように。


手を伸ばせ。光に届くまで、


そこに希望はろうそくの灯のように揺れている。


ポップソングの中で、風は唄っている。想像してみて。恋人の笑顔を、子供の泣いている顔を。


届いてる? いや、まだまだ。


覆うんだ。

 

ベールで覆うんだ。


君の夢を。


ジョン・レノンは囁いている。君の耳元で


世界へ。


ラブ&ピース


世界へ


ラブ&ピース。


イエスタデイ。イエスタデイ……。


でも、今日を生きようよ。


かけがえがないんだからさ。


まばたきしてる間に、この世も終わってしまうから。


笑おうよ


笑おうぜ。


憧れる。憧れる?


僕は君に憧れている。


アイ ラブ ユー。


何度でも言うよ、アイ ラブ ユー。アイ ラブ ユー……。


届いてる?


そしたら、君も叫んで。


「Ⅰ LOVE YOU」。

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